同国のみならず、南米大陸における「モータースポーツの殿堂」と称されるインテルラゴスにて、7月7~9日に開催されたSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”第5戦は、シリーズ唯一の“外国人ドライバー”でもあるアルゼンチン出身マティアス・ロッシ(フルタイムスポーツ/トヨタ・カローラ)が、圧倒的な速さでのポール・トゥ・ウインを達成。
続いてホセ-カルロス・パーチェでのSCB通算150戦の節目となったレース2では、元F1組が躍動する展開に。最後はリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)がフェリペ・マッサ(ルブラックス・ポディウム/シボレー・クルーズ)を抑え切り、サンパウロでの自身4勝目をマークし、惜敗の2位ながらレース1の3位と併せて「センセーショナルだった」と語るマッサにとっても、フル参戦3年目、キャリア通算59戦を重ねた末に得た苦節のSCB初表彰台となった。
2度のセーフティカー出動にも動じず、ルーベンスの愛息“ドゥドゥ”が11戦目の初優勝/SCB第4戦
高速トラックのカスカバルで争われた第4戦では、王者ルーベンス・バリチェロの愛息“ドゥドゥ”ことエドゥアルド・バリチェロ(フルタイムスポーツ/トヨタ・カローラ)が、感動的なシリーズ初勝利を挙げて大団円を迎えたが、ブラジルの“聖地”で始まった第5戦の金曜初日は、すでにシリーズの歴史上「もっとも成功を収めた海外ドライバー」との称号も得るロッシが、セッションを席巻する勢いを見せた。
今季から初年度に所属した古巣へと復帰しているロッシは、引き続きTOYOTA GAZOO Racingブラジルのワークスカラーをまとった117号車をドライブしてFP1を制圧。明けた土曜午前のFP2と、午後の予選でも「本物のパフォーマンス」を披露し、ブラジル挑戦3年目にして自身初のポールポジションを獲得した。
「今日は素晴らしい1日だった! とても幸せだし、トヨタとフルタイムスポーツに感謝するばかりさ」と語った39歳のロッシ。
「このマシンはシェイクダウンでも最初のプラクティスでも非常に競争力があり、全体的にとても気に入った。僕はいつもここでのレースを楽しんできたし、ブラジルで最も重要なサーキットであり多くの歴史がある。ここインテルラゴスで初めてストックカーのポールを獲得するのは特別なことだ」と、シリーズの歴史上では1984年以来の海外出身ポールシッターとなったロッシ。
「インテルラゴスで勝利する喜びをすでに味わっているし、それは特別な味のする成果だった。今週末も勝利を目指して戦えるよう強くなりたいし、間違いなく勝利のことを考えているが、明日は明日の風が吹く。今日は多大な犠牲を払って勝ち獲ったこのポールポジションのトロフィーを楽しみたいね」
すでに63戦に出場し、2回の優勝経験を誇る隣国のスターは、約1年前の7月末にインテルラゴスで得た栄冠を再現するべく、日曜13時40分からの30分+1ラップ勝負に臨むと、背後で繰り広げられるマッサ、ゾンタ、そしてネルソン・ピケJr.(クラウン・レーシング/トヨタ・カローラ)らによる“F1模擬レース”さながらの表彰台争いを尻目に独走。危なげなくSCB通算3勝目、インテルラゴス2勝目を手にした。
■2戦連続の表彰台に安堵の表情を浮かべるマッサ
一方、このヒートでギリェルメ・サラス(KTFスポーツ/シボレー・クルーズ)との攻防を制し、トップ10に食い込んでレース2のリバースポールを得た父ルーベンスだったが、同じく30分+1ラップ勝負に向け5番グリッドから「ロケットスタートが決まった」ゾンタが、あっという間に抜け出して“セナS”までに首位浮上に成功する。
入れ替わりで5番手まで後退したバリチェロに対し、マッサが7番手から3番手へ。さらにピケJr.もその背後に続き、オープニングラップ終了時点で早くもロッシが6番手へと浮上してくる。
同じく6番手発進から2番手へとジャンプアップしたガエターノ・ディ・マウロ(ホットカー・コンペティション/シボレー・クルーズ)も混じえ、オーバーテイクボタンの戦略も活用した首位攻防が繰り広げられるも、経験豊富なゾンタが好ディフェンスでこれを封じていく。
中団での車両火災発生でセーフティカーが介入したあとも、首位を守ったゾンタがこの際の隊列走行で稼いだ燃費分も活用し、最終ラップまで義務ピットを引っ張る戦略でボックスへ。同じ戦略を採用したマッサに先行し、トラックへ復帰することに成功したゾンタがそのままリードを維持し、インテルラゴスでの通算4勝目を飾る結果となった。
「どうかな、カッコ良かったかな?(笑)」と、昨季5月のヴェロチッタ戦以来となる優勝を果たしたゾンタ。
「満タンスタートの議論はあったが、少なめの搭載量で勝負することに賭けた。結局、燃料を入れなかったこととセーフティカーが僕らを助けてくれた。リスクを犯したことが首位フィニッシュの違いを生んだんだから、本当に素晴らしいよ!」
一方、F1時代にはブラジルGPで2勝を挙げているマッサが、レース1での3位に続いて「明らかなシーズンの分水嶺」と語るレース内容で、最終ヒートは真っ向勝負の末にふたたびの2位ポディウム登壇となった。
「今週末の結果は、ここからの後半戦がまったく別の話になることを示しているね。昨日のFPから調子は良さそうだったが、こうして2戦連続で表彰台を得られたのが何よりうれしいよ」と、どこか安堵の表情も浮かべたマッサ。
「一部のドライバーと同じように、燃料搭載量を少なめにする冒険がうまくいった。チームのハードワークはポディウムの価値があるし、シーズン中にさらに表彰台を獲得できるよう戦うつもりだ。インテルラゴスはとても特別で、ここには何か違うものがあるね」
この週末に8位と13位でポイントを重ねたチアゴ・カミーロ(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)がふたたび選手権首位に返り咲いた2023年SCBシーズンは、続く8月4~6日にサンパウロ内陸部のアウトドロモ・ヴェロチッタで第6戦が争われる。
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