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レース現場で学ぶ学生! 日産自動車大学校が実施する「メカチャレ」が未来の自動車業界を創る

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レース現場で学ぶ学生! 日産自動車大学校が実施する「メカチャレ」が未来の自動車業界を創る

 この記事をまとめると

■全国に5校構える日産自動車大学校はレース現場での実習を行っている

スーパーGTの現場で学生を鍛える! KONDO Racing×自動車大学校の「日産メカニックチャレンジ」には熱い魂が溢れていた

■「メカニックチャレンジ」は3つの分野に分かれてレースをサポートしている

■実際に現場で活動する学生たちにインタビューした

 クルマを通してさまざまなことが学べる!

 突然だが、皆さんは音楽や写真、美容などと同じような感じで、「自動車の専門学校」があるのをご存じだろうか?

 これらの学校は、規模こそ異なるが日本全国に点在しており、学校の授業を通してクルマの仕組みを学び、最終的には国家試験を受けて自動車整備士になるといった流れが一般的。筆者も、過去に石川県のとある学校を取材したことがある。キャンパス内には新旧さまざまなクルマやエンジン、補機類などが用意されているほか、オープンキャンパスなどで生徒たちが作品としてカスタムしたクルマを展示することもあるそうで、それらのカスタムパーツなどの素材も数多く用意されており、まさにクルマ好きからしたらデカい宝石箱のような施設であったのをよく覚えている。

※画像は日産自動車大学校 京都校のキャンパス内

 今回紹介するのは、そんな自動車系の専門学校のなかでも最大手の一角とも言える、日産自動車大学校の栃木校だ。

「日産自動車大学校」と聞いて、ピンときた人は勘がいい。そう、この学校は日本でもっとも盛り上がっているモータースポーツであるスーパーGTのGT300クラスに出走する56号車「リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R 」のメインスポンサーとして活動している学校なのだ(同じくKONDO RACINGでGT500クラスを走る24号車にもわずかながら携わっている場合もある)。

 そもそもなぜ、つい数年前まで高校生であった学生たちが、スーパーGTの現場に携わるようになったのか?この「メカニックチャレンジ(通称:メカチャレ)」というプロジェクトは、いまから11年前の2012年まで遡る。

 当時、マッチの愛称でお馴染みの近藤真彦監督率いるKONDO RACINGでは、「若者のクルマ離れ」に危機感を持っていたそうだ。当時から日産の車両でレースを行っていた同チームは、そんな相談を関係各位にしていたそう。そこで出た企画が、「学生たちをレース現場で実習させよう!」という案。

 もちろんモータースポーツは命懸けの現場で、「授業+α程度でしかクルマに触ってない少年少女をそのような現場に連れ込むのはどうなんだ?」と、活動を疑問視する声も各所からあったという。しかし、「KONDO RACING」側はこれを快諾。こういった経緯があってこの活動が始まったとのこと。現在はスーパーGTとスーパー耐久に学生たちが関わっている。

 日産自動車大学校の校長を務める中村さんと、学長の本廣さんは「学生たちの多くは、ゲームや動画の世界でしかモータースポーツを知りません。乗用車は日々触りますが、せっかくならレースという極限の現場で”ホンモノ”を知ってもらいたいという願いもあります」と語る。

 国内最高峰のレース、それも現場で実際に動けるのだから、今後の進路がたとえクルマ関係でなかったとしても、一生自慢できるような貴重な経験になるのは間違いない。話を聞いていて学生に戻りたくなったほどだ。

 また、この「メカチャレ」を経験した生徒たちは、たった2、3日の期間であるが、参加する前と参加後では目つきが変わるほどの刺激があるとのこと。「学生の成長を間近に感じられるのが、我々教師からしても嬉しいですね。参加前までは少し気が緩んでる学生がいても、このメカチャレを経験したあとだと人が変わったみたいになる例もあるんですよ(笑)」と苦笑い。

