ベースモデルはシリーズ初となるNA8C、フラットなパワー感と分厚いトルクが魅力!
徹底した軽量化とボディ剛性の向上を両立。走りに関する基本的なポテンシャルを追求する!
「マツダ認定の改造車量産会社『M2』の遺作」NA8Cベースのコンプリート『M2 1028』に乗った!【ManiaxCars】
“環八”の通称でよく知られる東京都の幹線道路環状八号線(都道311号)。その外回りの世田谷区砧付近にある、一際モダンなビルをご存じだろうか? そのビルの名はM2ビル。新国立競技場の設計を手がけた、隈 研吾氏がデザインしたもので、ビル名のM2は「ふたつ目のマツダ」を意味していた。
そこに1991年から95年まで存在したのが、ロードスターベースのコンプリートカスタムカーシリーズを手がけたM2であった。マツダ100%出資の商品企画会社で、ユーザーとのダイレクトコミュニケーションを通じてクルマの新しい価値創造をすることを目的に発足。
その第1弾として登場したのがM2 1001。NA6CEをベースとした硬派のライトウェイトスポーツで、外装は専用設計のフロントスポイラーとリヤスポイラー、インテリアにも専用品がふんだんに奢られた。B6型エンジンにもチューニングが施され、ベース車比プラス10psの130psを獲得。ベース車のおよそ2倍となる340万円という価格設定ながら、限定300台に対して7倍もの希望者が殺到したのだ。
翌92年に登場したのが、NA6CEベースのM2 1002。こちらはブリティッシュスポーツをイメージした大人のライトウェイトスポーツカー的パッケージで、ユーノスコスモ用の素材を使ったレザー内装やヤマハ製ウッドパーツを採用など、インテリア中心のカスタムが施された。しかし、エンジンがノーマルだったためか、希望者が予定数の300台に満たず、大不振に終わっている。
そんな1002の反省を踏まえ(!?)、94年に発売されたのがロードスターカスタムコンプリートの第3弾となるM2 1028だ。シリーズとしては初のNA8Cベースで、“STREET COMPETITION”をコンセプトに、スポーツカーとしてのポテンシャル向上を追求した。
ちなみに、開発コードである車名の数字に大きく飛んでいるのは、未発売となった幻の車両が多くあったから。その中にはロードスターにルーチェ用3LV6エンジンを搭載した、M2 1006という和製コブラ的なパンチの効いたマシンもあったのだ。
というわけで原点回帰となったM2 1028は予定の300台が即日完売となり、多くの希望者が涙を飲んだ。今回取材した1028のオーナーSさんもそのひとりだったが、諦めずに探し続け、ついに4年前、納得できる個体にめぐり逢ったという。
M2 1028でまず注目すべきは、徹底した軽量化だ。その内容はソフトトップを廃止して軽量ハードトップ化、アルミ製トランクリッドや軽量ホイール、FRP製バケットシートの採用、センターコンソールの廃止など多岐に及び、トータルでベース車比50kgもの軽量化を達成している。
デタッチャブルハードトップは素材比重の見直しとポリカーボガラス採用でマイナス8.7kgを実現。トランクリッドも専用品で、後端がスポイラー形状のアルミ製。フロントリップも専用の2分割タイプとなっている。
モモ製のステアリングはφ370。メーターはリングが廃止され目盛が細かく刻まれた専用デザインだが、フードがつや消しタイプになっている点にも注目したい。
軽量化のために樹脂製のセンターコンソールは廃止され、シフト周辺はカーペット仕様。アルミシフトノブとレザーブーツは専用品。ドアパネルもレギュレター仕様だけでなく、プルハンドルまでベルトとして軽量化を徹底している。
運転席はブリッド製のフルバケが装着されているが、助手席側は純正シートのままだった。軽量なFRPシェルを採用したフルバケットタイプとなっている。
シートステーにも軽量化の肉抜き加工が施されているのも、注目すべきポイントと言えるだろう。
1.8LのBP型エンジンは各部のバランス取りが施されたハイコンプハイカム仕様で、高効率な吸排気系パーツと合わせてベース車比10psアップの140ps/6500rpm、最大トルクも1.0kgmアップの17.0kgm/5000rpmを獲得している。
ホンダF1用も手がける日高精機が製造した等長ステンレスマニホールドは、4-2-1レイアウトでセカンダリーを長くとっているのが特徴。
シリアルプレートの製造番号は1001からの通しとなっていて、1028の1号車は0401。リヤのエンブレムはシリーズ共通デザインだ。
小ぶりでレーシーなドアミラーは、ビタローニ製のセブリングタイプ。M2 1028は紺と白の2色があり、ボディ同色塗装となっていた。この他、10点式アルミ製ロールケージやストラットタワーバーによるボディ剛性アップ、専用開発のサスペンションとタイヤなど、人馬一体感を向上させて走る楽しさを満喫するための装備も多数となっている。
取材担当は、1001、1002も含めて今回の1028が初めてのM2試乗体験であったが、まずはスペシャリティ感あふれるインテリアに圧倒される。走らせてみるとエンジンの気持ち良さが際立っていて、低回転から高回転まで全域フラットなパワー特性。足まわりはテイン製の車高調に変更されていたが、Sさんに合わせたアライメントセッティングだと、少々操舵時の切れ込みが強めの印象だった。
M2はマツダの経営立て直しの一環として95年にその活動を休止し、この1028が最終モデルとなった。「こんなすげぇクルマを280万で売ってれば、そりゃ経営もおかしくなるよな」というのが、正直な感想だ。
TEXT:川崎英俊(Hidetoshi KAWASAKI)/PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
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