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au TOM’Sにのしかかるチャンピオンの重圧。王者だからこそ抱く「不安」と「恐怖」

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au TOM’Sにのしかかるチャンピオンの重圧。王者だからこそ抱く「不安」と「恐怖」

 スーパーGT公式YouTubeチャンネルにて、2024年5月31日(金)21時からプレミア公開される『FORMATION LAP produced by auto sport』。2024年も全4回を予定する最初のエピソードでは、第2戦富士における23号車MOTUL AUTECH Zと36号車au TOM’S GR Supraの戦いに密着。ここでは映像に収め切れなかったインタビューを再構成してお届けします。そこからはGT500の緊張感が伝わってきます。

* * * * * * *

GRスープラ勢、苦しかった富士でも光ったau TOM'Sの強さ。46kgのSWを積みながら7ポジションアップの4位

 勝者が得るもの。それはわずかな期間の歓喜と、次なる戦いへの憂いだ。チャンピオンを獲っても、すぐにシーズンは巡る。勝利の美酒に酔える時間は、極めて短い。またゼロからのスタートだ。

 昨季2023年、自身2度目のGT500チャンピオンを獲得した坪井翔は、今シーズン開幕前のテストを終え、笑顔を浮かべながら首を傾げてもいた。「ずっと好調すぎたので……」と坪井。好調を、素直には喜べない。むしろ、不安になる。追われる立場の者にしか分からない感覚だ。

 チーム監督の伊藤大輔も、「シーズンオフがあまりにも順調すぎたんです」と振り返る。「あまりにも前評判がよすぎましたね。僕個人としても『結果を出さないと』と、プレッシャーを感じていた部分がありました」

「もっと言えば、我々は昨年からずっとうまく回っているんです。でも、レースというのはほんのちょっと歯車が狂うだけで、まったくうまくいかなくなる。それが怖いんですよ」

 坪井が感じていた「不安」と、伊藤が感じていた「恐怖」。およそ昨年の覇者にふさわしくない言葉が、GT500のタイトルの重さと、それを獲ることの難しさを物語る。

 山下健太は、今年からTGR TEAM au TOM’S加入した。彼自身は2019年にGT500のタイトルを獲得したチャンピオン経験者だが、それでも「やはり36号車au TOM’S GR Supraは強い」と実感している。

「力を持っているチームだな、と感じます。問題があったらそこをしっかりと分析して見極める。不調になるとなかなか抜け出せないものなんですが、そうなる前にしっかりと対処できるチームなんです」と山下。彼にとって、最良の環境だ。

「つねに『これでいいや』ではなく、『もっと速く走るためには、どうしたらいいんだろう』と試行錯誤を続けている。これがトップを取るチームなんだな、と。自分は速く走ることだけに集中できる。ドライバーとしては、めちゃくちゃありがたいです」

 だが、内なる課題を感じてもいる。GT500のマシンは極めてシビアに組み上げられている。昨年までと同じGRスープラではあるが、別チームのマシンにまだ完全に適応しきれていない。第2戦富士の予選でも、マシンを降りると険しい表情で頭を抱えた。

「あとコンマ2秒は速く走れただろうな、という自覚がある。自分的に、うまくいかなかったポイントが分かるんです。すごく悔しい」と山下。マシンのポテンシャルは分かっているのに、それを引き出し切れていないもどかしさ。開幕戦の優勝で46kgものサクセスウエイトを積んでいるが、納得できない。

 頂点しか見ていない。だから、自分たちに課すものもひときわ厳しくなる。「昨年の自分たちを超えたいんです」と、坪井が言った。「昨年、僕たちは3勝してチャンピオンになった。それを超えようと思ったら、4勝してチャンピオンを獲るしかない」

 前戦での獲得ポイントの2倍のサクセスウエイトを搭載しなければならないGT500で、1シーズンで4勝とは極めて困難な目標だ。だが、坪井は意に介さない。「無理かもしれないと思った瞬間に、本当に無理になってしまう。今年は昨年にも増して高いパフォーマンスを感じているだけに、厳しい目標を掲げてもいいのかな」と意気込む。

「誰もが『36号車には、もう手が届かないよね』と口を揃えるような、強さ、速さを発揮してチャンピオンを獲りたい。僕は自分でそういう目標を設定しています」

 監督の伊藤は、かつてドライバーとしてGT500のタイトルを獲った経験がある。だから「4勝をめざす」という坪井の言葉にも、「ドライバーとしては当然ですよ」と理解を示す。「でも、ですね……」と続ける。「監督という立場からすると、『昨年の自分たちを超えよう』なんて、まったく考えていません。1点でもいいから泥臭くポイントを積み重ねて、とにかくチャンピオンを獲ることが使命です」

 勢いのある熱いドライバーと、それを冷静にコントロールする監督。盤石の体制が、ここにある。

 ディフェンディングチャンピオンである36号車au TOM’S GR Supraは、2連覇を成し遂げるべく、自らにあえて高い目標を課し、戦っている。46kgのサクセスウエイトを積んだ第2戦富士で見せた、勝者の強さとは──。ドライバーたちのリアルな肉声に迫った2024スーパーGT・シネマティック・ドキュメンタリー動画『FORMATION LAP Produced by auto sport』予告編は、こちらから。

 冒頭のとおり、“エピソード1”本編は5月31日(金)21時よりプレミア公開予定だ。

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