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MG、中国「上海汽車」の救済で見えてきた今後 2019年にはEVも

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MG、中国「上海汽車」の救済で見えてきた今後 2019年にはEVも

もくじ

ー MG 中国の救済 そして今
ー 見据える、新たな方向性とは
ー SAIC経営陣 「19年にはEVを」
ー 3つの主要エリアに分けた「革新」
ー 番外編1 ロングブリッジの未来
ー 番外編2 MGのモデル・プラン

フォード新CEO 「変革」目指し、駆け抜けた5カ月と描く未来とは インタビュー

MG 中国の救済 そして今

中国メーカーによって死の淵から助けだされたあと、MGはゆっくりとだが着実に回復への道筋を辿ってきた。そしていま、このメーカーの変革に向けた新たな一手が打たれようとしている。

今年はじめ、上海汽車はMGローバーの残骸から生みだされた100万台目のクルマを生産した。上海汽車所有のローウェ社とMGの両ブランドで昨年32万台を販売しており、今年はわずか4%しか成長しない中国市場において78%の販売増を見込んでいる。

この結果は成功以外の何物でもなく、英国の貢献も著しいと認めない訳にはいかないだろう。上海汽車のバーミンガムにあるデザイン及びエンジニアリング・センターから、このふたつのブランドに対して多くの成果がもたらされているのだ。

一方で、MGモーターの英国での状況は芳しいとは言えない。

バーミンガムのロングブリッジにあったMGローバーの工場で、スポーツ・モデルであるMG TFの生産が再開されてから10年が経った。このMGの復活は、同社の資産を買い取った中国企業である南京汽車によって可能となった一方で、同じ中国企業である上海汽車(SAIC)は、いくつかのMGローバーのモデルに関する知的財産権を買い取っていた。その後しばらくして中国政府はこの2社を合併させた。

それ以来、われわれはMG6やMG3といったモデルを見て見ぬふりをし、平凡なSUVモデルであるMG GSにも関心を示す事は無かった。

MGはいま新たなSUVモデルであるZSを発売しようとしているが、このクルマはこれまでのMGモーター製品のなかで最も印象的な1台である。

英国での販売台数は2015年には3152台だったものが、2016年には4192台へと増加しており、今年はこれまでの10カ月で3515台を売り上げ、市場が落ち込むなか0.16%のシェアを獲得している。

つまり、数字を見れば正しい方向へ進んでいると言えるが、それでもMGモーターの販売は韓国のサンヨンを上回っているだけに過ぎない。英国市場では依然よく知られたブランドであることを考えれば決して満足できる状況ではなく、ロングブリッジの巨大な自動車組立工場での小規模生産を正当化するには十分な数字であるとは言えない。

だからこそ、新たな方向性が打ちだされたのは喜ばしいことだ。

見据える、新たな方向性とは

新たな方向性といっても完全な計画の変更ではないが、適切な修正であり、この中にスポーツ・モデルが含まれていることは、SAIC英国会社社長のデビッド・リンドレーと英国デザイン責任者のカール・ゴーサム、そしてセールス&マーケティング責任者のマシュー・シェインとの対話のなかで確認することができた。

この新たな方向性は新しいZSのデザインのなかに見つける事ができる。新しいグリル・デザインを与えられたこのより格好良くなったクルマは、MGの新たなフロントマスクのデザインを示している。

「ZSはわれわれの新たなデザイン言語であるエモーショナル・ダイナミズムが採用された第1弾となります。これは顧客との繋がりに関して、よりエモーショナルであろうとするMGの変革プランの一環なのです。世界中で多くの人々とエモーショナルな繋がりを持つことができたと感じています」

これは決して過去のデザイン・テーマの焼き直しを意味するのではない。「われわれは回顧主義やヘリテージ・ブランドになろうというのではないのです。それは間違った方向でしょう」と言うのはグラハムである。

「しかし、もちろんMGには偉大なブランド価値がありますから、それを活かさない手はありません。ですからデザイン言語はよりエモーショナルであるべきではあっても、あまり挑戦的なものではいけないのです」

「ですから、いまわれわれは少しその方向性を変えながらデザインの質を上げようとしているところです。中国では、顧客は間違いなく高い品質を求めており、その要求レベルはどんどん上がっていますから」

彼らはEVにも注力しており、その理由についてゴーサムは次のように語る。

「中国は巨額の補助金をテコにEV普及に向け非常に積極的な対応を見せています。ご存知かも知れませんが、いま中国では自動車購入に必要な生涯有効のナンバープレートを取得するのに8000ポンド(118万円)程度が必要な一方で、EVの場合には無料なのです。つまり中国におけるEV化というのは単なる掛け声ではなく、実際その実現に向けて猛烈に政策を進めているところなんです」

MGも同様である。

SAIC経営陣 「19年にはEVを」

4月の上海モータショーで公開されたMGのEモーション・クーペは「コンセプト・モデル」だとゴーサムは言うが、一方で「ある意図を持って製作されたモデルです。時期についてはっきりと申し上げることはできませんが、製品化に向けた具体的な検討をすることになるでしょう」とも語っている。

