ドライバー3月号(2020年1月20日発売号)からスタートした新連載「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国を最新SUVで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。第8回は、その美しさに魅せられて日本中を追いかけ、人生が狂ってしまったマニアも多くいるという『アカショウビン』。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材ウラ話をいろいろと紹介します。
うまく撮れなくて来シーズンも通うこと確定!?野鳥撮影にのめり込むきっかけの鳥がカワセミだった人は多い。
清流にしかいない鳥で、だいぶ数が減っていた。しかし最近、東京あたりでもそこかしこで姿を見ることができるようになった。
ブルーに輝くきれいな鳥で、水に飛び込んだりホバリングしたりとアクションが多く、撮影していて楽しいのだ。
ところが、小さくてスピードが速いので被写体としての難易度は結構高い。
自然の中の動物園で激写!「三好秀昌のニッポン探訪・取材ウラ話 第7回~イノシシ」
そしておもしろがって撮影していくうちに、野鳥撮影にのめり込んでいき、どこかで赤いカワセミの話を耳にする!
「赤いカワセミ!!」
そんな鳥がいるなら一度は見てみたい⇒出会う⇒希少価値があるからより一層美しく見える(笑)⇒うまく撮影できないから通う⇒で、ハマる。
そんな話をドライバー誌でも書いたが、アカショウビンは渡り鳥で梅雨の時期に日本に来て繁殖する。だから、雨がちの天候不順、さらに去来するのは山深い原生林の中で暗い、という悪条件が重なり、撮影の難易度はカワセミの比ではない。
彼らが好むのは、手つかずの自然が残る原生林のような場所。木が茂り薄暗い。
しかし太陽が差し込み、ブナの原生林が美しく輝き始めるときがある。
絶好のシャッタータイミングである。
だが、彼らは飛ばない。
赤い体は直射日光を浴びると目立ちすぎて、捕食者に狙われやすいことを知っているのだ。
だから飛ばない。
緑が輝き始めて「よし! 今だ」という期待値が高まったときに飛ばないのは、裏切られ感が強くこたえる。
そして雲が動き、日が陰り、こっちがいいかげん、緊張の糸が切れているころに飛び出されるのでシャッタータイミングを逃す、という悪循環。
一度ぐらいアカショウビンにビカッと光が直撃した写真を撮ってみたいものだ。
なんて思ってる時点で、また来シーズン、行きたくなっちゃうんだろーなー(笑)。
性悪です、この鳥は!!
「撮影裏話&テクニック」「置きピン」で巣穴に飛び込む直前を狙う撮影条件が悪いことはよくわかっていたので、カメラとレンズの組み合わせはソニーα9IIにFE 600mm F4 GMという最強コンビで乗り込んだ。
正面から近づいてくるならAFで狙うのもいいが、アカショウビンのように小さな鳥を遠くから捉えようとしても最初の食い付きでなかなか捕捉しない。
運よく近い距離で捕捉しても、相手がまっすぐ飛ばないので600mmのような狭い画角のなかではすぐにはみ出してしまう。これをカメラマンが捕捉し続けるのはまず無理だ。
そこで考えたのが、アカショウビンの飛んでくるライン上にアングルを合わせ、横から巣穴に飛び込むところを撮影することだ。
しかし、画面を一瞬横切る被写体にはどんなに優れたカメラでもAFで捕捉することはできない。
MF(マニュアルフォーカス)、いわゆる「置きピン」と呼ばれる手法で写したい場所にあらかじめピントを合わせておき、そこにアカショウビンが来たらシャッターを切る方法でいくことにした。
うまくいく一番のコツは、いかにアカショウビンの飛翔ラインとカメラの位置が平行に近くなるかだ。そうすれば、巣穴にピントを合わせておけば飛び込む前の数カットもばっちりピンが合うからだ。
ところが600mmという超望遠レンズを開放で使うと、とにかくピントが浅く、本当にピンポイントでの撮影になる。
[撮影データ]機材:SONY α9II
レンズ:FE 600mm F4 GM OSS
撮影モード:マニュアル
シャッタースピード:1/1600秒
絞り:F4.0
ISO:6400
露出補正:-2.3EV(あとから-1.0EVぐらいまで補正済み)
