旧型オーナーが復活を待ち望んでいるクルマ多し
年頭にあたり、後ろ向きな発想ながら「復活してほしい往年の名車」を挙げてみた。日産GT-RやフェアレディZ、トヨタ86など、往年の名車は一時的に途絶えても復活するケースが多い。
【これぞ名車の証し】車名ではなく「型式」で愛されたクルマたち
最近ではホンダ・ビートの後継としてS660、スズキ・アルトワークス、そしてホンダNSXも新世代モデルとして復活を遂げている。とくにスポーツカーは自動車メーカーのブランドイメージを牽引する効果が高いので、現状では断絶していても、将来的には新世代モデルとしての発売再開が期待できるジャンルだ。
日産シルビアやトヨタ・スープラなど、定期的にクルマ雑誌のスクープ記事(予想記事)として復活の噂が盛り上がる絶版車も少なくない。
今回挙げた5台は筆者の希望的な想像でしかなく、何かしらの具体的な根拠があるわけではないので、その点はご容赦を。
1)スバル・アルシオーネ
1985年、バブル経済の真っ只中にSUBARU初のスペシャルティークーペとして誕生。リトラクタブルヘッドライトや6気筒、FF車ではCd値0.29を実現するなどSUBARUとしては初づくしの性能やデザインを投入した意欲作だった。おもに北米市場での拡販を狙うも急激な円高もあって販売は伸び悩み、国内ではハイソカーブームに乗り切れず。
「SVX」の名がついた2代目もジウジアーロ原案デザインやFRの回頭性と4WDの安定性を両立させたVTD-4WDなど、エンジニアの執念が凝縮された入魂作として復活。玄人筋から高い評価を受けるもバブル経済の崩壊もあって販売は芳しくなく、1996年秋に生産終了。初代も2代目もSUBARUファンからは不遇の名車として偲ばれている。
結果論としては、当時のSUBARUブランドにプレミアムなクーペモデルは時期尚早だったと評されることが多いが、総額700万円にも達する高額な限定車が即完売する今のSUBARUブランドなら、アルシオーネのようなコンセプトのエレガントなクーペモデルは日米の両方の市場で受け入れられるはず。復活を望む声がジワジワと高まりつつある。
2)マツダ・コスモ
1967年、「コスモスポーツ」として世界の量産車初のロータリーエンジンを搭載する未来感満点のオーラを放ちながら華々しくデビュー。レシプロエンジンよりも軽量コンパクト、かつ高出力が得やすいロータリーエンジンのメリットを活かした低くて流麗なボディは、いまだ歴代国産車の中でも随一の美しさと評され崇められている。
その後、2代目モデルは「コスモAP」という「公害対策」の意味を持つ名を冠して登場。世界でもっとも清浄な排ガス性能と高出力を両立したとされる傑作名機のロータリーエンジン13B型を搭載し、オイルショック後に萎えまくった当時の日本車の中で群を抜く速さとクリーンさを発揮した。
合理化でルーチェの姉妹車となりながら、3代目モデルは13B型よりもさらに軽量コンパクトな12A型2ローターをターボ過給して搭載。そしてユーノス店扱いとなった4代目は3ローターターボの20B-REW型を搭載し、内外装や装備面でも豪華さを極める。生産終了から20年以上過ぎた今でも格好よさと速さ、燃費の悪さなどでクルマ雑誌の誌面にしばしば登場するほど人気は衰えず、復活を望む声も多い。
高度成長期から90年代までのマツダを支える基幹技術となったロータリーエンジン開発の父ともいうべき山本健一氏が2017年の12月に亡くなられたが、マツダ社内において、その志を継承する新世代のコスモの開発機運が高まることが期待される。
今のマツダのデザイン力をもってすれば、たとえレシプロエンジン搭載車でもコスモらしいといえる流麗なスタイリングのクーペが生み出せるはずだ。
小型ハッチにガルウイングという組み合わせのクルマも
3)日産プリメーラ