他のSAIC経営陣によれば、Eモーションは2019年の発売が計画されているとのことだ。SAICは3秒台の0-100km/h加速と483kmの航続距離を喧伝している。このクルマは従来型ガソリン・エンジン・モデルとほぼ同じプロポーションを持つ100%のEVモデルである。

「少しばかりの英国風味に加え、そのプロポーションにはより明確な英国の高級感が感じられることになります。つまり高級感と人々がハッとするような存在感です。スポーツカーではありませんが、2+2のEVスポーツなのです」とゴーサムは言う。

英国風味には販売上の理由もある。「世界中で英国風にはプレミアムな価値があるんです」とゴーサムは語る。「中国の顧客に対しては特にです。ですからMGを英国ブランドと位置付けるという事は、われわれが求めるプレミアムな製品体験という価値をも提供することにもなるんです」

このことはロングブリッジにあるSAIC英国のテクニカル・センターが行っている方向性の変更にも合致する。リンドレーはここの責任者である。

彼はMGローバーとローバー・グループを買い取る以前からSAIC英国の経営に関わっており、大きな変化をその目で見てきた人物だ。そして、今はEVへの急激なシフトとSAICでの開発スピードの早さというそれ以上の変化を目撃している。

この10年に及ぶ関係のなかで、SAICは上海で総勢4000人ものエンジニアリングとデザイン部隊を集め、今ではロングブリッジも完全に一体化されたサテライトとして重要な共同ミッションに従事しているとリンドレーは語る。

「現在注力しているのは商品開発プロセスのごく初期段階です」と彼は切りだす。

3つの主要エリアに分けた「革新」

「もちろんこれだけではありませんが、今はイノベーションと先進的技術、車体のアーキテクチャとデザインに集中して取り組んでいます。これらは3つの主要なエリアに分ける事ができますが、1番目はデザインです。来年のわれわれのチームの時間とエネルギーはMGのデザイン言語の方向性を決めるために、世界中の顧客の嗜好を理解するために費やされることになります」

「そして2番目は車両エンジニアリングです。この点に関して重要な仕事はクルマの基本設計を決める事です。この考え方はフォルクスワーゲンのやり方に非常に似ています(SAICは中国最大のフォルクスワーゲンとの合弁企業である)。このなかで異なる市場とクラスへ横断的に展開可能なフレキシビリティを達成する方法を見つけだすのです。3番目は内燃機関の設計と研究です」

SAICはZSにGM製3気筒ターボを採用しているが、これは「今回だけ」の措置であり、現在モジュラー・エンジンの開発を行っているところだとリンドレーは言う。

英国テクニカル・センターでは摩擦軽減技術とエンジン始動時の熱効率、そして電気式ターボチャージャーに注力しているとのことだ。

そして上海にあるセンターとも協力しているが、これは決して英国のチームが外に出ないということや、内燃機関の可能性を追求しているということを意味するわけではないとも言う。英国チームの役割は可能性を探るとともに、その成果を上海と共有し、中国における研究プログラムとの整合性を確保することにあるのだ。

これまでの10年間のSAICの努力はローウェを中国市場で成功した収益性の高いブランドとして確立することに集中していたとリンドレーは強調する。そしてローウェはいまやその目標を達成した。

「今われわれの計画は革新的な製品を作りだす世界的に知られたブランドになることなんです」と彼は言う。「世界的な販売状況をより重視しています。さらには自国市場に近いところでの成長と、MGを成功したブランドにするための目に見える具体的な努力を行っていきます」

これら具体的な取り組みの中でも、最も注目すべきは2019年に発売されるMG Eモーション・クーペだろう。本番はこれからだ。

番外編1 ロングブリッジの未来

ロングブリッジでは最後の車両生産が終了し、現在SAICは、10年以上前に当時苦境にあったMGからこの土地を購入した開発業者であるセント・モドウェン社に対して、彼らには必要のない設備の受け渡しを行っているところだ。

この一帯には有名な自動車組立工場や、ミニを生みだしたクレムリンとして知られたオフィス・ブロックが含まれることになるだろう。全ては再開発されるが、既にロングブリッジ地区は過去数十年に比べ、活気あふれる華やかな場所へと変わっている。

セールス&マーケティング責任者のマシュー・シェインは「5年後に英国での車両生産がどうなるかなんて誰にもわからない」と言う。

シェインの計画ではZSの登場で英国での販売は2018年に2倍になるということだが、これは眠れる巨人であるSAICが台頭する最初の兆しとなるだろう。

もし彼の計画が上手くいけば、いずれ真っ新なMGの工場を目にすることになるかも知れない。

番外編2 MGのモデル・プラン

2017年:MG ZS 小型SUV

2018年:新型MG &セダン 1.5ℓ4気筒および1.0ℓターボ付き3気筒ガソリン・エンジン
2018年:MG ZS EVバージョン
2019年:MG Eモーション 2+2 EVクーペ

2019年:Aアーキテクチャを用いた新型GS SUV
2019年:MG3 フル・フェイスリフト

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