VtoHは災害のときなどに役立つ
電気自動車(EV)を買うとき、よい機会なのでVtoH(ブイ・トゥ・エイチ)も同時に導入したいという人もいるだろう。
EVだったら災害時の車中泊で家電も使い放題? エアコン使いっぱなしでどれくらいバッテリーは持つの? 実用性や注意点について解説
たとえば、日産サクラ/三菱eKクロスEVのような軽自動車でも、車載のリチウムイオンバッテリーは20kWhの容量がある。一般的な家庭で日々使う電力は、およそ10kWhなので、2日分の電力を車載していることになる。
ちなみに、太陽光発電を自宅の屋根に設置し、そのためのバッテリーを併設する際の容量は、およそ10kWhなので、その2倍の電力をもつともいえる。
さらに、登録車の日産リーフなら、標準車種で40kWhのリチウムイオンバッテリーを車載するので、家庭で使う4日分の電力量に相当する。
大地震のような災害でなくても、大型台風の上陸や、線状降水帯をともなう豪雨などが身近になり、それらによる停電もまれなことではなくなりつつある。その際、EVを所有し、VtoHを設置していれば、ただ電灯をともせるだけでなく、スマートフォンの充電はもとより、冷蔵庫の冷凍食品を無駄にすることなく、またシャワーなどの湯沸かし器でも電気でスイッチが入る仕組みであったりするので、家で電気が使えることの有り難みは計り知れない。
では、VtoHの導入は、どれくらいの費用がかかるのか?
設置台数で高い実績を持つ日本のニチコンを例にすると、家庭用のパワー・ステーションは、128万円である。これまで、その機器は家庭用空調の室外機ほどの大きさがあったが、現在では大幅に小型化され、取り付け場所をあまり選ばなくなっている。また、自宅に設置した太陽光発電との連携もできるようになっている。
VtoH機器の補助金を使うとより安価に設置可能
費用は128万円といったが、これは機器の価格であり、ほかに設置のための工事費用が加わる。ただし、これは屋内の分電盤から駐車場所までの距離や配線の仕方などによって工事内容に差が出るので、一概には金額を具体的に示すことはできない。標準的な場合で、20万~30万円がひとつの目安ではないか。標準的でない場合とは、分電盤が建物の上層階にあるとか、分電盤とVtoH機器までの距離が遠いなどで、そうした場合は追加料金がかかる可能性がある。
そのうえで、EVの購入にあわせてVtoHを設置する際は、車両と別に、VtoH機器への補助金制度がある。
国の補助金は、上限が45万円だ。これは、全国を対象とする。加えて、東京都や埼玉県は、自治体での補助制度がある。
東京都はとくに優遇政策となっており、VtoH機器のみの場合は、工事費を含めて2分の1(ただし上限が50万円)、これに、EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)の導入があわさると全額(ただし上限が100万円)となっている。
したがって、ニチコンの機器128万円に、工事代金が20万円と仮定すると、併せて148万円で、国から45万円、東京都から100万円の枠をそれぞれ一杯まで活用すれば、3万円が自己資金になる。
埼玉県は、EVまたはPHEVがある、または太陽光発電を設置している場合に、一律15万円の補助金額だ。
上記はいずれも、年度予算の範囲で施行される。期限は、東京都が来年3月31日まで、埼玉県は今年12月16日までだ。期間内でも予算を使い切れば終わるのは、EV購入と同じだ。そして、年度が改まれば、また改めての施策になるだろう。
VtoHの利点は、もちろん停電の際の電力供給にあるが、同時に、VtoHの充電コネクターは急速充電用を用いるため、コネクターが大がかりになり、やや重くはなるものの、標準的な200Vのコンセントから普通充電用の充電ケーブルをクルマから取り出し、充電するより手間を省ける。日々の充電操作は手軽になるだろう。
ちなみに、VtoHに対応しているのは、日本車のほかヒョンデ、BYD、メルセデス・ベンツ、BMWであり、テスラやほかの輸入車は対応していない。VtoHを希望するのであれば、EVの車種選びもある程度限定的にならざるを得ない。
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