40年近くにのぼる長い歴史の中でも、今回の改良はもっとも大幅なものだという新型Gクラスに、日本で試乗する機会を得た。試乗コースはオフロードとオンロード。そこには“あまり変わらない外見”からは想像できない中味の大きな進化があった。(Motor Magazine 2018年9月号より)
1979年の誕生から受け継がれる精神
Gクラスは、変わらないことに大きな価値を持つクルマだと思う。そうした意味では、新しいGクラスを見て、ほっとした人も多いのではないだろうか。そんなクルマは今どき珍しいだろう。変わらないからこそ売れているクルマ、つまり姿形が変わってしまったら、その魅力は大きく変化してしまうかもしれない。そう考えている。
もしかしたらメルセデスもそう考えているのかもしれない。それはGクラスは“新型”を謳うものの、オールニューではなく大幅なマイチェンであることからもわかる。なかなかこうしたモデルをフルチェンジするのは難しいということなのか。それとも売れているものはあえて変える必要はないということなのか。おそらく後者ということだろう。今の姿形が好評なのに、わざわざ失敗するかもしれないデザイン変更などする必要はない。
改めて新型Gクラスをよく見てみよう。写真では「あぁ変わったな」と思っていたのだが、実際に新型を目の前にしてみると「どこが変わったのか」と従来との違いを探している自分がいた。さて、どこが変わったのか。
見た目があまり変わらないようだが、サイズは従来比で全長+53 mm、全幅+64 mmも拡大している。それとは逆に、ボディは約170kg軽量化しているという。この軽量化に大きく貢献しているのはボディ構造の見直しとボディパーツごとに最適な素材を使用したことだという。たとえばAピラーやBピラーは高張力スチール、フェンダー、ボンネット、ドアはアルミニウム製としている。
室内は従来より広くなり、前席レッグルーム38mm、後席レッグルームは150mm、前席ショルダールームは38mm、後席ショルダールームは27mm、前席エルボールームは68 mmとそれぞれ拡大され、居住性が大幅に向上した。
変わらない高い悪路走破性と向上したオンロードの快適性
試乗には、オフロードコースも用意されていた。ここでは従来型Gクラスと比較した試乗もできたのだが、悪路走破性にそれほど大きな違いは感じられなかった。つまり、通常のオフロードコースであれば、Gクラスは以前から楽々とクリアできる実力の持ち主だということだ。
ただしオンロード試乗では、大幅な進化ぶりを感じることができた。一番最初に感じたのは室内の静粛性だ。Gクラスということもあり、それほど静かな室内空間というのを期待していたわけではないが、新型のそれはまさしくメルセデスのSUVに相応しいものになっていた。
乗り心地も快適だ。パワーもトルクも有り余るほどあるので、アクセルペダルを深く踏み込むようなシーンを街中で経験することはないが、そこで多用する2000rpm前後の乗り心地がとてもいいのだ。路面によってはふわふわとした乗り心地を乗員に伝えるようなこともあったが、そんな時はドライブモードを“スポーツ”に変えれば、走りはスポーティなGクラスという印象に一変する。それでも、ゴツゴツした硬い足ではなく、デフォルト設定の“コンフォート”より、足もとが引き締まって乗りやすいという程度である。
最後になったが、劇的な進化を感じるのは、実は室内に乗り込んだ瞬間である。12・3インチの大型ディスプレイを2枚並べたインパネがなんとも圧巻だ。これを見ると、今、まさに新しいメルセデスに乗っていることが自然と感じられる。(文:千葉知充)
メルセデス・ベンツ G550 主要諸元
●全長×全幅×全高=4817×1931×1969mm ●ホイールベース=2890mm ●エンジン=V8DOHCツインターボ ●排気量=3982cc ●最高出力=422ps/5250-5500rpm ●最大トルク=610Nm/2000-4750rpm ●トランスミッション=9速AT ●駆動方式=4WD ●車両価格=1562万円(2019年1月より新価格1593万円)
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