全日本ラリーで戦う、板倉麻美選手
欧米ではとはじめると、「また外国かぶれかよ」と怪訝な顔をされるかもしれないけれど、ことモータースポーツの選手となると、その認知度は日本国内よりも欧米、特にヨーロッパのほうが高い傾向があります。
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実際のところ、スバルワークスとしてPCWRCで2度の優勝経験のある新井敏弘選手は、ヨーロッパの空港などでファンに声をかけられるコトが多かったらしいです。
あ、日本だと公共交通機関で移動する新井選手に会うことがレアだから声かけられないですね。
という冗談はさておき、モータースポーツが戦う選手=レーシングドライバーよりも、メーカーや車種で語られることの多い日本、ココであえてスバル乗りの女性のラリードライバーを紹介します。
それが、ウェルパインモータースポーツからエントリーしている永遠の30代女子、板倉麻美選手です。
板倉選手は今年、全日本ラリー初参戦でありながら、第2戦 新城ラリー2019で3位、第3戦 ツール・ド・九州2019 in 唐津で2位、そして5月の第4戦 久万高原ラリーで2位と好成績をおさめています。初のグラベルラリーとなった7月の第6戦 2019 ARKラリー・カムイでは、初日を2位で終えたものの、2日目のSS7で側溝に脱輪。脱出できずリタイアとなりました。惜しい。
戦うクラスはJAF全日本ラリー選手権に新設されたJN6。ならWRX STIか? というのは早とちり。今年からJN1クラスが最高峰で、小排気量クラスがJN6と変わったのです。そのJN6は1500cc以下のAT車やCVT車のRPN車両が出場できるクラスとなっています。2018年までJN1クラスだったハイブリッド車や電気自動車などのAE車両や、1500cc以下のRJ車両などが走ります。
ん? そんなスバル車ないって? そのとおり。OEMのスライドドア車、リッターカーのスバル・ジャスティですらターボ係数1・7の前では1700ccとなり、JN4クラスでシビック・タイプRなどと戦わなくてはなりません。
彼女のドライブするラリーカーはヴィッツ DL WPMS Vitz CVT。ベース車両はトヨタ・ヴィッツ・CVTです。
スバルではなくてすみません。109馬力のエンジンは直列4気筒1500ccで前輪駆動。水平対向でもAWDでもなくてすみません。でもスバルの魂を持っているんです。なぜって?
板倉選手、実はスバル・インプレッサWRXのオーナーなんです。
鷹目のGDAインプレッサWRXは、いつもグッドコンディション
44万キロを走破したインプレッサは、新車からワンオーナーの1台
走行44万km超!!、大ベテラン
板倉選手のスバル・インプレッサはGDA型のWRX。いわゆる2代目後期の鷹目。スバルディーラーで働いていた時代に新車で買って今に至ります。
WRX STIが350万円前後だった時代、WRXは250万円と100万円の差。就職したての板倉選手には大きな違いでした。
そこからずっとのワンオーナー。ちなみに年間3~4万キロを走行し続けています。
なので、総走行距離は驚きの44万キロ。普段遣いももちろんながら、その趣味はサーキット走行と酷道探訪。
サーキット走行は千葉県にある茂原ツインサーキットを根城とし、Gコーポレーションが主催する走行会イベント等に参加。
イベント内の模擬レースで、名だたるチューニングカーと戦い優勝したこともあり、茂原の女王と呼ばれているほど。さらにモータースポーツ(MS)イベントには、選手ではなくコースマーシャルとしての参加歴もある生粋のMSファンとも言えましょう。
酷道探訪の趣味は47都道府県に足を踏み入れるのが、目標のひとつ。クルマでのドライブでありながら、バイク用として人気のツーリングマップルを片手に林道などへ出かけるそう。今イチバン行きたいところは、宮古島。伊良部大橋をインプレッサで走るのが夢であります。
クルマが主軸の趣味を多く持つので、ある意味その走行距離も納得ですが、もうひとつビックリなのが、エンジンがノンオーバーホールであること。コンディションを保つ秘訣はと問うと、購入してここまでキッチリ5000キロ毎にオイル交換をしているのが効いているのかなあとの回答。そのオイルもその時々で銘柄は異なるのものの、エルフやペトロナスなどのいちばんイイオイルをケチらず使っているとのこと。
エンジンオイルの番手は5W‐40が主。そしてエンジンオイルだけではなく、ミッションやデフのオイルも総とっかえなのです。
これは、プロの目で、最低でも88回はチェックしてもらっているという意味でもあり、細かいトラブルの兆候を見逃さず把握できたということでもありましょう。全油脂交換、1回3万円と仮定しておおよそ新車価格購入くらいのコストがこれまでかかっています。
でもそれこそが、インプレッサへの愛。
大事なことですね。
44万キロを越えているとは思えないキレイなコクピット。
2本目となるステアリングはOMPのディープコーンタイプ。ドライビングポジションをあわせるシートはレカロSP-Gから、より体の収まりの良いブリッドのジータII タイプSへ。
サーキットランもするだけに、カスタマイズ箇所は多岐にわたります。加えて別銘柄へ更新しているパーツも。
足回りは、車高調がテインからグレッディのパフォーマンスダンパー2本を経て、オーリンズへ。
スプリングはHALを愛用。これは走り方を見てもらい、選んでもらったそうです。
またホイールもBBS、SSR、ウェッズ、エンケイ、レイズ、ワークと履き、現在はキャンディレッドのワーク エモーションD9RにS203のアドバンネオバを組み合わせ。
そして走行会用はエンケイ RPF1にダンロップZIIIとのこと。
そんなインプレッサを駆る板倉選手が、ラリーを戦うヴィッツCVT、気になりませんか?
