米国市場進出記念の限定車はデビュー地にちなんでモントレーと命名
北米モントレーで毎夏開催されるクラシックカーの祭典「モントレー・カー・ウィーク」に、私たち日本人にほとんど知られていなかった特別なディアブロが姿を現しました。1998年、アメリカ市場進出を記念してわずか20台のみ製造されたランボルギーニ「ディアブロ SVモントレーエディション」です。鮮烈なモンテレー・ブルーのボディをまとう限定最終個体が、2025年8月12日~13日に開催されたブロードアロー・オークションズの「Monterey Jet Center 2025」に出品されました。車両のあらましと落札結果についてお伝えします。
ついに2.1億円超えの落札額が出た!80台限定のランボルギーニ「ディアブロGT」真価とは!?
限定20台のモントレーエディションの最終生産車
1995年、ランボルギーニはスーパーカー界に4輪駆動をいち早く採用した自信作「ディアブロVT」に対する純粋主義的エンスージアスト向けモデルとして、同じディアブロに「SV(Sport Veloce)」バリエーションを用意した。
VTモデルが先進的な「Viscous Traction(ヴィスカス・トラクション)」AWDシステムによる操縦安定性の向上に焦点を当てていたのに対し、軽量なSVは全出力を後輪に伝える直感的なドライビング体験を維持した。
リアミッドに搭載される5707ccのV12エンジンは、ディアブロVT比で18psアップに相当する510psのパワーを獲得した一方、車両重量は約50kgの軽量化に成功。熟練かつ勇敢なドライバーであれば、0-60mph(約97km/h)まで3.9秒で加速し、最高速度は191mph(約307km/h)に達した。
このワイルドな高性能モデルを区別するため、ランボルギーニは調整可能なリアウイング、ルーフに冷却用スクープを装備した再設計されたエンジンカバー、目立つ「SV」デカールを採用した。
ところが、アメリカのエンスージアストは、この妥協のない後輪駆動のパフォーマンスを体験するのを、1998年まで待たされなければならなかった。新しいバルブタイミング管理システムにより、SVの5.7L V12エンジンが米国当局の排気ガス規制に適合するようにホモロゲートされるのに時間が掛かったからである。
1998年モデルのアップデートにより530psを発揮することになったディアブロSVは、ルーカス社製ABSソフトウェアと直径355mmの大型フロント/リアブレーキを採用。前後ともに18インチホイールが組み合わされた。
そして1998年8月、SVプラットフォームの追加改良バージョンが米国市場に導入されるとともに、その記念モデルとして、北米デビューの場となった「モントレー・カー・ウィーク」にちなんで命名された「モントレーエディション」が、わずか20台限定で発売されることになった。
このアメリカ合衆国マーケット限定販売の特別仕様車は、リアホイール前方にある3つのサイドインテーク(ディアブロ「SE30」および「VTロードスター」と共通のデザイン)、クローム仕上げの「OZ Racing」社製アロイホイール、カラーマッチングされたリアウイング、そしてモントレー半島の海をイメージしたカスタムペイントカラーと、レザーインテリアの選択肢を持っているのが特徴だ。
オークションでは未落札!約8480万円で継続販売中
ブロードアロー・オークションズの「Monterey Jet Center 2025」オークションに出品された、注目すべきランボルギーニ・ディアブロ「SVモントレーエディション」は、限定20台中の20台目。つまり、同型の限定車としては最後に製造された個体で、1998年6月にサンタアガータ・ボロニェーゼ本社工場からラインオフしたことが「Lamborghini Polo Storico(ランボルギーニ・ポロストリコ)」によって証明されている。
ポロストリコが発行した車両オリジナル仕様証明書には、現在でも見られるとおりの「Monterey Blue(モンテレー・ブルー)」のボディカラーと、対照をなすシルバーの「SV」グラフィックで仕上げられたことが明記されており、ランボルギーニ本社の特別仕様車向け拡張カラーパレットにより実現した、ドラマチックな仕様が特徴となっている。
インテリアは、濃紺のカーペットと「Glacier(グレイシャー:氷河)」と名付けられたクリーム色の本革バケットシートで設えられ、鮮やかなイエローのパイピングとステッチがアクセントだ。左右シートのヘッドレストには「SVモントレーエディション」のロゴが刺繍されている。
このディアブロSVは1998年8月3日に、フロリダ州マイアミビーチの「Prestige Imports(プレステージ・インポーツ)」社に引き渡された。合衆国内の登録履歴を閲覧できるCARFAXレポートによると、この個体(シャーシNo.12027)は20年間にわたってフロリダ州内にて保管され、テーマパークの街として有名なオーランド市内の「Fields Motorcars(フィールズ・モーターカーズ)」社で定期的なメンテナンスを受けていた。2019年にはオレゴン州のコレクターの手に渡って数年間保管されたのち、最近になって今回のオークション委託者でもある現オーナーによって入手されたばかり、とのことだ。
現在、このSVモントレーエディションのエクステリア/インテリアは、現在の所有者から非常に丁寧に扱われてきたことを物語っている。2025年7月には、ペンシルベニア州ケネットスクエアの「Wistar Motors(ウィスター・モーターズ)」社によって、エンジンを取り外す大規模な整備に加えて、ペイントワークの改修が行われたばかりだ。
走行距離は2万2591kmながらも5万ドル以上のメンテを施す
総額5万ドル以上が投資されたというこの大規模整備では、Oリングのオイル漏れを新品のガスケットで修理したほか、シリンダーヘッドのオーバーホールやクラッチアセンブリの新調、パイロットおよびリリースベアリング、V12エンジンのリア側のメインシール、NGKスパークプラグの交換が行われた。
そのほかのメカニカルパートの作業として、4本のOZレーシングホイールを正しいハードウェアと適切なクリアランスでリビルドし、損傷していたフロントブレーキダクトを交換。4本のブレーキキャリパーをすべてリビルドするとともに、純正のブラック仕上げに戻した。
一方、外観およびインテリア面では、アフターマーケット品のHIDヘッドライトをOEMスタイルのLEDライトと配線に交換したほか、グレイシャーの内装を再整備したのち、ヘッドレストの刺繍も再張替えした。さらにはフロントフェンダーを再塗装して、輝かしいモンテレー・ブルーの仕上げを復元した。
公式オークションカタログ作成時点での走行距離は、2万2591kmと表示されている。
今回出品された、アメリカならではのレアなディアブロの販売について、ブロードアロー・オークションズ社では
「多くの愛好家がクラシック・ディアブロの究極の表現と考える投資価値のある個体を入手する絶好の機会です」
と熱烈にアピールする一方、55万ドル~65万ドル(邦貨換算約8140万円~9620万円)という、自信を感じさせるエスティメート(推定落札価格)を設定した。
ところが、8月13日に行われた競売では予測していたほどにビッド(入札)が伸びず、リザーブ(最低落札価格)には届くことなく、流札となってしまった。
現状ではブロードアロー・オークションズ社営業部門による継続販売とされているが、今回の流札を受けて、すぐに価格が明記された。57万5000ドル、つまり現在の為替レートで日本円に換算すれば約8480万円という正札での販売となっている。
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