現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 逆風下でも最高益を記録したトヨタ 深掘りするとモリゾウさんに行きついた

ここから本文です

逆風下でも最高益を記録したトヨタ 深掘りするとモリゾウさんに行きついた

掲載 33
逆風下でも最高益を記録したトヨタ 深掘りするとモリゾウさんに行きついた

 2022年3月期の連結決算で過去最高となる営業収益31兆3795億円、営業利益2兆9956億円、当期利益2兆8501億円を計上し、いずれも従来の最高益を更新するものだった。

 円安だったから? それは違う。これまでの最高益は2016年3月期の営業利益2兆8539億円だったが、当時は1ドル120円で2022年3月期は1ドル112円だったから、6年前のほうが円安だ。販売台数も868万台から823万台へ45万台減っているし、資材高騰の影響で6400億円もコストが上がっている。そんな厳しい条件下でなぜ、トヨタは最高益を出せたのか? トヨタの変化を商品力という点から掘り下げてみた。

逆風下でも最高益を記録したトヨタ 深掘りするとモリゾウさんに行きついた

文/ベストカー編集部
写真/西尾タクト、TOYOTA

モリゾウさんが言い続けてきた「もっといいクルマをつくろうよ」

 豊田章男社長(以下親しみを込めてモリゾウさんとします)が、2009年に社長就任が決まった際のメッセージで発信して以来、ずっと社員に呼び掛けてきた言葉に「もっといいクルマをつくろうよ」がある。あれから13年、もっといいクルマ作りのために努力し続けてきた結果、今回の最高益に結びついたのではないだろうか?

 モリゾウさんが社長に就任する以前のトヨタは2001年に「グローバルマスタープラン」を掲げ、生産台数世界一を目指していた。簡単に言えば、生産台数を決め、工場を次々に作った。作りやすいクルマ、売りやすいクルマが優先され、カローラやカムリ、プリウスが中心となり、セリカやスープラといったスポーツカーがラインナップから消えていった。2008年3月期でトヨタは売り上げ高でも過去最高を記録し、「グローバルマスタープラン」は成功したかに思えた。しかし、その年の9月に起こったリーマンショックが引き金となり、翌2009年3月期の決算では4610億円もの営業赤字を出してしまう。

 工場建設の設備投資に加え、車種ごとの開発による高コスト体質で、クルマが売れなくなり、円高になると、あっという間に赤字に転落してしまう体質だった。モリゾウさんに当時を聞くと「とにかくたくさん売りたい、もっと儲けたい」だったと振り返る。

 真にお客さんに選ばれるクルマ作りが行われていないのではないか? 商品力を上げて、お客さんにちゃんと選んでもらい、しっかり儲かる体制作りが不可欠とモリゾウさんは腹を決めた。

 2012年にはTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を発表し、86を発売した。2015年にはバラバラだったレース活動をTOYOTA GAZOO Racingに一本化し、モータースポーツから得た知見を積極的に市販車に生かす取り組みを加速させた。そして2016年にはカンパニー制が導入された。

 TNGAによって基本骨格を刷新し、走りや乗り心地のよさ、そしてデザイン性の高さを手に入れるとともに、部品やユニットの共用化に加えて、サプライヤーを含めた生産現場での連携や協業で開発と生産コストが大幅に圧縮された。さらにカンパニー制を取ることによって、より効率的な開発と生産が可能になった。

 例えばToyota Compact Car Companyは、ヤリスとヤリスクロス、アクア、シエンタなど比較的1台当たりの儲けが少ない車種を開発、生産するが、最初から共用化を考えて企画や開発が行われた結果、設備投資や部品調達で大幅にコストを圧縮しながら、同時に商品力の向上も可能になった。

 また、カンパニー制がなければ、開発や生産コストが高く、台数も望めないGRヤリスやGRカローラ、GR86といったGRのスポーツモデルの誕生もなかったはずだ。GRカンパニーとして、黒字にするという俯瞰的な見方ができなければ、スポーツカーを作っていくのは難しいからだ。