次は戦うスバ女のマシンをチェック!
ラリーカーのヴィッツCVTは、6100回転張り付きで強烈な脱出加速
スバルからも出して欲しい!パワーバンドをキープし続けるCVT
板倉選手が第4戦 久万高原から合流したコドラ(ナビ)の梅本まどか選手とともに戦うヴィッツ・CVT。マシンの特徴はその名の通り、CVTであることです。搭載されるのはスポーツCVTと呼ばれる競技専用のプログラムを与えられたものでLSDも装備。
このスポーツCVT、走行中にモードに入ると同車のパワーバンドである6100回転をひたすらキープ。いつでも最高出力を発揮できる状態で走ります。コーナーアプローチの減速時も、車両は減速しつつも、その速度にあわせてCVTプーリーをコントロールし、エンジン回転数はほぼ6100回転のまま。アクセルオンでいつでもハイパワーが取り出せるということになります。
同乗走行で体験したところ、そのフィーリングは減速終了からの加速時にGがドンっと出る印象。アクセルオンで徐々に加速するというような生ぬるさがなく、一般的なCVTの印象である待ちもなければ、アクセルオンから回転上昇とともにパワーがついてくるという状況もなし。さらに途切れのないシームレスな加速というCVTのメリットを存分に発揮できるという、優れたものでした。
ある意味、スポーツカーのパワーユニットの理想をCVTが実現したともいえます。そして内燃機関での走りとしては、電動モーターでのスポーツ走行のフィーリングに近いものと思われます。一方でそのパワーピークを外さない走りというのは一流のドライバーだけが持つテクニックだったともいえます。
この制御プログラムはトヨタの先行開発として作られたものだそうで、驚きなのは、搭載にあたりハードウェア的な変更は必要ないということ。ノーマルの同車にこのプログラムを入れれば、同じ走らせ方ができるというのです。
これはリニアトロニック全盛でCVT王国となったスバルでもぜひ検討して欲しい方向。40kgmを越えるトルクを瞬時に引き出す脱出加速を体感してみたいものです。
その日が来るまで(!?)、板倉選手、梅本選手、ひとまずヴィッツCVTで頑張ってください!
CVTゆえ、常時アクセルペダルは右足、ブレーキは左足で操作。コーナーへのアプローチではブレーキも使って減速しつつも、パワーバンドにエンジン回転数は張り付きっぱなし。
「久万高原で初めて一緒に走って表彰台。これからも二人でいいペースノートをつくっていいチームになりたい」とコドラで元SKE48の梅本まどか選手。「インプレッサなどクルマについても教えてもらいたいですね」とのコト。
右)ラリーで使用しているインターコム付きのスパルコ ジェットヘルメット姿も板についてきた。左)走行会に参加しているときからタイヤの使い方が上手いと言われるという板倉選手。たしかにキレイなトレッド面だ。
モータースポーツ応援しよう!
今後の開催は、7月26日-28日
ライバルは昨年のトヨタ・ガズーレーシング・ラリーチャレンジ(TGR)の東シリーズC1クラスで、年間チャンピオンを獲得したクロエリ選手(ホンダ・フィット)や、昨年TGRなどにトヨタ86でエントリーしていた水原亜里沙選手、中村理沙選手(日産・ノート)など。
スバルスタイルvol.003より
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