暑い夏場はエアコンを使うため、バッテリーへの負担が大きくなる。さらに近年燃費向上のために、軽自動車を中心に搭載率の高いアイドリングストップ機能ではあるが、実はバッテリーへの負担が非常に大きい。
負担が増えるということはバッテリーの寿命が厳しくなるのだが、通常のバッテリーでもいい値段なのに、アイドルストップ車用のバッテリーはさらに高い。
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ランニングコストで考えると、アイドリングストップ無しのクルマよりもバッテリー寿命が短く、さらに高いときている機能付きのクルマは、長い目で見ると出費が気になるところだ。
何が違って価格が大きく違うのか? また少しでもバッテリーを長持ちさせたいと思った時にやりたい、小技はあるのか? 解説していきたい。
文/諸星陽一
写真/Adobe Stock(Oleksii Nykonchuk@Adobe Stock)、編集部
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■まずは知っておきたいアイドリングストップ機能のこと
そもそもアイドリングストップ機構がクルマに組み込まれるようになったのは、燃費を向上したり排ガスの規制成分の排出量を減らしたりすることが目的です。燃費や排ガスの計測は定められた走行モードで行われます。
大昔は60km/h定地走行モードというものがありました。これは60km/hで走り続けた際のデータを取得するもので、停止することなく計測されます。その後、10モードという走行モードが採用され停止状態がモードに組み込まれます。以来、走行モードには必ず停止状態が含まれています。
今や軽自動車から大型セダン、SUVまでアイドリングストップは当たり前の装備になっている
この停止状態の時に、エンジンも止めてしまえば燃費もよくなりや排ガスの排出量も減らせます。さらに最近では停止する前、減速中にエンジンを停止させて空走することで燃費や排ガス性能を稼ぐ機構も存在します。
停止させたエンジンを再起動するには、いくつかの方法があります。代表的なものは、セルモーターを使って再始動するタイプとオルタネーター(発電機)を使って再始動するタイプです。
オルタネーターを使うもののなかには、さらに駆動力をアシストするものもあります。セルモーターにしてもオルタネーターにしても、駆動するためには電力が必要でこれは12Vの直流電流が使われます。この時の電源は12Vバッテリーです。
一般的には普通に搭載されている12Vバッテリーを使いますが、日産、マツダ、スズキなどは再始動専用のバッテリーを備えています。とくにスズキはリチウムイオン電池を使うといった高価な方式を採っています。
■なぜアイドリングストップ車用のバッテリーは高い?
アイドリングストップしない時代のクルマは、一度エンジンを始動してしまえば目的地に到着してイグニッションをオフにするまでエンジンは掛かりっぱなしでした。しかし、アイドリングストップ付きのクルマは目的地に着くまでも何度もエンジンを停止したり、始動したりを繰り返します。
実はこのエンジンを始動するという行為は、バッテリーにものすごく負担をかけます。ですので、アイドリングストップ付きのクルマには高性能のバッテリーが必要になります。
クルマのバッテリーは充電と放電を繰り返しながら使っています。
このアイドリングストップがバッテリーに大きな負担となっている
例えばここに100%充電されたバッテリーがあるとします。エンジンを始動するのにバッテリーの容量の20%を使ったとします。すると20%分を充電しなくてはならないのですが、普通のバッテリーではゆっくりしか充電できません。もし5%しか充電できてないうちにアイドリングストップして、そこで20%分の容量を使うと残りは65%となります。
アイドリングストップ付き車両に使われるバッテリーは頻繁に行われる充放電に対応した高性能なものでなければなりません。これがアイドリングストップ用バッテリーが高価となっている理由です。
アイドリングストップ用ではない普通のバッテリーを使うと、あっという間にバッテリーがダメになるともいわれています。誤用を避けるためにもバッテリーの規格表示も異なり、一般用バッテリーが「60B19L」などと表示されるのに対し、アイドリングストップ用は「M-65R」などとまったく違う表記となります。
■性能はよくても寿命は短い! 気になるランニングコスト
さて、高性能を謳うアイドリングストップ付きバッテリーですが、実のところ耐久性はそんなに高くはありません。
バッテリーメーカーの保証を見ても一目瞭然で、同じバッテリーを普通に使った場合は36カ月または10万km、アイドリングストップ装備車に使った場合は18カ月または3万kmとなっています。これはもう明らかにアイドリングストップ用のバッテリーは耐久性がありませんという宣言です。
そしてアイドリングストップ用のバッテリーは高価だということも大問題です。
アルファード用のバッテリーを例に通販サイトの価格で調べてみたところ、アイドリングストップ用のバッテリー「S-95」は約3万円、一般バッテリー「55D23L」は約1万円、寒冷地用の「80D26L」で約1万6000円でした。
一般バッテリーも36カ月保証でしたので、36カ月分でコスト計算してみると一般バッテリーは1万円、アイドリングストップ用バッテリーは36カ月で2つ必要となるとして6万円。その差5万円です。
ガソリン 1リットルが150円だとしましょう。5万円分のガソリンは333リットルです。3年で5万円(333リットル)の差ですから、1年なら111リットル。
環境庁が出しているデータでは、一般的にアイドリング10分で0.14リットルのガソリンを消費すると言われます。111リットル分のガソリンを節約するには約7900分のアイドリングストップが必要、365日クルマを使ったとしても1日約22分のアイドリングストップをしないと元が取れない計算になります。
■どうやって寿命を延ばす? 知っておきたいポイント
もっとも、アイドリングストップシステムが付くことによって燃費がよくなり、エコカー減税の対象となっているなら、単純に燃料費のみで損得を計算することはできません。
とはいうものの高いお金を払って買ったバッテリーが車検期間分も持たないというのは、ユーザーとしては腹が立つ部分です。アイドリングストップ付きクルマでバッテリーを長持ちさせる最良の方法は、アイドリングストップをしないことです。
アイドリングストップ機能をカットすればバッテリーも長持ち(tarou230@Adobe Stock)
アイドリングストップ付きのクルマにはキャンセルスイッチが装備されているはずなので、それを押してキャンセルしてやればアイドリングストップはしなくなります。
ただし、このキャンセルスイッチはイグニッションをオフにすると復帰してしまいます。後付けのアイドリングストップキャンセラーを取り付ければ、イグニッションオフ時でもアイドリングストップキャンセルを維持して、アイドリングストップなしをデフォルトにできます。
アイドリングストップを切って気になるのは燃費だろう。こちらはアルファード/ヴェルファイアとロードスターの燃費表だが、車種による違いもあるにせよ、有無による燃費向上は総合して5%程度、市街地で10%程度となる
アイドリングストップキャンセラーを取り付けても、車検は通ると言われていますが、駐停車の時にアイドリングさせておくことは各都道府県条例で禁止されています。アイドリングストップキャンセラーはあくまでも信号待ちや渋滞時、一時停止などでのアイドリングストップをキャンセルするために使うものです。
また、これは筆者本人の考えなのですが、アイドリングストップすることでモード燃費を向上しエコカー減税が受けられるようになったクルマでアイドリングストップキャンセラーを付けるのは、間接的な脱税につながりそうでどうも気が引けます。
アイドリングストップすることで、燃費が圧倒的によくなり出費を抑えられるなら話は別ですが、アイドリングストップは実はユーザーにはあまり優しくない方法なのです。バッテリーの高さもユーザー寄りではありません。
そうしたなか、トヨタが「ヤリス」にアイドリングストップを採用しなかったことなどは、なかなかユーザーのことを真剣に考えているのだな……と感心させる出来事でした。トヨタ、やるじゃん!
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