もくじ
ー コルベット・フリークのお気に入り
ー ブリストル412 予想以上の迫力
ー 「大陸の端から端へのドライブに出掛けたい」
ー 2台のスペック比較/もうひとつの選択肢
コルベット・フリークのお気に入り
コルベットとブリストルに、どんな共通点があるのか? ここに登場する理由となったタルガトップを別にすれば、どちらも大きくて緩慢なアメリカンV8を積んでいる。
コルベットにV8は当然だが、今回の取材車はC3(第3世代)の最終型で、キャブレターに換えて「クロスファイア」と呼ぶスロットルボディインジェクションを採用したモデル。前年型から10psアップの200psを発し、ギアボックスにはシボレーの新しい700-R4型4速ATを組み合わせた。
オーナーのデレック・カーリーはこの82年型C3を20年前から所有している。ガレージには65年型スティングレイと、よりモダンだが扱いにくいC5コルベットも並んでいるのだとか。
なかでもC3はお行儀のよいクルマだそうで、「あまりコストをかけなくても、いつも快調ですよ。燃費は悪いけれど、それを気にするひとが買うクルマではないからね」とカーリーは告げる。
この頃のコルベットはすべて着脱式ルーフパネルを持つクーペだった。ブリストル412も同じだが、こちらにはふたつのリアシートがある。
ブリストル412 予想以上の迫力
ご想像いただきたい。412は巨大なクルマだ。写真では伝わらないほどの大柄である。
デイヴ・ベンスリーが3年前に手に入れたこの412は、22台だけ生産されたシリーズ1の15台目。彼も妻のピップもこれが大のお気に入りで、「他のクルマとは違って、ちょっと個性的だよ」とデイヴ。
モーターウェイを走っていると、周囲からじろじろ見られるという。
「驚くことではないけどね。ザガートが手掛けたスタイリングは、まるでヘルマン・ミュンスター(ホラー映画の主人公)から注文されたもののように見えるからね。412を可愛いと言うひとはいないでしょう。しかし存在感は偉大です」
ルーフパネルを取り外し、さらにリアウインドウを畳んで開放感を高められるのも412の特徴である。
ブリストルはコルベットより衆目を集めるだけでなく、よりパワフルなクライスラー製V8のおかげで、路上の速さでもコルベットを凌ぐ。
「大陸の端から端へのドライブに出掛けたい」
膨大なトルクがもたらす加速は、礼儀正しいホットロッドと呼ぶべきもの。
もしもベントレーが(1931年に)ロールス・ロイスに吸収合併されなかったら、70年代のベントレーはこうだったかもしれないと想像したくなる走りだ。
コーナーをハードに攻めるときだけは、ボディの重さを意識させられる。大波を受けたフェリーのようにロールするのだが、グリップレベルは驚くほど高い。
ドアのウインドウを下げていても、風の巻き込みに煩わされることがないのも美点だ。むしろ停車中のほうが風が気になるほどである。
コルベットは対照的だ。風の巻き込みに関して、今回の「すばらしきタルガの世界」企画に参加した10台のなかでこれが最悪。そのため全体の評価でもブービー賞に甘んじる結果になった。
空力学的な理由があるのだろうが、そこは推測の域を出ない。ほとんどロードスター並みの巻き込み方だ。おかげでカーリーは滅多にルーフパネルを取り外さないとのことだが、なんとも残念な話である。
完璧なドライビングポジション、快適にサポートしてくれるシート、そしてシボレーV8の魅力的なサウンドがあるのだから、まさにロングドライブに好適。力強く盛り上がったフロントフェンダーを眺めながら果てしなく走り続ける…。そんな夢を見たくなる。
ステアリングはさほど正確な部類ではないが、コルベットにそれは求めない。一方、ブレーキの素晴らしさは特筆ものだ。
しかし結局のところ、やはりブリストルでも同じ夢を見られるのだ。サウンド、快適さ、途方もなくパワフルだが扱いやすいエンジン。これらを知ると、大陸の端から端へのドライブに出掛けたくなる。
しかもブリストルなら、ルーフパネルを外してロングドライブを楽しめるのである。
2台のスペック比較
モデル名コルベットC3(1982)ブリストル412
生産台数 25407台 60台
シャシー グラスファイバー/スチール スチール
エンジン OHV8気筒5733cc OHV8気筒6556cc
エンジン配置 フロント縦置き フロント縦置き
駆動方式 後輪駆動 後輪駆動
最高出力 203ps/4200rpm 269ps/7000rpm
最大トルク 37.1kg-m/6000rpm 42.9kg-m/4800rpm
トランスミッション 4速オートマティック 3速オートマティック
乾燥重量 1454kg 1922kg
0-97km/h加速 7.9秒 7.4秒
最高速度 198km/h 224km/h
もうひとつの選択肢
トヨタ・スープラ
3代目よりずっと丸みを帯びたスタイリングの4代目スー プラは、3ℓツインターボによって荒々しいパフォーマンス を発揮する。最も安いコストで240km/hに到達できるの が、このクルマかもしれない。
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