インディカーシリーズの第5戦、第108回インディ500の決勝レースが5月26日(日本時間27日)に行なわれた。最終周まで繰り広げられた激戦を制したのは、チーム・ペンスキーのジョセフ・ニューガーデンだった。
2.5マイルのインディアナポリス・モータースピードウェイを200周して行なわれる伝統の一戦。しかし今年はプラクティスから雨に祟られ、決勝レースも雷雨により大幅にスケジュールが変更された。
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一時は観客に雷からの避難勧告も出されたが、雨雲が通り過ぎてファンがグランドスタンドに戻ると、懸命な路面乾燥作業を経て約5時間遅れでスタート進行が再開され、当初の予定より4時間ほど遅れた日本時間27日5時44分にグリーンフラッグが振られた。
なお、NASCARのシャーロック600とダブル参戦を目指していたカイル・ラーソン(アロー・マクラーレン/予選5番手)は、自身がポイントリーダーであるNASCARよりもインディ500を優先し、インディアナポリスに残った。
フロントロウはチーム・ペンスキーが独占。スコット・マクログリン、ウィル・パワー、ニューガーデンがトップ3だ。
レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングからスポット参戦した佐藤琢磨は、チーム最上位の10番手からスタートした。
雨上がりの青空の下、3周のパレードラップと1周のペースラップを経てレースの火蓋が切られると、まずはマクログリンが首位キープ。佐藤は12番手にポジションを落とした。
後方では複数台が絡むクラッシュが発生し、いきなりコーション。トム・ブロンクヴィスト(メイヤー・シャンク・レーシング)がスピンし、それを避けきれずマーカス・エリクソン(アンドレッティ・グローバル)が接触。またブロンクヴィストを避けようとしたピエトロ・フィッティパルディ(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)がチームメイトのグレアム・レイホールと当たり、フィッティパルディは挙動を乱してクラッシュしてしまった。
10周目にレースがリスタート。ここで佐藤は一時9番手まで浮上したが、その後また少しポジションを落とし12番手付近でラップを重ねた。
トップ3台のペンスキー勢は、最終プラクティスのカーブデーで沈みレースペースに不安を抱えていたものの、それを感じさせない速さを発揮。マクログリン先頭のまま順調に隊列を引っ張った。
23周目、キャサリン・レッグ(デイル・コイン・レーシング)が白煙を吹きながらピットインし、2度目のコーションが出された。最初のコーション中にマーカス・アームストロング(チップ・ガナッシ)が同様のトラブルでリタイアしており、ホンダエンジン勢に災難が続いた形となった。
ここでトップオフ(燃料注ぎ足し)した3台とステイアウトしたスティングレイ・ロブ(A.J.フォイト)以外のほとんどのマシンが最初のピットインを済ませ、27周目にリスタートが切られた。しかしリヌス・ルンドクヴィスト(チップ・ガナッシ)が挙動を乱してクラッシュし、すぐに3度目のコーションとなった。
33周目のリスタートでは、大外から戦略が異なるマシンを交わしたマクログリンがトップ奪還。佐藤はここではうまくポジションを上げることができず、18番手までポジションを落とした。
パワーが集団の中でズルズルとポジションを落とす一方、マクログリンは戦略の違うコナー・デイリー(ドレイヤー&レインボールド)を風除けに使いながら走行。デイリーがピットに入ると、またトップに戻って快走を続けた。
ちょうど2回目のルーティーン・ピット作業が始まろうかという56周目、フェリックス・ローゼンクヴィスト(メイヤー・シャンク)にエンジントラブル発生。ホンダエンジン勢で3台目のトラブルリタイアとなり、4度目のコーションが出された。
65周目のリスタートで最内をついたマクログリンは4番手から一気に首位浮上。その翌周にはまた戦略の違うロブを前に出して風除けに使い、燃料も節約するという盤石の戦いぶりだ。佐藤はここで2台を抜いて14番手とした。
しばらくレースに動きのない状態が続いたものの、86周目に2番手を走っていたコルトン・ハータ(アンドレッティ・グローバル)が単独スピンでクラッシュし、5度目のコーションが出された。
