バハ カリフォルニアへの挑戦!!
岡崎宏司の「クルマ備忘録」連載 第213回
青学中等部の美人同級生は毎日、黒いアメリカ車で送迎されていた
カリフォルニアの南、太平洋に面した長靴のような形をした半島が、メキシコ領、バハ カリフォルニアだ。
クルマ好きには、「バハ1000」「メキシカン1000」と呼ばれる過酷なレースの場として知られており、旅好きや冒険好きには、楽しくもスリリング、かつチャレンジングな場として知られる。
このバハ カリフォルニアを僕は3度走っている。1度はバハ1000への出場、1度はレースのための下見、そしてもう一度はのんびりした旅で、、。
バハ1000は非常にタフなレースで、クルマにもドライバーにも極限に近い試練を与える。とくに、経験もなく、レースカーもひ弱なプライベートチームには過酷な場だが、僕の場合がまさにそれに当たる。
スバルの小関典幸さんと組み、レオーネ4WDでエントリー。 、、だが、レース序盤、真夜中の走行中に「うっかり大ジャンプ」をやらかして、サスペンションを破損。そのままリタイアに追い込まれた。
というわけで、レースにはいい思い出はないが、アメリカ人二人と行動を共にした、コースの下見は楽しかった。
スタート地点のエンセナダからゴール地点のラパスまで、過去のコース図を参考にしての下見走行だったが、「あり得ない!」ような難所が連続していた。
道なき道どころではない。ほんとうに道が消えてなくなり、小高い丘と砂漠特有の痩せた木々が立ち塞がる、、そんなところさえ数多くあった。
でも、歩いて丘を上がってみると、丘の先に再び道路が走っている。そこで、もっとも木々が少なく、地盤がしっかりしていそうなところを歩いて探し、勢いをつけて強引に丘を駆け上がる。
初めはなかなか上手くいかなかったが、回を重ねるにつれだんだん上手くなっていった。
下見に使ったのはシボレーのフルサイズピックアップ。車高を上げ、砂漠用の太いバルーンタイヤを履く「バハ仕様」だった。
それに対して、わがレオーネ4WDが履いていたのは細いラリータイヤ。そう、わがレオーネは「バハ仕様」ではなく、いわゆる「ラリー仕様」だったのだ。 、、が、時すでに遅し、、。あるもので戦うしかなかった。
悲惨だったレース結果はさておき、4日ほどかけた下見によって、バハの過酷さを知ると同時に、バハの楽しさをも知ることができたのは幸いだった。
今回の妄想の旅では、「楽しいバハ」をたっぷり走り、「過酷なバハ」を、熱い思い出として少しだけ走るように組み合わせた。
旅の相棒に選んだのはフォード F150の4WD。3.5ℓのV6エンジンは、直噴ターボによって450ps / 690Nmを引き出す。走りは強力でタフ。そして、乗り心地もいいし、なによりカッコいい!
F150はLAでピックアップ。大好きなサンタモニカをベースにして、いろいろな買い物など旅の用意をする。
用意ができたら出発だ。まずは405号線を南下してサンディエゴを目指す。思い出づくりのためにサンディエゴの老舗ホテル「デル コロナード」に一泊するのも悪くない。
そして、国境を越えてメキシコに入る。国境に接した町ティワナは、観光都市としても有名で外国人も多い。賑やかで楽しい町だ。
しかし、アメリカとメキシコの国境を越えると、あらゆるものの様相が一変する。もっとも目立つのが豊かさと貧しさの違いということになるが、国境という一本の境界線の重さを強く意識させられずにはいられない。
今はGPSマップを手に入れれば、不自由なく、不安もなく旅ができると聞いている。だが、それはあくまでも主要道路を使った無難な旅に限られるだろう。
まぁ、主要道路を走るだけでも、十分にバハは楽しめる。でも、、できれば主要道路から外れた「チャレンジングなバハ ツアー」にもトライしたい。
そう、バハの懐深くに触れ、太古から続くほんとうのバハに身を置く、、そんなチャレンジングな1日を、いや半日だけでもいいので経験する旅がいい。
もし、本気でそんな旅を経験してみたいなら、LAかティワナで、クルマの知識と経験に長けたガイドを手配すればいい。ガイドにサポートされてバハの懐深く踏み込めば、1日だけでも一生の思い出が作れる。
優れたガイドなら、クルマの能力とドライバーの能力に合わせて、最良のルートを案内してくれるはず。
