現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > どん底から這い上がれ!! ホンダF1の期待値は? 試練の年がいよいよ開幕

ここから本文です

どん底から這い上がれ!! ホンダF1の期待値は? 試練の年がいよいよ開幕

掲載 更新
どん底から這い上がれ!! ホンダF1の期待値は? 試練の年がいよいよ開幕

 2018年のF1は、新車による合同テストも終え、開幕は3月23日(金)と目前(オーストラリアGP、決勝は25日(日))。新たなパートナー、トロロッソと共に戦うホンダF1の船出に注目が集まっている。いっぽうマクラーレンはルノーと組み、新シーズンを迎える。昨年、マクラーレンと組んだホンダは10チーム中9位と苦戦。批判の矛先の多くはホンダ側に向けられた。心機一転戦う今シーズン、ホンダは“元相棒”を見返し、上回ることができるのか。

文:津川哲夫
Photo:Getty images/RedBull Content Pool、Mclaren

鈴鹿でのF1日本GPが30周年!! 皆勤賞カメラマンが語る鈴鹿F1名レース5選

低予算ながら結果残してきたホンダの“新相棒”

トロロッソ・ホンダの「STR13-ホンダ」。バルセロナでの2回に渡る合同テストでは、計800周以上を周回。これはメルセデス、フェラーリに次いで全チーム中3番目に多い

 新パートナーシップ、トロロッソ・ホンダが始動した。

 トロロッソの新車「STR13-ホンダ」は、シェイクダウンから順調に走り出し、テストプログラムを次々と消化。

 トロロッソは、2014~2015年をトラブルの続いたルノー製パワーユニットで、2016年を一年落ちのフェラーリ製で、そして2017年はほぼ買い取りでサービスのほとんどないルノー製パワーユニットを搭載してきた。

 その推移を見る限り、トロロッソは新パワーユニット時代に入ってから、連続的な開発は全くできず、いつもそれぞれのパワーユニットへマシンを順応させることから開発を始めなければならなかった。

 これが毎年トロロッソのエンジニアリングチームにのしかかる試練であった。搭載するパワーユニットは、常に二線級でトップパフォーマンスには遠い存在。

 それでも少ない予算と非力なパワーユニットなりに結果を残し、中団争いを必死に戦ってきた。開発コンセプトの多くには手を出せず、得意なところを何とか伸ばす“一点集中開発的”な手法でシーズンを乗り切るのが、彼らのやり方になっていた。

ホンダF1のマクラーレン時代にはないメリット

これまでと違うブルーのマシンに彩られたホンダエンブレム。文字通りマクラーレンとトロロッソはまったく“チームカラー”が異なる

 2018年、そのトロロッソに新たな道が開かれた。ホンダとのコラボレーションだ。ホンダのパワーユニットは、2017年までは「非力で問題だらけ」と、業界では考えられていた。

 信頼性に欠け、性能にも欠け……2017年までパートナーだったマクラーレンは、チーム低迷の全てを「ホンダパワーユニットの非力、ホンダの努力不足」と攻め続けてきた。そして「マシンは最高でトップ争いができるのに……」と。

 そして、多くの目線はこの言を信じ、ホンダパワーユニットを見下していた。メディアもその例外ではなかった。

 確かに最初の2年間は間違いなくホンダの失敗と言われても致し方ない。しかし、2017年からは話が違った。マクラーレンは最初からホンダとの関係解消を狙っていたとしか考えられない現象が続いたのだ。

 したがってホンダは、いかなるパワーユニット開発をするときも、マクラーレンの車体側からの協力は得られなかった。これが今シーズンと実に大きな違いとなる。

“上から目線”ではない新相棒と高まる期待値

ホンダのスタッフとドライバーのピエール・ガスリー。その表情からもチームとしての風通しのよさが伺える

 トロロッソは初めて“ワークスパワーユニット”を手に入れた。これはパワーユニットという「ハード」だけでなく、それに付随するあらゆる「サービス」をホンダから受けられ(これはトロロッソ史上経験のないサポート体制となる)、パワーユニットに関わる予算の全てはホンダが肩代わりし、トロロッソは予算の多くをそのまま車体開発に使うことができるのだ。