3度目のピット作業と92周目のリスタートを経て、実質首位に立ったのはニューガーデン。マクログリンはサンティノ・フェルッチ(A.J.フォイト)の後塵を拝する3番手となった。
波乱の展開は続き、106周目に6度目のコーションが出された。ライアン・ハンター-レイ(ドレイヤー&レインボールド)がスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)と接触して360度スピン。ハンター-レイは何とかクラッシュは免れたもののフロントウイングと足回りにダメージを負い、ピットでレースを終えた。
残り2回のピットストップで走りきれるというタイミングのコーションだったことから、ここでピットインするかどうかは判断が分かれた。トップ3はステイアウトを選び、佐藤含め10台がここでピットインを選んだ。しかし佐藤にはリスタート違反のペナルティが科され、リードラップ最後尾まで下げられてしまった。
114周目のリスタートで再びマクログリンが首位を取り戻すが、後方でマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ)が単独クラッシュ。このレース実に7度目のコーションとなった。
119周目のリスタートでアレクサンダー・ロッシ(アロー・マクラーレン)が2番手に浮上。ペンスキーの2台と時折ポジションを入れ替えながら、4度目のピットストップに向けてひた走った。
130周頃から、コーション中にピットに入らなかったマシンのピット作業が始まっていき、首位はディクソンに。同じ戦略の佐藤も一時3番手までポジションを上げることになった。
ディクソンや佐藤は141周を終えてピットイン。1回のピットインを行なうと30周ほど走れる計算となるため、彼らは残り1回のピットストップでフィニッシュまで走りきれるという状況だ。一方でペンスキー勢などは、コーションが出なければフィニッシュまで2回のピットストップ、もしくは厳しい燃料節約を求められるコンディションとなった。
しかし146周目にパワーがクラッシュし、8度目のコーションが出された。これで燃料を節約できる状況が生まれたため、ペンスキー勢など”あと2ストップ”必須だったマシンにとっては救いのコーションとなった。
ディクソン首位、佐藤は10番手で156周目のリスタート。ここでロッシが首位に躍り出て、ディクソンはパトリシオ・オワード(アロー・マクラーレン)にも抜かれ3番手に。佐藤は12番手に後退した。マクラーレンのロッシとオワードはポジションを入れ替えながらお互いを引っ張るチームプレイ。最後のピット作業に向けて燃料を節約した。
169周を終えたところでロッシがピットイン。相棒を失ったオワードをすぐさまディクソンが抜き、リードを広げにかかった。ペンスキー勢は172周目にピットへ。佐藤も同じタイミング、ディクソンは翌周にピットへ入り、最終スティントはほぼ同条件でのガチンコ勝負となった。
ディクソンはニューガーデンとロッシの前でコースに復帰。ディクソンとニューガーデンがポジションを交互に入れ替えながら周回したが、バックマーカーをうまく使ったニューガーデンがリードを拡大。逆にバックマーカーに引っかかったディクソンはスピードを落とし、ロッシにオーバーテイクを許した。
残り10周を切り、ロッシとニューガーデンがポジションを入れ替えながら、フィニッシュまでの読み合いを繰り広げる。そこにオワードも加わり、誰が勝つか全く分からない状態のまま、レースは最終盤を迎えた。
2番手オワードはあえてニューガーデンを抜かず、ニューガーデンがトップでファイナルラップに突入。オワードが狙い通りターン1でオーバーテイクしてトップに立つが、ニューガーデンはぴったりとオワードを追い、バックスストレートで2台が横並びに。ターン3で見事な大外刈りを決めたニューガーデンが、そのままトップでチェッカーを受けた。
昨年インディ500を制したニューガーデンは、歓喜の連覇を成し遂げた。インディ500の連覇は、エリオ・カストロネベス(2001-2002年)以来だ。
全車がラストピットを終えた段階で、佐藤は13番手。しかしそこから前をかき分けていけるだけの速さはマシンになく、14位でフィニッシュとなった。
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