それこそ巣の穴の手前の縁、真ん中、向こうの縁、どこに合わせるかという数cmのピント合わせに集中しないとならない。
おまけに、アカショウビンのオスとメスで飛んでくるラインが微妙に違う。
1回撮影するごとにチェックして、わずかにピント位置を調整してベストのフォーカスを探すしかない。
アカショウビンに詳しい人なら枝に止まったときに双眼鏡でオスかメスか確認し、微妙にフォーカス位置を調整すれば歩留まりは上がるだろうが、オイラにはそんな知識はないのでまめにフォーカス位置を調整するしかなかった。
現地で撮影したアカショウビンの撮影ガイドみたいな動画を作ってみたので、野鳥撮影に興味がある人は下のアドレスにアクセスしてみてください。
α9IIというカメラはα9の改良版、いわゆるエボリューションモデルだ。露出補正ボタンにロックが付き、いくつかのボタンの大きさなども改善されている。
また、機械式シャッターでの連写性能が秒間10コマまで上がったので、ストロボ撮影や特別なシチュエーションで連続撮影の幅が広がった。
FE 600mm F4は何とかギリギリ手持ちで撮影ができる軽さがうれしいが、この画角で動きものを追うとき、欲張って大きく撮ろうとすると急に難しさが押し寄せてくるレンズである。だが、木に止まった鳥など小さなものをグーンと手元に引き寄せる撮影では、すばらしい画質を見せてくれる。そして、背景のボケ方やそのグラデーションもすばらしく、使って満足度の高いレンズだった。
値段も高いですけどね(笑)。
アカショウビンがこんなクシャとした姿勢で飛んでいるなんて、瞬間を切り取らないと見えてこない。動画ではわからないスチール写真の醍醐味がここにある。
「今回のSUV……スバル レガシィ アウトバック」
撮影先でもよく見かけるアウドドアにピッタリの1台スバル レガシィ アウトバックはアウトドアの撮影行でよく見かける人気のクルマだ。ゆったりした室内とアイサイトなど安全装備が充実しているので、長距離ドライブに向いているのだ。
しっとりと落ち着いたステアリングフィールとアイサイトの運転アシストの安心感は、ドライバーの疲労軽減に貢献している。
高速道路の渋滞にも対応しているので本当に楽ちんなのだ。
水平対向エンジンは重心位置が低く、コーナリング時のクルマのフォールディングがいいので、ハンドリングのダイレクト感が強い。そして、このアウトバックはターボがない分、鼻先の重量物が少なく、ターンインでは素直さが光り、オフロード対応で車高の高いサスペンションでもコーナリングを楽しめるのだ。
NAの2.5Lエンジンの乗り味はせわしなさがなく、飛ばさずとものんびりした味わいがなんとも心地いいのだ。
何かと荷物も増えるアウトドアで荷室が広いのもメリットだ。
そして、ワゴンながら最低地上高が高いから、ちょっとぐらい荒れた林道でも恐れずに踏み込んでいける。下まわりを擦りそうなドキドキがない分、安心できるのがいいのだ。
現地で会った香川県から来ていた藤岡祐季さんも「燃費がよく、長距離ドライブもスゴく楽なところが一番気に入っています」と、愛車アウトバックを絶賛していた。
■主要諸元スバル レガシィ アウトバック リミテッド
(7速CVT/4WD)
全長×全幅×全高:4820mm×1840mm×1605mm
ホイールベース:2745mm
最低地上高:200mm
車両重量:1580kg
エンジン:水平対向4DOHC
総排気量:2498cc
最高出力:129kW(175ps)/5800rpm
最大トルク:235Nm(24.0kgm)/4000rpm
燃料/タンク容量:レギュラー/60L
JC08モード燃費:14.8km/L
タイヤサイズ:225/60R18
価格:363万円
八東ふる里の森鳥取市内から1時間弱ほど山に分け入ると八東(はっとう)ふる里の森にたどり着く。
ちなみにここは八頭町(やずちょう)にあり、似ているようで口に出すと全然違うという、ともに地元じゃないと不思議な地名(笑)。
ここはブナの群生林に囲まれた自然豊かなキャンプ場なのだが、野鳥好きにはキャンプ場ではなくアカショウビン、コノハズクやオオコノハズクといった珍しい鳥たちを容易に見ることができるパラダイスとして有名だ。
アカショウビンが抱卵し、子育てをする巣穴を間近に見ることができる。そこに親鳥が朝夕は30分おきに、日中も1時間待てば餌を持って帰ってくるのを撮影できる。