フォード F150 4WDなら、かなりタフなチャレンジもクリアしてくれると思うが、ガイドなしでは「危に近寄らない」ほうがいい。
そんな意味でも、ガイドを頼んで、「バハ+F150 4WDでの悦楽!」を存分に味わい尽くせるプランを計画に入れたいものだ。
バハの砂漠での要注意事項といえば、猛毒を持つガラガラ蛇との遭遇もその一つ。そんな時の対処法もガイドは教えてくれるはず。
僕はアメリカ人に勧められた解毒剤を持って行くが、果たして役に立つのかどうか。とにかく、砂漠を歩くような時は、ガラガラ蛇の危険を意識するようにしたいものだ。
バハを走るルートだが、今回は、ティワナを出発、メヒカリ経由でアメリカに戻る、、バハ半島をU字型に走るような、1000kmほどのルートを辿ることにしよう。
ティワナから1号線を南下。メキシコ最大の湖である「Lake Chapala」を目指す。この間の距離は500kmほどと思われるが、サボテンや赤茶けた山を見ながらの旅は楽しい。
Lake Chapalaには心地よさそうなリゾート系のホテルがあれこれある。急ぎ旅でなければ2~3泊したい。
スペイン風のカラフルな街の散策も楽しそうだし、美味しい食事にも、楽しい土産物にも出会えるだろう。いや、間違いない。ボートでの湖巡りもしてみたいものだ。
美しいChapala湖と楽しいChapalaの街を堪能してから、5号線を走って北上。しばらく走ると美しい海岸線に出る。カリフォルニア湾だ。コルテス海とも呼ばれる。
カリフォルニア湾の海水は透明度が高く美しい。湾内には多くの島々があり、半分閉鎖されたようになっているため、海洋生物の宝庫ともいわれる。
自然保護区として世界遺産にも登録されているが、クジラやイルカやアザラシなどとの出会いも貴重な思い出になるだろう。
バハは空も美しい。晴れた夜なら、最高の天体ショーが見られる。だから、時にはスリーピングバッグに包まれ、F150の荷台で一夜を過ごすのもいい。
大都市は別だが、僕はバハで危険な目に遭ったことがない。人々はみな親切で優しい。でも、「大空の下で安全な一夜を!」ということなら、キャンプ場を選べばいい。
Lake Chapalaでは気の利いたホテルの選択を勧めたが、田舎町の小さなホテルも旅の思い出を深める。古く、少々くたびれたモーテル系も僕は好きだ。
Lake Chapalaで折り返して5号線を北上。アメリカとの国境の街メヒカリまでは、ほぼ500kmほどだろう。ティワナからの総距離は1000kmほどになるわけだ。
そして、メヒカリでアメリカに入り、北上してインターステイト8号線に入る。あとは淡々とLAを目指すだけ。
旅の締めくくりもサンタモニカで、、。バハからの余韻を楽しめるようなモーテルに泊まる。サンタモニカピアの目の前にある、ちょっと古びた感じのオーシャンロッジがいい。
くり返すが、フォード F150 4WDは、アドベンチャラーなバハカリフォルニアの旅の相棒にうってつけだと思う。パフォーマンスはもちろん、ルックスのもたらす雰囲気も。
バハ カリフォルニアの旅は絶対に楽しい。保証する。この原稿を書きながら、バハのあれこれを思い出し、ウズウズしてきた。
● 岡崎宏司 / 自動車ジャーナリスト
1940年生まれ。本名は「ひろし」だが、ペンネームは「こうじ」と読む。青山学院大学を経て、日本大学芸術学部放送学科卒業。放送作家を志すも好きな自動車から離れられず自動車ジャーナリストに。メーカーの車両開発やデザイン等のアドバイザー、省庁の各種委員を歴任。自動車ジャーナリストの岡崎五朗氏は長男。
溝呂木陽先生の個展開催!
7/22-8/12まで、名古屋栄の平松さんのギャラリーガレリア・デ・アルテにて溝呂木陽先生の水彩展が開催されます。ルマンクラシック2023、パリの女性の絵の新作に加え、模型やおもちゃ、ジオラマ、ミニチュア小物やアンティークなどさまざまなコレクションを展示販売します。溝呂木先生は毎週土曜日に在廊。
溝呂木陽水彩展「マドモアゼルとクルマのおもちゃ」
開催期間/7月22日~8月12日 木、日休廊
開催時間/10時~17時 ※12時~13時休廊 入場無料
場所/栄道越近くアパホテル横3階 ガレリア・デ・アルテ
住所/名古屋市中央区錦3-15-32 3F
TEL/052-972-8554
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