当欄では「○○○を普段使いする!」とのタイトルの下、さまざまな絶版輸入車の現実的な購入ガイダンス(というか生活への導入ガイダンス)を展開している。で、○○○の部分には毎回適宜、筆者が推奨したい絶版車のモデル名が入ることになっている。
たとえばそこに「80年代のメルセデス」と入っても、どうということはない。1980年代のW123やW124と呼ばれたコンパクト/ミディアムクラスを日常使いしている人間など、世の中にはすでに星の数ほどいるからだ。メルセデスではなく「BMW」や「ポルシェ」と入ったとしても、話はおおむね同じであろう。
だが、そこに「ロールス・ロイス」と入ったとしら、どうだろうか?
多くの人は「や、さすがにそれはちょっと……」というような反応を示すのではないか。「さすがにそれはちょっと」という気分を具体的に分解するとしたら、それは以下の3方向になるだろう。
1. さすがにお金(車両代および整備代等)がかかりすぎる。
2. さすがにハイクラスすぎる感がある。
3. ハイクラスというか、皇族や王族でもない人間がそれを普段使いするのはさすがにちょっとトンパチすぎる(馬鹿者に見える恐れがある)。
個人的にはどれも理解できる話であり、特に2と3については同意する部分も多い。
だが1、すなわち購入時と購入後の予算問題については、意外と普通にイケてしまうのが(もちろん安いわけではないが)、80年代から90年代初頭にかけての絶版ロールス・ロイスというクルマなのだ。
2、3の問題をどう処理するかはとりあえず後回しとし、「往年のロールス・ロイスの導入可能性」について少々考えてみよう。
まずは簡単な歴史から。
ロールス・ロイス社は、1906年に英国で設立された航空機エンジンおよび乗用車のマニュファクチャラー。1931年には同じ英国のスポーツカーメーカーであるベントレーモーターズを買収し、押しも押されもせぬ「世界的高級車ブランド」となった。乗用車部門の顧客は主に王侯貴族か、あるいは並外れた成功を収めた実業人である。
しかし第2次世界大戦後は航空機用ジェットエンジンの失敗などから経営が傾き、1971年には乗用車部門、産業部門とも国有化された。そして1973年にはベントレーを含む乗用車部門が分離民営化。ロールス・ロイス シルヴァースパー(ベントレー版ではミュルザンヌ)、ベントレー ターボRなどの贅を尽くしたサルーンを新たに開発製造し、世界中でヒットさせた(もちろんヒットと言っても限られた数の王侯貴族や、それに準ずる少数の人が買ったのみではあるが)。
だが1992年になるとロールス・ロイス・モーターズはドイツBMW社との提携を開始し、一部モデルにはBMW製のエンジンが搭載されるようになった。そしていくつかの伝統的モデルも生産中止とあいなった。
さらに1998年には、ロールス・ロイスの当時の親会社だった英国ヴィッカーズ社はロールス・ロイス・モーターズの売却を決定。紆余曲折あったが、最終的にはドイツの大衆車メーカーであるフォルクスワーゲンがそれを買収した。
以降、2002年末まではフォルクスワーゲンがBMWからエンジン供給を受けながらロールス・ロイスの従来モデルを製造販売し、2003年1月からは「ロールス・ロイス」ブランドの乗用車をBMWが製造販売し、「ベントレー」ブランドのそれをフォルクスワーゲンが製造販売する体制になっている。
カーマニアからは「もっといろいろ細かい話があるだろうが!」というお叱りも受けそうだが、以上がロールス・ロイスならびにベントレーという高級車ブランドの誕生から現在までのあらましである。サマライズするなら以下のとおりだ。
・ロールス・ロイスは王侯貴族的な人向けの超高級乗用車ブランド。
・ベントレーは、そのスポーツカー版。
・だが1990年代途中からはBMWあるいはフォルクスワーゲンの「血」が入り、それまでの(英国富裕層から見ての)純ドメ車ではなくなっている。
で、筆者が今回提唱しているのは「ということで1980年代ぐらいに作られた純粋なロールス・ロイスまたはベントレーを、2018年の日本である程度普通に乗ってみるのはどうでしょう?」という話だ。具体的な車種名としては、
・ロールス・ロイス シルヴァーシャドウ(セダン)
・ロールス・ロイス シルヴァースパー(シルバーシャドウの後継モデル)
・ベントレー/ロールス・ロイス コーニッシュ(1982年以降はドロップヘッドクーペ=オープンモデルのみ)
あたりとなる。もちろんケース・バイ・ケースではあるが、現在流通しているのは主に1970年代途中から1993年あたりの個体。要するに「25年から40年落ちぐらいの、王侯貴族向け=超高級な部材がふんだんに使われているクルマ」ということだ。
それゆえ、冒頭付近に登場した架空の人物のように「や、さすがにそれはちょっと……」とビビるのも、当然といえば当然の話ではあろう。
が、意外とビビる必要はないのだ。
「普通のクルマ」というのは、仮にそれがなかなかの高級セグメントに属するものであっても、オーナーが代替わりするたびにさまざまな属性の人間に所有され、その結果として、一部の個体はかなり「残念な状態」になっていく。街道沿いの激安中古車店で野ざらしにされているベンツSクラスなどが、その好例だ。
だが今回のお相手は「ロールス・ロイス」である。あるいは、ロールス傘下だった時代のベントレーである。いわゆる普通の人が、仮にちょっと小金があったとしても買うような車種ではない。歴代のオーナーは王侯貴族……というのは日本にはいないが、それに類するような生活を送っている人が大半だ(もちろん「絶対にそう」ではないが、そうである可能性は非常に高い)。
そういったクルマを、日本の一部に存在する「こだわりの専門店」が整備し、しかるべき消耗部品を交換し、そして内外装の美観を整えて販売しているとしたら?
……答えは簡単である。「意外と普通に維持できる」だ。
筆者が「こだわりの専門店」のひとつに取材したところによれば、「素性の良い個体を、しかるべき専門家がしっかり整備したモノであれば」という条件付きではあるが、80年代付近のロールス/ベントレーの維持費(必要な整備費用)は、せいぜい年間にならして20万円程度。何か不測の事態が起きたとしても、せいぜいその倍ぐらいで済む場合がほとんどだという。
もちろん、おおむね500万円前後にはなるはずの車両代金と合わせて、決して「安い買い物」ではない。
だが、ありがちな現代的高級車では絶対に出せない唯一無二の個性と、とろけるほど甘美なステアフィールと乗り味(前に乗っても後ろに乗っても!)を今生において味わうための代金としては、決して「高すぎる」ということもないはずだ。
あとは、あなたが「往年のロールス/ベントレーを普段使いする」というトンパチなライフスタイルを良しとするかどうか……という問題が残るのみである。
どうお考えになるかはもちろん人それぞれだ。しかし筆者としては「それってかなり素敵な人生では?」と思うのだが、果たしてどうだろうか。
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