車のニュース [2023.01.27 UP]
豊田章男社長の退任
文●池田直渡 写真●トヨタ
スズキが2023年度にBEV投入。2030年までに6モデルを日本で展開
2023年1月26日午後3:30。トヨタから緊急配信されたリリースは波乱に満ちた内容だった。そこに書かれていたのは、豊田章男社長の退任と次期社長の名前だった。
役員の役職変更・担当変更(3名)
氏名新役職現役職豊田 章男代表取締役会長代表取締役社長
執行役員
Chief Executive Officer内山田 竹志代表取締役代表取締役会長佐藤 恒治執行役員
社長
Chief Executive Officer執行役員
Chief Branding Officer
Lexus International Co.(President)
GAZOO Racing Company(President) 配信されたリリースを追いかける様に、16:00から始まったトヨタイムズでのライブ会見での補足説明によると、初めに内山田会長の退任の申し出があり、それを受けて豊田社長が会長へスライド、社長は佐藤プレジデントという、押し出し人事ならぬ、引っ張り人事が発生したらしい。というのが公式発表だが、豊田社長を追いかけてきた筆者はもう少し詳細なストーリーを補足できる。
まず内山田会長は、トヨタにハイブリッドをもたらした。そしてトヨタはそのハイブリッドをひとつのきっかけにして1000万台、つまり世界一へと昇り詰めて行ったのである。かけがえのない功績であり、そういう意味では、いつまででも会長の椅子に座っていられただろう。ところが内山田さんはそれを良しとしなかった。世代交代が必要だ。だから自らの言葉で「若い人に老害と言われる前に」と言い、退任を固めた。
一般論として、社長は社内を治め、会長は対外交渉を受け持つ。さらに社長の相談相手としても機能する。豊田章男体制で、その役割を果たしてきた内山田会長の存在は大きく、その点については冒頭の説明でも「(今回の発表の)トリガーとなりましたのは、内山田会長が退任されることです。トヨタの変革をさらに進めるためには、私が会長になり、新社長をサポートする形が一番良いと考え今回の結論に至りました」と豊田社長自身が説明している。
豊田社長の説明では、内山田会長の果たしてきた役割を担うには自分がやるしかないという部分はクリアなのだが、一方で、ではそのために自身が社長を退任する決断は何なのかは語られていない。
会見で繰り返し説明されたように、リーマンショックの後始末から始まり、公聴会、東日本大震災、チャイナショック、円高、デフレ、コロナ危機、ウクライナ侵攻、サプライチェーンの棄損、円安と、毎年毎年波乱が起こり、平穏な年など一年もなかったという社長人生である。新社長になった途端、トヨタを巡る情勢が平穏になることなどあり得ない。これから佐藤恒治次期社長の平穏でない日々が始まるのである。渡される方が大変なのはもちろんだが、それを承知で渡す方も大変だろう。
色々な説明の中で、明らかな説得力を持っていたのは佐藤恒治次期社長の若さだろう。特に「私が社長になったのと同じ年齢です」という言葉には説得力がある。また会長のサポート力を考えれば、鍛える側も鍛えられる側も若いに越したことはない。10年後76歳になった豊田氏よりも、今の方がパワフルに動けるだろう。もちろん佐藤政権がどのくらい続くかはわからないが、若さという点から見れば、10年続いたとしても不思議はない。
さて、今回の人事で、トヨタはどう変わるのだろう? まだまだわからないことがたくさんある。豊田社長によれば、佐藤次期社長による体制は、チームによる集団統治の方向で考えているらしい。それはそうだろう、トヨタ自動車をこれだけ改革した、創業家一族出身の革命家の後を同じように引き継ぐのは簡単な話ではない。はっきり言えば誰がやってもキツい。
そこで佐藤次期社長に皺寄せが行き過ぎないようにするチーム方式なのだろう。そしてそのチームがどう組まれるのかがこれからの焦点だ。
全体の方向性は、37万人におよぶ世界中のトヨタの従業員を考えるのが社長の役目、550万人の自動車産業の仲間の未来を考えるのが会長の役割ということになるだろう。いずれにしてもこの4月。我が国の基幹産業の中核とも言えるトヨタ自動車の新体制がスタートすることになる。
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みんなのコメント
さすが北も愛知も将軍様は同じやね
EV化を根底から見直すとの報道も流れてるが
新方針を打ち出すのは新社長からとなるなら
社内外をまとめるのに良いタイミングと言える。
公聴会の負のイメージを跳ね返すところから始まり
スープラをBMWと共同で復活とかコロナ禍の
トヨタイムズとか楔形プリウスとかなかなか
面白くされたと思います。
お疲れ様でした。