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【試乗】6代目フェアレディZ(Z34)の狙いは走りの気持ちよさを楽しむことだった【10年ひと昔の新車】

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【試乗】6代目フェアレディZ(Z34)の狙いは走りの気持ちよさを楽しむことだった【10年ひと昔の新車】

2008年12月、フェアレディZがフルモデルチェンジされ、6代目Z34が登場した。スポーツカーとして、その時代の空気を読み込みながら進化してきたフェアレディZは、この時、どんな変化を見せたのか。ここでは発表後まもなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年3月号より)

初代S30型から40年の時を経て6代目へと進化
フェアレディZがデビューしたのは、1969年。その初代S30型から40年の時を経て、6代目となる新型Z(Z34)が姿を現した。思えば、Zは私の社会人デビュー(自動車雑誌の出版社)とほぼ同時であり、これまでともに歩んできたクルマだ。それゆえ思い入れが深い。そこで少し長くなるが、Zとは何かを語りたい。

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初代ZはダッツンZ(あるいはズィーカー)の愛称でアメリカで大成功を収め、MGをはじめとする英国製ライトウエイトスポーツカーをまたたく間に駆逐してしまった。その理由は簡単だ。高性能で信頼性が高く、お手ごろな価格だったからである。当時のアメリカの自動車専門誌にZ(北米仕様の240Z)の記事があり、そこに「バーゲンGT」という表現があった。

それは「ポルシェ911に比べ価格は約半分、性能はほぼ互角で、いいクルマ」という日産に好意的な評価だった。バリュー・フォー・マネーなので「バーゲン」という語を使ったのだろう。アメリカ人はブランドバリューよりも実利的なクルマを選ぶユーザーが多い。

そのことがその後のZを運命づけることになる。つまり主戦場である北米マーケットのスポーツカー好き(カーガイという)の価値観に基づいたスポーツカーの路線を歩まざるを得なくなるわけだ。

そのためZは代を追うごとに大きく、パワフルになってゆく。しかし常に順風満帆のセールスが日米で持続したわけではない。世界の経済事情よってスポーツカー需要は大きく変動するからだ。

たとえば日本のバブル絶頂期に開発された4代目のZ32(1989年発売)はツインターボで豪華高性能を謳ったが、国内価格は410万円。前述した「バーゲンGT」とはいえないプライスとなってしまい、やがて内外の景気後退とともに売れ行きが落ち、さらに日産の業績悪化も重なって生産中止となってしまう。

それを復活させたのがカルロス・ゴーン社長。Zは日産の重要な精神的支柱(社員のやる気、熱意の根源)のクルマと判断したのだ。それが先代Z33(2002年発売)である。エンジンやプラットフォームを量販車からうまく調達して生産コストを抑え、ベースグレードは約330万円。スポーツカーとしてのポテンシャルも高次元であった。

「帰ってきたZ」は世界で歓迎されたが、日本のマーケットはさほど熱く燃えなかった。ユーザーのスポーツカー離れ、若い男性たちのクルマ離れが急加速していたからだ。というわけで、これまでのZ物語はこれにて。

足腰の筋肉がもの凄く鍛えられた感じ
新型Zの試乗会は小田原が起点で、走行ルートは湘南、箱根方面が設定されていた。Z34はZ33に比べ、どこがどう進化したのか、と注意深くスタートした。

初めに試乗したのは日産がシンクロレブコントロールと呼ぶシステムを搭載した6速MTのバージョンST。クラッチの踏力は軽いし、繋がりもスムーズ。箱根方面へ向かい、峠道の下りで4、3、2速とシフトダウンしていくとあら不思議、クラッチを切った瞬間エンジンの回転数がギアにシンクロ(同調)してくれる。そう、自動的にウォン・ウォンと。F1のインカー映像でコーナーに突っ込む時に聞こえるあのエンジンサウンドだ。これってピッタリ決めるのはかなり難しいが、高度な電子制御はこのワザをなんなくやってのける。ドライバーはブレーキングだけに集中していればいい。イヤな人はキャンセルもできる。

その後に乗ったバージョンTは7速AT(日産は7M-ATxと呼称)搭載車を選んだが、こちらもよくできていて楽しい。「世界一マニュアルに近いAT」を標榜するが、たしかにダイレクト感が強くとてもスポーティだ。パドルはGT-Rと同じ形状である。

さて、Z34でもっとも重要なポイントが「曲る、止まる」性能のジャンプアップだ。それをどう表現したらいいのかいいか悩んだが、こんなのはいかが。

私はZ34に「おんぶ」してもらい背中で運転している。それは母親ではなく、アラビアンナイトに出てくる魔法のランプの精のような筋骨逞しい大男。それで「この先の曲りくねった峠の頂上まで急いでくれ」とZ34に囁くと、「ご主人様、よろしゅうございます」と猛然ダッシュ。人の言葉がわかるのだ。「おっと、この先に穴ぼこがあるぞ」といえばスパッと俊敏に減速、回避。振り落とされることなく安心して目的地に到着できる。馬より人に乗っているという感じなのだ。豪脚が地をたくましく蹴るのが伝わってくる。よほど足腰を鍛え上げたのだろう。

今回の大幅進化は、軽量化と高剛性ボディの構築、ホイールベースの短縮(100mm)、そして各部の徹底的なリファインによるものだが、私がもっとも感じ入ったのは車体計画・設計グループの和田光司さんが「どうしてもZが作りたくて某メーカーから転職してきました」と私に洩らしたひとことだった。若く、情熱的な和田さんの作ったボディは、軽く、強い。

最新のZはもちろん最良のZ。「真のバーゲンGT」と断言できる。(文:Motor Magazine編集部/写真:赤松 孝)

日産 フェアレディZ バージョンST 7速AT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4250×1845×1315mm
●ホイールベース:2550mm
●車両重量:1530kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3696cc
●最高出力:247kW(336ps)/7000rpm
●最大トルク:365Nm/5200rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・72L
●10・15モード燃費:9.4km/L
●タイヤサイズ:前245/40R19、後275/35R19
●車両価格:446万2500円(2009年当時)

[ アルバム : 6代目フェアレディZ(Z34) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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