 技術責任者のジェームス・キーは「この状況はエンジニア天国だ」とさえ言い切る。また「ワークスチームとしての責任」という言葉を使い、「お互いの向上がお互いの責任、片側だけの向上はあり得ない、双方の向上こそがお互いの責任」とその堅い協力関係を誓う。

 これは昨年までのマクラーレンの上から目線で責任の全てをパートナーに押し付けるやり方、考え方と大きく異なる。

 もちろん、トロロッソ・ホンダの新車は、2017年9月に急遽決まったホンダPU搭載により、短時間で換装をしなければならず、マシン的には昨年のSTR12(2017年仕様)のホンダ版、新規則対応型。

 パフォーマンス的に大きな向上を期待するのは難しいが、STR13-HONDAがテストでいきなり見せた信頼性の高さ、ずば抜けた走行距離(10チーム中3位)、満足のゆくタイム、速い最高速(10チーム中4位)……若い2人のドライバーが語るように、中団の高い位置を戦う要素は充分に持っていると考えてもよさそうだ。

対照的に前途多難なマクラーレン

ルノー製パワーユニット搭載のMCL33。「ロールフープ」が極めて小さい。テストではトラブルが相次ぎ、周回数は10チームワーストの619周にとどまった

 では、今シーズンから宿敵となったマクラーレンはどうだろう。

 マクラーレン・ルノー「MCL33」は、極めて見た目の良いスタイルをしている。しかし、スマートで実にコンパクトではあるが、あくまでもマクラーレンとルノーとの関わりは、マクラーレン史上初で、ルノーのパワーユニットは(他チームと)同じでも決してワークスサポートを受けられるわけではないはずだ。

 だからこそ、エントリダクトやインテークなど、そのサイズに若干の問題がありそうな気がする。今シーズンは、どのチームも極端に「低く、狭く、コンパクト」という空力三原則を守り、かなりタイトなサイドポッドがトレンド。

 その裏にはシーズン3基までのパワーユニット使用制限があり、レースを有利に展開するにはペナルティを避け、耐久性確保への大きな安全マージンが必要という事情がある。内容的には見た目ほどシビアに設計を攻めてはいないのだ。

 その証拠がどのチームもサイドポッドの入り口を絞ったぶん、ロールフープ(ドライバー頭上の空気取り入れ口)等のインテークを拡大していることに表われている。冷却空気流の動線をしっかり確保しているわけだ、マクラーレン以外。

 それでも流石マクラーレン、テストではしっかりとしたタイムを出してはいるが、どう見ても前途多難を感じさせてしまう。

 さてこんなマクラーレンに、トロロッソ・ホンダはどこまでリベンジが果たせるだろうか……ファンとしては最も興味深い今シーズンの見どころということになる。

■2018年 F1グランプリ日程■
第1戦 オーストラリア 3月25日決勝
第2戦 バーレーン 4月8日決勝
第3戦 中国 4月15日決勝
第4戦 アゼルバイジャン 4月29日決勝
第5戦 スペイン 5月13日決勝
第6戦 モナコ 5月27日決勝
第7戦 カナダ 6月10日決勝
第8戦 フランス 6月24日決勝
第9戦 オーストリア 7月1日決勝
第10戦 イギリス 7月8日決勝
第11戦 ドイツ 7月22日決勝
第12戦 ハンガリー 7月29日決勝
第13戦 ベルギー 8月26日決勝
第14戦 イタリア 9月2日決勝
第15戦 シンガポール 9月16日決勝
第16戦 ロシア 9月30日決勝
第17戦 日本 10月7日決勝
第18戦 アメリカ 10月21日決勝
第19戦 メキシコ 10月28日決勝
第20戦 ブラジル 11月11日決勝
第21戦 アブダビ 11月25日決勝

