スーパーカーなどにもラインアップされるアーバンSUVの先駆者
21世紀のいま、自動車産業がグローバル化しています。国産メーカーといっても世界中で生産していますし、国産ブランドであっても海外生産のモデルは増えていますし、開発拠点も世界中に置かれるようになっています。なにをもって国産車と定義するのか微妙な時代になっていますが、かつての日本車は日本で開発・生産して、世界へ向けて輸出したり、その技術力を発信したりというのが基本でした。
グローバル化がいまほど進んでいなかった1980~90年代、いまや世界的に当たり前となったカテゴリーやテクノロジーを国産車が生み出したことをご存じでしょうか。今回は、アーバンSUV、4ドアクーペ、ミッドシップオープンのモノコックボディという、いまや当たり前になった2つのカテゴリーと1つの技術について、その元祖といえるクルマを紹介します。
1)トヨタ・ハリアー
まず「アーバンSUV」といえば、言わずもがなトヨタ・ハリアーです。モノコックボディのFF車をベースとしたライトクロカンとしてRAV4を生み出し、それまで重くて五月蠅いといったイメージのクロカン4WDに対抗する新たなジャンルを切り開いたトヨタが、さらに都市に似合うSUVとして磨きをかけたのが「ハリアー」で、1997年に誕生しました。初期のコンセプトはセルシオのSUVというだけあって、それまでプレミアムとは無縁で質実剛健が良しとされてきた4WDの世界に一石を投じました。北米でレクサスRX(初代)として販売されるやいなやスマッシュヒット、アメリカやドイツの自動車メーカー各社から多くのフォロワーが生まれたのは「ハリアー」あってこそです。
いまやスーパーカーや超プレミアム・ブランドからも同様の「アーバンSUV」というコンセプトのモデルが続々と登場しています。ハリアーの誕生がなくとも、誰かが考え付いたかもしれません。しかし、トヨタがハリアーをあのタイミングで出さなかったら、これほどのプレミアムSUVムーブメントは盛り上がっていなかったのではないでしょうか。
今でも大ブームのカテゴリーは1980年代に登場していた
2)トヨタ・カリーナED
ドイツ系ブランドでは一大ムーブメントとなっている「4ドアクーペ」。そのコンセプトもルーツを辿ると一台のトヨタ車に行きつきます。それが1985年に誕生した「カリーナED」。1.8リッタークラスの実用的かつスポーティセダンとして認知されていた「カリーナ」の派生モデルとして誕生した世界初の4ドアクーペといえるモデルです。EDは「エキサイティング ドレッシー」の頭文字をとったものです。後に「コロナEXiV(エクシヴ)」という兄弟車も誕生、空力に有利な低い車高を活かしてJTCCという4ドアセダンで競われたレースでも活躍しています。
Bピラーのないすっきりとしたグラスエリアは、ピラーレスハードトップと呼ばれるモデルに共通した魅力で、それ自体はカリーナEDの以前から採用しているモデルはありましたが、オーソドックスなセダンの派生モデルとして、こうしたスタイル重視のラインアップを追加するという商品企画については、間違いなく元祖といえるでしょう。時間差があるため「21世紀になってメルセデスやBMWなどから生まれた4ドアクーペに影響を与えていない」という見方もありますが、少なくとも日本では大ヒットしたモデルであり、海外メーカーがまったく知らずに偶然似たコンセプトになっただけというのはちょっと考えづらく、なんらか影響を与えていると考えるほうが妥当です。
3)ホンダ・ビート
最後の紹介するのは1991年に生まれた「ホンダ・ビート」。軽自動車のミッドシップ2シーター・オープンモデルです。ミッドシップであること、オープンであること、2シーターであること。この3つの要素を持つモデルは、海外のスポーツカー、スーパーカーなどでは珍しくありませんでしたが、ビートがエポックメーキングなのは「ミッドシップ+フルオープン+2シーターとして世界初のモノコックボディを採用」したということにあります。Bピラーでボディ左右がつながりリヤウインドウのあるミッドシップオープンではモノコックボディはありましたが、リヤウインドウのないフルオープンが可能な量産車としてはビートが世界初のモノコックボディだったのです。
技術トレンド的に軽くて量産性にも有利なモノコックボディに向かうのは当然の流れですから、ビートが登場しなくても世界中のミッドシップオープンカーはモノコックボディになっていたかもしれませんが、ビートが世界で初めて実現したのは事実です。
なお、現在ホンダが発売している軽ミッドシップ2シーター「S660」は、オープン時にBピラーやリヤウインドウが残るタイプでビートが世界で初めて実現したフルオープンという条件は満たしていなかったりするので、その意味では後継ではなく違うモデルと考えるべきなのかもしれません。
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