専用装備満載のRSは気持ち良い走りを披露する!
内外装ともにスタイリッシュで、ガソリンとHVが揃い、サービスで付いてくる3列目席がありながら低全高で立体駐車場にも入る。そんな、なかなかない商品性を持っていても月に100台程度しか売れていない。それが15年2月にデビューしたホンダ・ジェイドだった。理由はわかっている。乗用車価値を持つ3列シートの低全高・低重心ミニバンながら、2列目席はV字スライドするキャプテンシートで2人乗り限定。3列目席はかつてあったストリームより狭く使いにくかったからだ。
3列シート+スライドドアでもダメ! 人気ジャンルなのに売れないミニバン5選とその理由
でももう心配無用。いや、プチブレークする準備が整ったのだ。そう、ジェイドがマイナーチェンジし、2列シート、後席3人掛け+ラゲッジの5名乗車のワゴン版が新たなメイングレードとして加わったのだ。ベンチシート化された総幅1310mmのアップライトにセットされた後席は、スライド機構こそ持たなくなったものの分厚いクッションが座面と背もたれに与えられ、左右席の掛け心地は抜群。ひざまわり空間はホンダのフラッグシップセダンのレジェンドの+10mm、新たなライバルと目されるスバル・レヴォーグの+140mm(ホンダ調べ)なのだからゆったり。身長171cmのボクのドラポジ基準なら270mmもある。後席エアコン吹き出し口もあるから、居心地は1年中快適だろう。
ちなみにアームレスト、引き出して180度回転させるとカップホルダー&トレーが出現する座面を備えた中央席は、左右席よりさらにアップライトでふんわりした掛け心地になるが、アームレストとして埋め込まれている背もたれ部分は合革張りで滑りやすいのが難点か。
注目のラゲッジは、開口部地上高680mmこそマイナーチェンジ前と同様だが、純粋なラゲッジフロアは奥行き920mm、幅990~1340mm、高さ770mm。床下収納もあって使いやすい。後席を格納すれば、80mmほどの段差はできるものの、フロア奥行きは1590mmに達する。つまり、立体駐車場への入庫性もばっちりのニュースタイルワゴン化されたのが新型ジェイドなのである。
全車にホンダセンシングを標準装備する新ラインアップは18インチタイヤ、専用サス、2列シート採用のRSにガソリンターボ/ハイブリッド、3列シートのみのXにガソリンターボ/ハイブリッド、約240万円で買えるエントリーグレード&2列シートのGにガソリンのみという布陣である。
ここで試乗したのは150馬力を発生する1.5リッターガソリンターボ+新CVT、専用サスペンション、18インチタイヤを奢るRSのガソリンターボ。足まわりのリファインはもちろん、CVTに全開時のアップシフト&ブレーキング時のステップダウンシフト制御を組み込み、ブレーキ性能、静粛性まで向上させたというのだから今回のMCは本気である。
新型ジェイドの乗り味はRSということもあって硬派。乗り心地はドシリとした骨太感あるもので、エンジンは素晴らしく伸びやか……とは言えないものの、新制御のCVTのおかげもあってそこそこパワフル。ちょっと残念なのは2000rpm台でザラつき感があることだ(同時に試乗したハイブリッドでは感じられなかった)。
しかし高速巡行では直進性の良さと車内の静かさが際立ち、低速域で硬く引き締まった乗り心地も、80km/hあたりを超えると俄然、フラットかつ心地良いものになる。デビュー当初から採用されていたノイズリデューシングホイールの効果で、高速道路の継ぎ目で発生しがちなポコン、ボコンというタイヤの空気音も押さえられ、ACC(約35~135km/hで作動)のおかげもあってロングクルーズでもストレスフリー。
箱根の山道に入ると、専用チューニングされたリヤマルチリンクサスペンション、ダンパー、18インチタイヤを奢るジェイドRSは本領をいかんなく発揮。低全高パッケージが功を奏し、ステアリングを切るとスッとインに向くリニアな回頭感、安定感に満ちたフットワークテイストを見せつける。ラバーバンド感など皆無に近いCVTの賢い制御もあって、スポーティーワゴンと呼んでいい痛快な走りを(とくに下りで)披露してくれたのだ。
久しぶりにジェイドに乗って、パッケージの改良でこれほどまで商品力が高まったクルマもめったにないと感心しきり。しかも2/3列、ガソリンターボ&ハイブリッドが揃うクルマなどめったにない。もちろん買うべきは今や日本車では希少な2列シートのワゴン版。3列シートが必要ならステップワゴンやフリードなどのよりミニバンらしい実用性を備えた選択肢があるからだ。約255万円、マイナーチェンジ前から新機能、装備満載で約2万円しか高くなっていない価格も魅力的と言えそうだ。
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