こんな記事も読まれています

『絶対完走』の重圧に耐えた勝田。来季シートがかかっていたことを示唆【ラリージャパン後コメント】
『絶対完走』の重圧に耐えた勝田。来季シートがかかっていたことを示唆【ラリージャパン後コメント】
AUTOSPORT web
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 後編 ジャンクヤード探訪記
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 後編 ジャンクヤード探訪記
AUTOCAR JAPAN
中型からステップアップ 人気の“ミドルクラスネイキッド”スズキ「SV650」とカワサキ「Z650RS」どっちを選ぶ?【スペックでライバル比較】
中型からステップアップ 人気の“ミドルクラスネイキッド”スズキ「SV650」とカワサキ「Z650RS」どっちを選ぶ?【スペックでライバル比較】
VAGUE
ラリージャパンで一般車の侵入という衝撃トラブルが発生! SSのキャンセルもあるなかトヨタ勢は2・3・5位に着ける
ラリージャパンで一般車の侵入という衝撃トラブルが発生! SSのキャンセルもあるなかトヨタ勢は2・3・5位に着ける
WEB CARTOP
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 前編 ジャンクヤード探訪記
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 前編 ジャンクヤード探訪記
AUTOCAR JAPAN
サーキット派に朗報! ウェッズスポーツ「TC105X」に16インチの新サイズ登場…マツダ「ロードスター」や走りのFF車にオススメです
サーキット派に朗報! ウェッズスポーツ「TC105X」に16インチの新サイズ登場…マツダ「ロードスター」や走りのFF車にオススメです
Auto Messe Web
【ラリージャパン2024】最終ステージでトヨタが逆転! マニュファクチャラーズタイトル4年連続獲得、豊田章男会長「感動という共感を生んだ」
【ラリージャパン2024】最終ステージでトヨタが逆転! マニュファクチャラーズタイトル4年連続獲得、豊田章男会長「感動という共感を生んだ」
レスポンス
独創的な「近未来」フォルム! シトロエンCX 5台を乗り比べ(1) モデル名は空気抵抗係数から
独創的な「近未来」フォルム! シトロエンCX 5台を乗り比べ(1) モデル名は空気抵抗係数から
AUTOCAR JAPAN
1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用
1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用
AUTOCAR JAPAN
4連覇を決めたフェルスタッペン「苦しいシーズンの中で多くのことを学んだ。だからこそ特別だし、誇らしい」
4連覇を決めたフェルスタッペン「苦しいシーズンの中で多くのことを学んだ。だからこそ特別だし、誇らしい」
AUTOSPORT web
【ポイントランキング】2024年F1第22戦ラスベガスGP終了時点
【ポイントランキング】2024年F1第22戦ラスベガスGP終了時点
AUTOSPORT web
カワサキ新型「レトロスポーツモデル」に反響多数!「古き佳き」スタイリングが“現代”に刺さる!? 玄人も注目する“バイクらしさ”を味わえる「W230」とは?
カワサキ新型「レトロスポーツモデル」に反響多数!「古き佳き」スタイリングが“現代”に刺さる!? 玄人も注目する“バイクらしさ”を味わえる「W230」とは?
くるまのニュース
「ジャガー」のブランドロゴが大胆に変更! 英国の名門ブランドはどこに向かう? まもなく登場する“新たなコンセプトカー”とは
「ジャガー」のブランドロゴが大胆に変更! 英国の名門ブランドはどこに向かう? まもなく登場する“新たなコンセプトカー”とは
VAGUE
村民の力で蘇った昭和のボンネットバス! 熊本県・山江村の宝物マロン号がロマンの塊だった
村民の力で蘇った昭和のボンネットバス! 熊本県・山江村の宝物マロン号がロマンの塊だった
WEB CARTOP
本物の贅沢──新型ロールス・ロイス ブラック・バッジ・ゴースト・シリーズII試乗記
本物の贅沢──新型ロールス・ロイス ブラック・バッジ・ゴースト・シリーズII試乗記
GQ JAPAN
道東道直結の“新道”がついに完成! 高速道路開通と同時に国道「8.8kmバイパス」の残り区間が拡幅
道東道直結の“新道”がついに完成! 高速道路開通と同時に国道「8.8kmバイパス」の残り区間が拡幅
乗りものニュース
[サウンドユニット・選択のキモ]メインユニット編…交換する意義を考える!
[サウンドユニット・選択のキモ]メインユニット編…交換する意義を考える!
レスポンス
【F1分析】速いチームがコロコロ変わる。実に難解だったラスベガスGP。鍵はもちろん”タイヤの使い方”だけど……
【F1分析】速いチームがコロコロ変わる。実に難解だったラスベガスGP。鍵はもちろん”タイヤの使い方”だけど……
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村