東京~神戸往復約1150kmをプジョー308SW BlueHDiでドライブした。プジョーの2.0ℓ直4ディーゼルに新たにアイシン・エィ・ダブリュ製8速ATを組み合わせたモデルだ。長距離になればなるほど308ディーゼルの魅力が見えてきた。
取材で神戸へ行く。せっかくだからクルマで行こう、と思い立ったときに、まず考えたのは、「できたら無給油で行きたいな」「長距離走って疲れるクルマはいやだな」「もちろん燃費もいい方がいいな」ということだった。では、何に乗っていこうか。
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無給油、燃費を考えたら、これはもうディーゼルしかない。そうだ。プジョーのディーゼルモデルのトランスミッションが一部改良で6速ATから8速ATに変わったはず。ということで、選んだのがプジョー308SW GT BlueHDiだ。
EMP2というPSAの最新技術基盤の上に構築された308のロングホイールベースでワゴンボディとなっているのがSWだ。エンジンは、2.0ℓ直4ディーゼルターボだ。パワースペックは最高出力177ps、最大トルク400Nmと余裕たっぷりだ。なにせ車重は1510kg。もちろん軽くはないが、400Nmもあれば充分以上なのは間違いない。しかもトランスミッションは、アイシン・エィ・ダブリュ製6速ATから8速ATに変更されている。きっと燃費もいいはず。さらにさらに、プジョーだからシートもいいはず。と期待は膨らんだ。
乗る前にスペックを検分する。
あれ? 燃費が? そうなのだ。2.0ℓ直4ディーゼルのスペックは変わりないのに、6速ATモデルの方が燃費がいい。
●6速AT(車重1510kg)FF
20.1km/ℓ
●8速AT(車重1510kg)
JC08モード燃費18.2km/ℓ
なのだ。
ギヤ比も見てみよう。
●6速AT
4.458/2.508/1.555/1.142/0.851/0.671
最終減速比:2.953
●8速AT
5.518/3.183/2.050/1.492/1.234/1.000/0.800/0.673
最終減速比:2.953
となる。
高速巡航で燃費に影響する最ハイのギヤ比は最終減速比とのかけ算で
6速AT:0.671×2.953=1.9814
8速AT:0.673×2.953=1.987
と若干、8速の方がローギヤードだ。とはいっても、ほぼ同じ。JC08モード燃費が8速の方が悪いのは、8速のギヤ比、あるいは制御がJC08モードに合ってない(あるいは、合わせてない)だけ、なのだろうと推測した。
燃料タンクは52ℓだから、モード燃費通りに走っても
18.2×52=946.4km
で、今回の東京~神戸無給油往復はできそうもない。無念。
形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
型式:2.0ℓBlueHDi
ボア×ストローク:85.0×88.0mm
圧縮比:16.7
最高出力:177ps(133kW)/3750rpm
最大トルク:400Nm/2000rpm
とつらつら案ずるより走るが易し。ということで、3連休の初日、東京を出発した。予想通り、すぐに酷い渋滞に遭遇。8速ATはスムーズだが、時折1-2速の間でショックが発生した。これは少し気になった。
クルマを借り出す際に、プジョーシトロエンジャポンの担当から、「最近のPSAのクルマは、2000km超えると燃費がよくなってきます。3000km超えると脚も馴染んで乗り心地も俄然よくなります」と聞いた。が、借り出した308SWは、走行1300kmという新車。トランスミッションのショックもこれから馴染めば消える類いのものなのだろうか。
渋滞を超えて快適な高速ドライブが始まった。これまたちょっと気になったのが100km/h巡航時のギヤだ。8速だとメーター目視で約1300rpm。7速だと約1550rpm。なのだが、メーター100km/hだとなかなか8速に入らない。105km/hで8速に入る感じだ。80-100km/h手前では7速、あるいは6速で走ろうとする。トルクが充分あるのに最高段で走らないのは、なにやら燃費に悪影響がありそうだ……と思ってしまう。
ディーゼルの魅力は、トルキーで低回転で高速走行ができて、それゆえNVも気にならず、疲れにくいことだ(アイドリングや低速時はこの限りではない)。だからできればとっとと8速に入ってほしいのだが……。
しかし、400Nmの最大トルクの威力は絶大だ。どんな速度域、何速に入っていようと、ちょっとアクセルに載せた脚に力を込めれば即座に力強くクルマを押し出してくれる。高速道路での追い抜きの楽なこと。
そして、なにより素晴らしいのは、シートだ。一度ポジションを決めたら、お尻も背中もまったく動かすことがない。300万円台のクルマでこんなにいいシートはそうはない。2日で1150km走行したが、疲れは最小限。腰の痛みはまったくなかった。これは凄い。
シート表皮は、GTグレードだからテップレザーとアルカンターラを使う。アルカンターラは、お尻が滑らないし、とてもいい。グレードの低い本革より断然アルカンターラ(あるいは東レのウルトラスエード)に限る。下位グレードも表皮がファブリックになるだけで構造は変わらないというから、308のシートは素晴らしい。
さて、燃費はどうだったか?
帰路も亀山JCTあたりで酷い渋滞に巻き込まれた。それ以外は周囲の流れに乗って走ってみた。1147km走って軽油の給油量は62ℓ。燃費は18.5km/ℓだった。JC08モード燃費が18.2km/ℓだから、実燃費はモード燃費以上だったことになる。素晴らしい。
軽油を1ℓ130円とすると7.03円/kmである。これはやはり大きなメリットだ。同時に同工程を走ったガソリン車(ルノー・カジャー1.2ℓガソリンターボ)の燃費が14.2km/ℓだったから、これもハイオク1ℓ160円として計算すると11.3円/kmである。
7円と11円。倍とはいわないが、ディーゼルの方が走りもいいし、燃費もいい。プジョー308のようにシートまでよければ、もう文句の付けようがない。長距離ドライブなら、ディーゼル。そのなかでもプジョー308SWはお勧めできるモデルと言える。ちなみに、プリウスの実燃費が24km/ℓと考えると、レギュラーガソリン150円/ℓで計算して6.25円/km。7円と6.25円の違いなら、断然308SWディーゼルを選ぶ。8速もいいが、きっと6速ATでもまったく不満はないだろう。
もともと、フランス人が大きなラゲッジスペースに荷物を満載してバカンスのために南仏やスペインへロングドライブする(勝手なイメージです)ためのクルマが、308SWなのだと思う。東京~神戸の往復なんてお茶の子さいさいっていうところなのだろう。
プジョー308SW GT BlueHDi
全長×全幅×全高:4600×1465×1805mm
ホイールベース:2730mm
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム
エンジン
形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ 2.0ℓBlueHDi
ボア×ストローク:85.0×88.0mm
圧縮比:16.7
最高出力:177ps(133kW)/3750rpm
最大トルク:400Nm/2000rpm
燃料タンク:52ℓ
車両本体価格:383万8000円
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