自動車は走れば何でもいい。そう考える人は多いし、間違いでもない。しかし、自動車の個性が薄くなり、EVやカーシェアリングが普及する「今」だからこそ、クルマに「遊び」や「冒険」を求めたい。伊達軍曹が贈る攻めの自動車選び。第12回はシトロエン2CVの影に隠れがちなルノー4を届けしよう。
2CVを徹底研究したうえで開発された対抗馬
郊外や地方都市に住まうのであれば話は別だ。しかし東京あるいはそれに準ずる都市に住まう者にとって、「実用」を主たる目的にクルマを所有する意味はさほどない。
そんな状況下で「それでもあえて自家用車を所有する」というのであれば、何らかのアート作品を購入するのに近いスピリットで臨むべきだろう。
すなわち明確な実益だけをそこに求めるのではなく、「己の精神に何らかの良き影響を与える」という薄ぼんやりとした、しかし大変重要な便益こそを主眼に、都会人の自家用車選びはなされるべきなのだ。
そう考えた場合におすすめしたい選択肢のひとつが、1961年から1992年までの長きにわたって製造販売されたフランスの小型実用ハッチバック、ルノー4(キャトル)だ。
「ルノー4」と文字で書かれても、いわゆるカーマニア以外はそのビジュアルがパッとは浮かばないかもしれない。だが写真を見れば、一部の人はこう言うだろう。
「あぁアレか! フランスの農民のために作られた、『こうもり傘に車輪を4つ付けた感じのシンプルな構造で、座席に置いたカゴに鶏卵を入れたまま農道を走っても割れない』ってのが開発コンセプトだったとかいう……」
や、それはルノー4ではなくシトロエン2CVである。
だが1961年のルノー4の登場には、そのシトロエン2CVがいささか関わってはいる。
機械化が著しく遅れていた戦前のフランス農民の作業風景を見た当時のシトロエン副社長が、「農民たちが買って使える廉価で頑丈なクルマを作れば、新たな市場を開拓できるかも! 」とひらめいて作らせたのがシトロエン2CVという傑作小型車で、それは農民の枠を超え、都市部に住まう人々をも魅了。結果としてシトロエン2CVは1950年代のフランスを代表する人気モデルになった。
そんなシトロエン2CVを徹底研究したうえで開発され、対抗馬として1961年に登場したのがルノー4なのだ。
フランス人の嗜好に合ったパッケージング
キャトル以前のルノー社の主力モデルは「4CV」というもので、4CVは古典的なRRレイアウト(車体の後方にエンジンを置き、後輪を駆動させる方式)を採用していた。しかしキャトルではシトロエン2CV同様の(当時としては)先進的なFFレイアウト(車体の前方にエンジンを置き、前輪を駆動させる方式。現代のクルマのほとんどはこの方式)を採用。
そしてシトロエン2CVより積載量を増やす目的でルーフをテール部分まで水平に伸ばし、ボディ後端には跳ね上げ式の扉を設けた。これは現代で言う「5ドアハッチバック」というやつで、2020年の今となっては珍しくもなんともないボディ形状だが、1962年においては新発明だった。
さらに車室のフロアも極力フラットにすることで、「大人5人とたくさんの荷物が収容できる」という、バカンス大好きなフランス人の嗜好と行動様式に合うパッケージに。そこに、シトロエン2CVより断然強力な747ccのエンジン(これでも初期型2CVの375ccと比べれば“強力”なんですよ……)を組み合わせたことで、ルノー4はまたたく間に大ヒット作となった。
生産台数はデビューから6年で早くも100万台を突破し、エンジン排気量は747ccから845cc、1108ccへと順次拡大。1986年にフランス本国での生産が終了してからは製造拠点をスペインに移し、結果として累計生産台数は813万5424台にまで達した。
……というのがルノー4(キャトル)の大まかなヒストリーなわけだが、「そんなキャトルに今、乗ってみましょうよ! だって楽しいですから! 」というのが今回の提案だ。
荷物が積めて、クーラーもそれなりに利く
では、その乗り味はいかなるものなのか?
結論から言うとルノー4の走行フィールとは、超軽量&超シンプルゆえに超快感だったシトロエン2CVの走りの各部を、それぞれちょっとずつ重くしたというか現代的にしたニュアンスである。
1.2トンはゆうに超える場合が多い現代のクルマの衝突安全ボディと違い、基本的にはペラペラな金属でしかないシトロエン2CVやルノー4のボディは(なにせキャトルの車重はわずか700kgぐらいだ)、まあ不安といえば不安なのだが、その分だけ走りにはかなりの軽快感がある。まるで縁側で、Tシャツ+短パン姿で夏の夜風に吹かれているような、そんな心地よさがあるのだ。
そんな心地よさはシトロエン2CVにもルノー4にも共通しているのだが、キャトルは後発なだけに、つまり2CVよりも後年に「2CV以上に快適で便利なクルマ」を目指して作られたがために、各部の作りは(2CVと比べれば)いちいち微妙に重い。
その部分が、現代を生きる世界各地のカーマニアからシトロエン2CVは大絶賛されるが、ルノー4は「そこまでではない。割とつまらない」とも言われる要因だ。
つまり1960年代のパリ市民は「乗り味がどうとかこうとか以前に、クルマは便利なほうがいいじゃん? 」と考えていたはずだが、2020年代のカーマニアは、便利さよりも純粋さこそを好ましく思う──ということである。
それはまぁ実際そのとおりで、筆者もいちカーマニアとしてはシトロエン2CVのほうに高得点を入れたいと感じるし、実際に2CVを買って乗り回していた時期もある。
だがキャトルが「割とつまらない」というのは、あくまでカーマニアの言い分だ。
カーマニアではなく全人類的な視点から物事を見るのであれば、名車シトロエン2CVとルノー4は「だいたい同じようなもの」であり、むしろ「荷物が積めて、クーラーもそれなりに利くルノー4のほうが好ましい」とすら言えるかもしれない。というか、言える。なぜならば、2CVにはクーラーなどという文明の利器はいっさい付いていないからだ。真夏の日中はとてもじゃないが乗れたものではない(経験者談)。
そんなこんなのルノー4に乗ることで「プリミティブな乗り物を操縦する歓び」を得たい場合の当初予算は、おおむね70万から100万円といったところ。一般的な中古車販売店ではまず売ってないが、「蛇の道は蛇」的なお店に行けば、まだまだ普通に流通している。メンテナンスも、そういった蛇の道系に依頼すれば特に大きな問題はない。
もちろん、それでも乗っているうちにあちこちのちょっとした不具合は発生するだろう。なにせ最終年式でも28年前のクルマだ。トヨタの新車のような感じで乗れるとはゆめゆめ思わないほうがいい。
でもまぁ、それでもいいじゃないか。
ちょっと古いクルマというのは、現代のややこしいクルマと違って「直そうと思えば直る」のだから。そして、どうせたまにしか乗らないのだから。
文・伊達軍曹 編集・iconic
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みんなのコメント
『あぁ、アレね!PAOの元ネタね』
こういうデザイン好きでも普通の人はPAO買った方が無難だね。
ATは乗った事無いから知らないけどMTは結構楽しかったよ!
クラシックカーなら他にはGX71、AE86なども魅力的。