 学生のなかには、「このカリキュラムがあるから学校に入ったんです!」という生徒も大勢いるそうだ。

 では、このメカニックチャレンジ、現場で実際にどういったことをするのだろうか? 「メカ」というくらいだから「車両の整備がメインなのだろうか?」と筆者は勝手に思っていたのが、じつはこの活動、大きく3つの分野に分かれているのだ。

 ひとつ目は「メカ」。これはその名のとおりピットまわりの作業をするコース。とはいえ、相手はGT300クラスのマシン。ガッツリと整備をしたりすることはないそうだ。ただし、決勝や予選で使うタイヤ運びやマシン、ピット内の掃除、チームメカニックのサポートがメインとなる。

 また、グリッドウォークでグッズなどを配ることもするそう。経験した生徒からは「スーパーGTのピットの緊張感は迫力は物凄く、目の前でキビキビ働くプロのメカニックは違うんだなと、身をもって学ぶことだらけです」とのこと。

 ふたつ目は「ホスピタリティ」。これは、毎戦スーパーGTの観客席内に設けられる、関係者が出入りする日産自動車大学校のラウンジのコントロールなどを行う分野。スポンサーの社長や役員、その家族などが訪れる場所で、飲食物の提供などを行う。

「クルマと関係ないじゃん」と感じる人もいるかもしれないが、人間対人間のやり取りが必要な分野なので、人間力を磨くといった意味ではもっとも大切なジャンルだ。実際、1度経験すると「またこれがいいです!」という学生も多い人気のカテゴリーなのだ。

 3つ目は「広報」。これはその名のとおり、レースリポートや校内の掲示物や関係冊子に使う原稿や写真を扱う部門で、ピット内などに入ってチーム関係者にインタビューするといったこともこなす。筆者のような仕事を学内で行う部門といったところだ。

 しかしこのコース、決してごっこ遊びではなく内容はかなり本格的。実際に学校に某自動車メディアの編集長が講師として訪れ、取材の極意を定期的に教えているほどなのだ。自分も受講させてもらっていいですか……?

 これらのコースが用意されており、レース前に有志たちが応募して抽選で選ばれるといった仕組みだ。原則、コースは選べないというが希望は聞くそう。倍率が高いので外れることもよくあるが、その際は次回優先的に選ばれる救済システム付き。毎回合計30~40名程度が集められるとのこと。

 日産自動車大学校は日本全国に5校あるので、レース毎にそのコースに近い学校から学生が送り込まれる。富士スピードウェイであれば栃木校や横浜校、オートポリスであれば愛媛校といった具合だ。

 これが、メカチャレの主な流れと内容。続いて、当日現場を経験した学生たちに感想を聞いた。

「もう何回も参加してます!」 どハマりする生徒が続出

 今回話を聞いたのは、昨年モビリティリゾートもてぎで行われたスーパーGT最終戦の「メカニックチャレンジ」に参加していた学生たちだ。忙しいなか、「メカ」「ホスピタリティ」「広報」の分野ごとにそれぞれ来てもらった。

 まずは、日産のツナギがよく似合っている1年生の菊田さん。

「将来は自動車関係の仕事に就きたい」という想いを胸に、日産自動車大学校の門を叩いたという。今回の参加では、マシンの出入りの際にピット内の清掃とグリッドウォークではグッズの配布を主に担当していたとのこと。

 まだ学校に入って半年そこそこということもあり、現場がどんな場所かイメージが湧かなかったそうだが、いざ参加してみると、あまりの迫力にかなり驚いたそう。今後も「メカチャレ」には参加したいとのこと。

「菊田さんにとってメカチャレは?」と聞いてみたところ、「現場のプロたちを見て自分を発見できる場所です」と目を輝かせて語ってくれた。クルマを通してこのような経験を積めるのが、インタビューしていてとても羨ましい。そんな熱意溢れる青年であった。