愛知県蒲郡市にあるトヨタグループの研修施設「KIZUNA」にはコースを自由に変えられるダートコースがあり、マスタードライバ―のモリゾウさんはみずからステアリングを握り、1000km以上走り、テストを重ねた。モータースポーツで勝つためのクルマを開発して市販するという、これまでにない発想でGRヤリスは開発された

モリゾウさんは「兆しが見えてきた」と話した

 では、モリゾウさん本人は今回の最高益をどうとらえているのか? 5月に宮城県利府町で行われた「ラリーチャレンジ利府」のスタート前に聞いてみた。 

「私がやってきたのは、ロングセラーの車種を大事にすることです。カローラなら、セダン、スポーツ、ツーリング、クロスとあります。カローラの安心感は、お客様がよくご存じだから、クルマがよければ、売れると思っていました。

 だから、看板車種であるカローラをとにかくよくしたいと思って、いろいろ注文を付けてきました。このことは、開発を担うメーカーだけでなく、お客様と直接向き合うディーラーにもいい影響を与えたと思います。

 というのも、半導体の問題はじめ、人気車の納期が延び、お客様にクルマをなかなかお届けできない状況になっています。そういう辛い状況の中、ディーラーはお客様に納得していただいて、違うクルマを選んでいただける体制ができつつあります。例えば、カローラでもいろいろなバリエーションがあることが、ディーラーでは柔軟な対応ができるのだと思います。

TNGAやカンパニー制による効果が表れ、カローラはファミリーカーでありながら、いいクルマを実感できるクルマとなり、販売店での収益を支える柱になっている

 販売現場でも売りたい、儲けたいではなく、いいクルマをお客さんに選んでいただくという、ごく当たり前のことが“普通”になってきたことが一番うれしいことです。

"もっといいクルマをつくろうよ"の思いが、メーカーにもディーラーにもようやく浸透してきた。社長になってから13年かかりましたが、兆しが見えてきた気がします。」

 モリゾウさんは「兆し」という控えめな表現ながら、商品力の底上げと社内改革について、手ごたえを感じているようだ。

 ところで、2009年社長就任に当たって社員に「もっといいクルマをつくろうよ」と発信した際にもうひとつ重要なことを話している。メッセージを今一度振り返ると、

「大切なことは『軸がブレない』ことだと思う。その軸とはただ1点『もっといいクルマをつくろうよ』ということである」とメッセージにある。

「軸がぶれない」は、言うまでもなくモリゾウさん本人が社長就任以来一番こだわってきたことだ。軸がブレないから、会社が一丸になり、変化を厭わない土壌が生まれ、いいクルマをつくるために変革を続けてきた。今回の最高益は、その努力が実った結果ではないだろうか。

レースにラリーにモリゾウさんは、積極的にモータースポーツに関わる。モータースポーツで鍛えることで、開発スピードがアップし、限界領域で不具合を出すことで、いいクルマが生まれる。先日の富士スーパーテック24時間レースでもGR水素エンジンカローラで参戦し、モリゾウさん自身も65ラップ走った