とりわけ異彩を放つ存在として強い印象が焼き付いているのは初代P10型。当時の日産が「1990年代までに技術の世界一を目指す」ことを掲げた、いわゆる901運動の申し子のようなクルマで、アウトバーンでの高速巡航を前提としたようなガチガチのサスペンションセッティングと鋭敏なハンドリングなど、国産5ナンバークラスのセダンらしからぬトンがった乗り味が大いに魅力的だった。WRXやランエボのようなスポーツモデルではない実用セダンとしては、いまだに操縦性の切れ味は歴代国産車最強ではないかと思える。ただ鋭く曲がるだけでなく安定性も高かった。
故・前澤義雄さんが日産のチーフデザイナー時代に手がけたエクステリアもまた、傑作との誉れが高い。欧州車テイストに溢れながらも模倣やコピー的な雰囲気は感じさせず、パッケージングも含めて、いまだ小型実用セダンの模範的なデザインとして通用する部分が多々見られ、今、新車で売られてもそれほど違和感がないと思わせるほど色あせていない。前澤さんが絵を描く際に強く意識したという「時間的耐久性」の高さを雄弁に証明する作品だ。
2代目はやや没個性化したものの、丸みを帯びて3ナンバー化した3代目は国産車離れした内外装デザインが特徴的で、国内外のさまざまなデザイン関連の賞を受けている。
セダン&ワゴン市場の冷え込みもあって3世代で断絶したが、シルフィとティアナの間を埋める、あるいはそれらに代わるスポーティな実用セダンとして復活すれば、国産セダン市場も加熱するに違いない。新世代の痛快な走りが堪能できる「e-POWER」のパワートレインを搭載するスポーツセダンがあれば、是非乗ってみたい。
4)トヨタ・セラ
1990年、小型ハッチバック車なのにドアがガルウイングという、いかにもバブル期の商品企画っぽい派生車が登場した。空前にして絶後のおもしろ国産車として、これもクルマ雑誌のリメンバー企画のレギュラーメンバー的な存在となってすでに久しい。
先日、とある高速道路のサービスエリアで久しぶりにセラを見かけ、オーナーさんと意見交換を交わす機会があったのだが、今見ると信じられないほどコンパクトなサイズなのに(全長3860mm、全幅1650mm)、スーパーカーのようにドアが真上に動いて開く姿はやはり圧巻! そしてルーフのガラス面積の大きさにもあらためて大きな衝撃を受けつつ、こんなトンがったデザインの国産小型車が存在する事実に感激した。同時に、ドアの開閉時に周囲の人の目を釘付けにするオーラは今もなお健在であることも実感。やはり、ガルウイング(正式な呼び名の議論はさておき)的なドアは、時代を超えて老若男女を惹きつける威力がある。
操縦性や燃費性能、使い勝手などの基本性能が軒並み一定以上の高い水準に達した今こそ、こういう遊び心に満ちた小型車が再来してほしいと思った。
5)ダイハツ・アトレー7(トヨタ・スパーキー)
軽ワンボックスのアトレーの全長を伸ばして3列シートを詰め込んだ小型ミニバン。実際には定員の7人でフル乗車するような機会はほとんどなくても(期待されずとも)、積載性の高い軽のワンボックスに、軽の約2倍の排気量を持つ余裕のあるエンジンを積むバンは業務用として多方面で重宝された。
生産期間は4年で、1世代限りで終わったクルマにしては現存個体が多く、生産終了から13年が経った今も街でちょくちょく見かける。オーナーさんに話を聞くと「コレに代わるクルマがないので」と困り顔をされることが多い。スバルのドミンゴなどでも同様の声をよく耳にするが、生産終了から13年が経ち、地味ながら、軽の7人乗りバンの需要が再び高まりを実感することが増えたので、そろそろ復活の頃合いではないだろうか。
商用ベースのワンボックスベースも良いが、それらと互角か見方によってはそれ以上に積載性の高い超ハイトワゴン系の軽自動車に1.3リッターぐらいのエンジンを積んだ仕様があれば、アトレー7/スパーキーに乗り続けているユーザーの受け皿となるのはもちろん、超ハイトワゴン系軽自動車の動力性能に不満を抱いている層を掘り起こせるかも知れない。
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