流麗なスタイルと手頃な価格で走り好きな若者に大人気
日産スカイラインGT-R、フェアレディZ、そしてシルビアといった、日産スポーツの三枚看板の陰に隠れて、ちょっと目立たない存在の180SX。しかしこの“ワンエイティ”も、日産の名車リストからは外せない一台だというのをご存じだろうか。
デビューはR32スカイラインGT-Rと同じ、1989年の平成元年。よく知られているように「SX」は日産の輸出用ミドルサイズ・スポーティークーペを表す記号的名称だ。
180SXも当初は北米輸出仕様として企画され、ベースモデルのS13シルビアから約1年遅れて日本国内での販売が始まった。エンジンやプラットフォーム、トランスミッション、サスペンションなど、基本的にS13シルビアとまったく同じ。
違いは主にエクステリア。シルビアが2ドアクーペだったのに対し、180SXはファストバックの3ドアクーペで、リトラクタブルヘッドライトを採用。S13シルビアには当初からNAモデルもあったが、180SXはターボモデルオンリーだったのも特徴のひとつ。ちなみに後期型になってNAモデルも追加された。
魅力はなんと言ってもシルビアと同じ5ナンバーサイズのボディでFRレイアウト。販売価格は179万円と安価で、パワフルでチューニングに適したターボエンジンというパッケージが若者に受けた。
S13シルビアと180SXのデビュー前、このクラスで絶大な人気を誇ったトヨタのカローラ・レビン/スプリンター・トレノ(AE86)にも、2ドアモデルと3ドアハッチバックが存在。ハチロクファンでも2ドアのレビン派と、3ドアハッチバック+リトラクタブルヘッドライトのトレノ派がいたように、S13シルビアとその兄弟車の180SXでも、それぞれ好みが分かれた。(レビンの3ドア、トレノの2ドアもある)
実際、AE86からS13シルビア、もしくは180SXに乗り換えたユーザーも多かったが、AE86時代に2ドアレビンだった人はS13シルビアに、3ドア+リトラのトレノだった人は180SXに親近感を抱いたのは確かだろう。
ただシルビアと180SXは乗り比べてみるとけっこう違いがあった。スタイルの違い以上に、走りの質感にこだわって180SXをチョイスしたワンエイティ・フリークは多い。具体的には、剛性感は歴代シルビア、とくにS15が上だが、ハッチバックの180SXはボディに“タメ”というか独特の粘りがあり、旋回性が滑らか。
また車重が1230kg(中期型モデル)と軽く、S15シルビアと比べても約60kgも軽い。2Lクラスのこのスポーティカーで60kgの重量差はかなり大きく、これが走りに大きく影響している。
さらに空力的にも180SXはいいものを持っていて、高速安定性はシルビアより180SXに軍配が上がった。 一方でタイヤの幅には余裕がないボディなので、シルビアの方が太いタイヤを履きやすい……。
当初、1.8リッターターボ(CA18DET型エンジン)の「SX」という意味で、180SXと名付けられたが、1991年のマイナーチェンジで2リッターターボのSR20DETにバージョンアップされても名称変更はないまま、1996年に2度目のマイチェンを経て1998年に生産終了。シルビアが1993年にS14に、1999年にS15へとモデルチェンジしたのに対し、180SXはエンジン以外大きな変更なく、約10年間、現役続行。
ハッチバックは大きな荷物やタイヤなども乗せやすく、使い勝手がいいのも大きなメリットだった。また、180SXにS13シルビアのフェイスを移植する“シルエイティ”などのカスタムでも話題になった一台でもある。
今年で生産中止からちょうど20年。まだまだ人気が高く、というよりじわじわ中古車の値段が上がって来ていて、平均相場は110万~120万円とかなり高値……。このままプレミアム車になっていくかどうかはわからないが、中古車価格に左右されず、180SXフリークに愛され続け、いつまでも大事に乗ってもらいたいクルマだ。
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