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

ミツオカ新型「M55」世界初公開に反響多数! MTのみ設定&“旧車”デザインに「良すぎる」の声! 青内装の「ゼロエディション」が話題に
ミツオカ新型「M55」世界初公開に反響多数! MTのみ設定&“旧車”デザインに「良すぎる」の声! 青内装の「ゼロエディション」が話題に
くるまのニュース
クシタニが2024-25FWガーメントを発売! 暖かさと運動性の高さを両立した防寒パンツ・ブーツ・グローブをラインナップ
クシタニが2024-25FWガーメントを発売! 暖かさと運動性の高さを両立した防寒パンツ・ブーツ・グローブをラインナップ
バイクのニュース
ついに昔の[ダイハツ]が蘇る!? [不祥事]以来変わった[社内の雰囲気]とは
ついに昔の[ダイハツ]が蘇る!? [不祥事]以来変わった[社内の雰囲気]とは
ベストカーWeb
ニューズウィーク誌が選ぶ「2025年最も期待される新型車」にベントレー新型「コンチネンタルGTスピード」が選出されたもっともな理由…とは?
ニューズウィーク誌が選ぶ「2025年最も期待される新型車」にベントレー新型「コンチネンタルGTスピード」が選出されたもっともな理由…とは?
Auto Messe Web
フィアット125周年をイタリアが国をあげて祝福、2つの特別展示会をトリノで開催
フィアット125周年をイタリアが国をあげて祝福、2つの特別展示会をトリノで開催
Webモーターマガジン
「ランクル」兄弟で最もモダンな“250”に試乗! オンロードでもオフロードでも隙がない万能モデルだ。【試乗レビュー】
「ランクル」兄弟で最もモダンな“250”に試乗! オンロードでもオフロードでも隙がない万能モデルだ。【試乗レビュー】
くるくら
「クルマの左寄せ」苦手な人が多い!? よく見えない「左側の車両感覚」をつかむ“カンタンな方法”がスゴい! JAFが推奨する“コツ”ってどんなもの?
「クルマの左寄せ」苦手な人が多い!? よく見えない「左側の車両感覚」をつかむ“カンタンな方法”がスゴい! JAFが推奨する“コツ”ってどんなもの?
くるまのニュース
文化を身近に。BMWが贈る特別イベントに名門ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団が登場!
文化を身近に。BMWが贈る特別イベントに名門ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団が登場!
OPENERS
全長2.5mで新車100万円級! トヨタの「斬新2シーターモデル」がスゴイ! めちゃお手頃サイズなのに「必要にして十分」の“おふたりさま向けマシン”とは
全長2.5mで新車100万円級! トヨタの「斬新2シーターモデル」がスゴイ! めちゃお手頃サイズなのに「必要にして十分」の“おふたりさま向けマシン”とは
くるまのニュース
アルピナの未来、26年「BMW傘下」でどう変わる? 高性能EV&Mモデルとの差別化を考える
アルピナの未来、26年「BMW傘下」でどう変わる? 高性能EV&Mモデルとの差別化を考える
Merkmal
高すぎるよぉ…! 価格が暴落したら買いたいスーパーカー3選
高すぎるよぉ…! 価格が暴落したら買いたいスーパーカー3選
ベストカーWeb
男性が乗って女性にモテるクルマTOP5は? ChatGPTに聞いて出た「ホントかよ!」な答えとは!!
男性が乗って女性にモテるクルマTOP5は? ChatGPTに聞いて出た「ホントかよ!」な答えとは!!
WEB CARTOP
悲喜交々のST-4。「複雑な気分」のENDLESS GR86と「逆に清々しい気持ち」で5連覇を逃した冨林勇佑
悲喜交々のST-4。「複雑な気分」のENDLESS GR86と「逆に清々しい気持ち」で5連覇を逃した冨林勇佑
AUTOSPORT web
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
レスポンス
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
乗りものニュース
あれぇぇ!? [ノートオーラNISMO]と[シビックRS]を比較してみると意外な結果
あれぇぇ!? [ノートオーラNISMO]と[シビックRS]を比較してみると意外な結果
ベストカーWeb
レゴ、F1全チームをテーマにした製品を2025年1月1日から販売開始。往年の名車ウイリアムズFW14Bなど“オトナ向け”製品も3月に発売
レゴ、F1全チームをテーマにした製品を2025年1月1日から販売開始。往年の名車ウイリアムズFW14Bなど“オトナ向け”製品も3月に発売
motorsport.com 日本版
ホンダが「凄い施設」を初公開! 夢の「全固体電池」実現に一歩前進!? パイロットラインを栃木で披露
ホンダが「凄い施設」を初公開! 夢の「全固体電池」実現に一歩前進!? パイロットラインを栃木で披露
くるまのニュース

みんなのコメント

33件
  • 経営者の顔が良い方向で見えるというのは大きな武器だと思いますよ。
    自動車メーカーのトップが車好きを公言して行動も伴えば、それだけで大きなプロモーションになりますしね。
  •  相変わらずトヨタ忖度全開のベストカ-。

     「ベストカ-ガイド」時代の徳大寺有恒さんの、どのメーカ-に対しても批判すべきはする、という頃は遠い昔の話。
     今はただひたすらトヨタヨイショ記事の大量生産。ついには豊田社長個人まで来たか。
     

     
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

202.9251.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

39.9450.0万円

中古車を検索
カローラの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

202.9251.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

39.9450.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村