角田裕毅(RB)を取り巻く環境がF1第16戦イタリアGPから変わった。F1にデビューしたときから角田のレースエンジニアを務め、ここまで二人三脚でレースを戦ってきたイタリア人のマティア・スピニがその職を離れた。シーズン途中でのレースエンジニアの交代は珍しいが、これには角田の希望が関係していた。
アルファタウリからRBに体制が変更された2024年。フランツ・トストからローラン・メキースにチーム代表も交代した。新しく代表になったメキースはチームのエンジニアリング体制を見直し、昨年までチーフレースエンジニアだったジョナサン・エドルズをリライアビリティマネージャーに配置転換させ、スピニをチーフレースエンジニアに就かせる予定だった。
角田裕毅16番手「困難な初日。理解すべきことがたくさんある」チームはセットアップのミスを謝罪:RB/F1第16戦
スピニに代わって、角田のレースエンジニアに抜擢されたのは、イタリア人の“アーニー”ことエルネスト・デジデリオだった。デジデリオは2012年にピサ大学の自動車工学を修了し、車両ダイナミクス・シミュレーション・エンジニアとして2013年にダラーラに入社。インディカー・プロジェクトに携わった後、2016年にパフォーマンスエンジニアとしてトヨタに移籍し、LMP1プロジェクトに加わった。
デジデリオがF1の世界で仕事を開始したのは、2018年。エアロパフォーマンス・エンジニアとしてハースに入り、ロマン・グロージャンやピエトロ・フィッティパルディ、ニキータ・マゼピンらのパフォーマンス・エンジニアを務めた。その後、2022年にレースエンジニアとしてウイリアムズに移籍。アレクサンダー・アルボンやニコラス・ラティフィ、ローガン・サージェントと仕事をし、レースエンジニアとしての経験を積んだデジデリオは、2023年5月にレースエンジニアを目指して、アルファタウリに移籍した。
レースエンジニアとしての経験は申し分ないが、ドライバーとレースエンジニアのコミニケーションは一朝一夕に成立するものではない。特にマシンのフィーリングは非常に繊細で、表現の仕方もドライバーによってクセがある。
「たとえば、クルマのフィーリングを表すときに、ステップ(度合い)を数字で伝えるんですが、それがどの程度なのかはマティアはわかっているんですが、ほかの人が僕の表現の仕方でフィーリングを理解するには少し時間が必要でした。シーズンの頭からいきなり新しいエンジニアと組むのはリスキーなので、僕から『前半戦はマティアとやらせてほしい』とリクエストしていました」
角田の要求をチームも理解し、角田のレースエンジニアは昨年までと同様、スピニでシーズンを開幕させた。さらにデジデリオをスピニと一緒に仕事させることで、角田とデジデリオの関係を密にしていき、夏休み以降に交代させる予定だった。今シーズンの金曜日のフリー走行ではスピニに代わって何度かレースエンジニアを務め、問題がないことを確認し、夏休み明けから交代する予定だった。
ところが、夏休み前の最後の1戦となった第14戦ベルギーGPでフロアに問題を抱えて失速したことで、チームは夏休み明け初戦となったオランダGPでもスピニを続投させ、原因をしっかりと究明することを優先。そして、今回のイタリアGPから交代となった。
デジデリオについて角田はこう語る。
「エルネストはモチベーションが高く、これまでに何回かセッションを共にしたことがあるのですが、すごくいい人ですし、それに才能もあるエンジニアなので、一緒に働くのを楽しみにしています」
デジデリオが正式に角田のレースエンジニアに就いた初めてのグランプリとなったイタリアGP。角田は16番手に終わった。しかし、デジデリオとの作業はスムーズだった。
「何回かミスもありましたが、初日としてはスムーズだったと思います。僕も含めて、僕と仕事しているほかのスタッフたちと一緒に彼をサポートして、できるだけエネネストに自信をつけさせられるようにしたいです。僕もフィードバックだったり、コメントなどで彼をサポートして、予選までにいいクルマを作り上げたいです」
4年間の成長を感じさせたイタリアGP初日の角田だった。
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