テクニカルな面で撮影は難しいが、安定してアカショウビンを目にすることは容易で、たぶん日本で一番見やすい場所だろう。だから難しいなりに、いろいろな撮影方法を試すことができるのだ。これが1日に数回しかチャンスがなかったら、チャレンジングな撮影方法なんて取れない。
そして夜になると、小型のフクロウたちが巣穴から顔を出し始める。なんとこれをライトアップされた状態で撮影できるのだ。フクロウ類は神経質でなかなか人の接近を許さない。しかもライトで照らすとすぐに逃げて行ってしまうが、ここでは距離と明るさのバランスが考慮されていて、コノハズク/オオコノハズクたちは生き生きと自然の姿を見せてくれる。だからわれわれは、ふだんは闇に潜む鳥をしっかりと撮影できるのだ。
キャンプ場をこのような野鳥のパラダイスに大変身させたのは、ここの管理を任されている高田豊実さんだ。
「館長」という呼び方で親しまれている声の大きな名物オジサンである(笑)。
館長がていねいに時間をかけてこのすばらしい環境を作り上げてきたのだ。
タイミングを見計らって行けば珍しい鳥たちを見ることができるだけでも至れり尽くせりなのに、ここは撮影場所にテントから椅子まで用意されているという充実ぶり。
初めて行ったときには感動した。雨が降ろうと何だろうと、濡れずに椅子に座って撮影に集中できるのだ。
このように館長はサービス精神の塊のような人で、今度は国道からふるさとの森まで続く道の所どころでサンコウチョウ、ハチクマ、カワセミそしてヤマセミが観察できるような環境を整えようと画策しているので、次に行くときのハプニングが楽しみだ。
ここでは日帰りよりもロッジに宿泊し、夜の森にこだまするコノハズクやオオコノハズクのハーモニーを聞きながら眠りにつき、夜明けから森に響き渡るアカショウビンの声で目覚めるという体験をしてほしい。
そして、八頭町はフルーツがたくさん取れるので、オイラ的にはおいしいものを片手にキャンプ場らしくBBQなんぞをやりながら撮影をしたいと思うが、次から次に鳥がやってきてソワソワと落ち着かなくなるのは目に見えていて、なかなかそれはかなわないだろう、と予想している(笑)。
八東ふる里の森住所:鳥取県八頭郡八頭町妻鹿野1572
TEL:0858-84-3799(管理事務所)
https://yazukanko.jp/eating_lodging/camp/furusatonomori/
営業期間:4月下旬~11月末
営業(開園)時間:8:30~17:00
定休日:開園期間中はなし
施設利用料:バンガロー(宿泊1棟/4500円~)、キャンプ場(テントサイト/1000円、テント1張/500円)、バーベキューハウス(1基2時間/1000円)
鳥取名物砂漠に正装した人たちが並んでいる不思議な雰囲気の写真を見たことはないだろうか?
それが鳥取生まれの写真家、植田正治の「植田調」と言われた独自の作品群である。当然、その砂地は鳥取砂丘だ。
植田氏やその写真の解説や紹介はオイラのようなエセ評論家がするべきではないし、写真はそんな前評判に関係なく、見た人が感じるままに評価すればいいので割愛するが、とにかく不思議でおもしろく、ほっこりする写真なので一度見てみてほしい。
今の時代、ネットで検索すれば少なくともスゴさの片りんぐらいは味わえる。
以前行った植田正治写真美術館は鳥取県でも米子市に近いような位置にあるが、この独特の作品をぜひ紹介したいと思いここに載せた。
植田正治写真美術館住所:鳥取県西伯郡伯耆町須村353-3
TEL:0859-39-8000
https://www.houki-town.jp/ueda/
開館時間:10:00~17:00(最終入館16:30)
休館日:火曜日(祝日の場合は翌日) ※12月1日~2月末日、展示替え期間中
入場料:一般1000(900)円、高校大学生500(400)円、小中学生300(200)円 ※( )は20人以上の団体料金
駐車場:無料(普通車100台、大型バス9台)
〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている
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