 次に話を聞いたのが、「ホスピタリティ」を担当する4年生の大澤さん。校長先生や教師陣からは「うちのエースです!」と、話を聞く前から太鼓判を押されるほどの逸材とのこと。それもそのはず、「何回くらいやってるの?」と聞くと「これで7回目くらいです!」との回答が! 激推しされる理由も納得だ。実際、現場では大澤さんのまわりには数多くの生徒が集まり、陣頭指揮を取っていた姿が輝いていた。

 そんな大澤くんは、中学生のころに進路相談会を行っている会場内でたまたま「日産自動車大学校」と、「メカチャレ」の存在を知ったそう。そこからすぐに進路は決定! 高校卒業後、そのまま日産自動車大学校に。昔からクルマが好きとのことで、現在はER34型のスカイラインを愛車に、学校で教わった内容を活かして愛車の整備も行なっているそう。

「このジャンルって、整備とはかけ離れてるけどいいの?」と聞くと、「いろいろやりましたが、これが1番楽しいです!」という元気な返答が。詳しく聞いてみると、「このホスピタリティの分野は、訪れるお客様がさまざまな人なので、話をするのがとても楽しくて充実してます」という。

「大なり小なりトラブルが起きるのが現場で、そういった有事の際にどう動くで技量が試されるので、そういったことへの挑戦し甲斐もこの分野にはありますね」と、力強く語ってくれた。卒業後は日産自動車の実験開発を行う分野に進むという。ここでの経験は間違いなく生きるはずだ。こういった青年にぜひ自動車業界を引っ張っていってもらいたいと思った瞬間であった。

 最後に話を聞いたのが、「広報」の分野で活動していた岡田さん。菊田さんと同じく1年生だ。この「メカチャレ」の参加は今回で2回目とのこと。これまたクルマとは直接関係ないジャンルだが、岡田さんは「普段は授業でもちろんメカを触ってますが、メカチャレでは広報がやりたくてやってます!」との返事が。

 このジャンルの魅力は、ドライバーや監督からファン目線では聞けない生の声を聞くことができるほか、写真を撮ってみたかったので、そういったことにチャレンジできるのも利点なのだそう。岡田さん曰く「この3つのなかだと1番僕にとって人生経験が積める貴重な場なんです」と語ってくれた。

 いままでの活動で印象的だったのは、自身で企画した「チーム関係者の勝負飯とは?」といったモノで、これをテーマにKONDO RACINGの近藤真彦監督に直接インタビューし、リポートにしたことが大きな経験かつ思い出になったそう。学校内では、先述した某自動車メディアの編集長が写真の撮り方や取材の仕方も教えてくれるので、とても楽しいし頼もしいと語ってくれた。「この精神を忘れてはいけないな」と、改めて学生から学んだのであった。

 そんな学生たちの活動を見守っているのが、日産自動車大学校栃木校で教鞭を振るう高山先生。先生は2019年からこのメカニックチャレンジ全体を統括している方で、普段は1級自動車工学科の3年生の担任も務める。

 先生は、「この活動は、1回あたりたった3日間ですが、生徒の成長をダイレクトに感じることができるので、我々教師もすごくやりがいを感じていますし、これが日産自動車大学校の大きな武器だと思ってます。実際にこのメカチャレを経て卒業生がKONDO RACINGで活躍していたり、OBがレースの際に訪ねてくれたりするのも嬉しいですね」と、熱烈に語ってくれた。

「生徒たちもアイディアをいろいろ出してくれるので、現場は常にアップデートされていますし、団結力も高いです。そうしたプラス要素もあって、2022年はGT300クラスでクラスチャンピオンも獲得しています。もう欠かせない活動ですね」。

 そんな熱意溢れる日産自動車大学校が独自に行うメカニックチャレンジ。学生たちをインタビューしてみると、どこかに置いてきた熱意を再び呼び覚ましてくれるような感じがした。

 今後の活動も引き続き見守り、応援したい。彼らがいる限り、まだまだ日本の自動車業界は明るいはずだ。

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