間もなく発売! トヨタ ヴィッツ後継車の「新型ヤリス」には、エコカーの必須装備が付いていない!? “あえて”付けなかったその理由とは。
ここ10年ほどで付いてない方が珍しいほど普及した省燃費技術といえば、「アイドリングストップ」だ。文字どおり停車時にエンジンを止め、その間に排気ガスを発生させない機構は2010年代以降、爆発的に普及。
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今や一部商用車やスポーツモデルを除けば、全ての国産新車に付いているといっても過言ではない。
しかし、意外なことに2020年2月10日に発売される新型ヤリスに加え、新型RAV4や新型カローラのガソリン車にはアイドリングストップが付いていない。
なぜ、トヨタは「エコの必須装備」をあえて非装着としたのか?
文:永田恵一
写真:編集部、MAZDA、TOYOTA、DAIHATSU
【関連画像&図表】燃費はどれだけ違う?? 最新アイドリングストップ未装着車と装着車との燃費差
最新車は“ほぼ全車”採用!! なぜアイドリングストップは当たり前に?
2009年発売の2代目アクセラ。FFの2.0Lガソリン車にアイドリングストップ機構の「i-stop」を採用。燃費向上を図った
最大の理由は、当然ながら停止中にエンジンを止め、燃費を向上させるためである。
近年の日本車におけるアイドリングストップ普及の火付け役となったのは、2009年登場の2代目マツダ アクセラで、同車の登場以来、アイドリングストップはドンドン普及した。
また、2009年はリーマンショックによる不景気が始まった頃で、この時期に政府は景気刺激策としてエコカー減税を開始した。
エコカー減税は、簡単に言えばカタログ燃費が車重に対する基準を超えれば適合するもので、重量税と取得税(=当時)が減税になるというものである。
そのため「アイドリングストップを装着すれば、カタログ燃費が基準を超えるのでエコカー減税に適合する」というボーダーライン近くの車種が、アイドリングストップを装着してエコカー減税に適合する、言い換えれば「エコカー減税のためにアイドリングストップを装着する」というものもあった。
これはユーザーにも利益があるのだから、商売として納得できることだろう。
こうした背景もあり、現在日本車ではスポーツモデルを除く、ほとんどのモデルにアイドリングストップが装着されている。
トヨタの見解は? 新型ヤリスがアイドリングストップを装着しない理由
新型ヤリス「X」(1.5Lエンジン/FF車)。最新車としては異例のアイドリングストップ非搭載。ヤリスはハイブリッド車のみアイドリングストップが付く
まず、トヨタ広報部を通して問い合わせたところ、公式な回答は以下のとおりだった。
「スマート&ストップ(=アイドリングストップ)は、燃費改善のためのアイテムです。今回のRAV4、カローラ、ヤリスは、TNGAエンジンを採用しており、スマート&ストップがなくても、充分競合性があるためにスマート&ストップの設定をしておりません」
では、ヤリスの1.5Lガソリン車のカタログ燃費を、アイドリングストップ機構が付いた競合車比べてみるとどうか。
■トヨタ ヤリス「G」(CVT、FF)
WLTCモード総合/21.4km/L
WLTCモード市街地/15.7km/L
WLTCモード郊外/22.6km/L
WLTCモード高速/24.1km/L
■マツダ デミオ「15S」(6速AT、FF)
WLTCモード総合/19.0km/L
WLTCモード市街地/15.2km/L
WLTCモード郊外/19.4km/L
WLTCモード高速/20.9km
(※排気量など条件が近いためマツダ車を比較対象とした)
新型ヤリスは、デミオと排気量は同じでも3気筒エンジンとなる。設計時点の違いなどもあるにせよ、確かにカタログ燃費でアイドリングストップなしでも比較対象のマツダ車を上回っており、競争力は高い。
さらに筆者は最新のトヨタ車がアイドリングストップを付けないのは、カタログ燃費だけでなく「アイドリングストップ非装着の方が総合的に見てユーザーの負担と環境負荷が少ないと判断したため」と考えている。
実はアイドリングストップの有無で燃費は大差なし!?
マツダのロードスターは主力グレードの6MT車で、アイドリングストップがオプション設定となっており、その有無でカタログ燃費が若干異なる
具体的な理由・根拠を挙げるため、アイドリングストップ装着による燃費向上をカタログ燃費で見てみよう。
といっても、最近は同じエンジンとトランスミッションで、アイドリングストップの有り/無しがあるモデルは非常に少ない。例として取り上げられるのは、トヨタ アルファード/ヴェルファイア(2.5Lエンジン車)とマツダ ロードスター(1.5Lエンジン車/6MT)くらいだ。
2台のアイドリングストップ「有り」と「無し」のカタログ燃費は、以下のとおり。
■アルファード(2.5ガソリン車/FF)
WLTCモード総合/無:10.8km/L、有:11.4km/L
WLTCモード市街地/無:7.3km/L、有:8.2km/L
WLTCモード郊外/無:11.7km/L、有:12.1km/L
WLTCモード高速/無:12.8km/L、有:13.2km/L
(※オプション価格=蓄冷エバポレーター含め5万7200円)
■ロードスター(1.5エンジン車/6MT)
WLTCモード総合/無:16.8km/L、有:17.4km/L
WLTCモード市街地/無:12.0km/L、有:13.4km/L
WLTCモード郊外/無:17.7km/L、有:18.0km/L
WLTCモード高速/無:19.5km/L、有:19.5km/L
(※オプション価格=i-ELOOP含め8万8000円)
このように、実用燃費とのかい離が少ないWLTCモードを見ると、車種による違いもあるにせよ、燃費向上は総合して5%程度、市街地で10%程度となる。いや、実用燃費を考えると気候のいい春・夏ならアイドリングストップの機会も増え、燃費も向上する。
しかし、夏・冬は車内環境を維持するためのエアコン稼働が増えるため、アイドリングストップの回数も減り、年間でみると燃費が向上する割合は減少するだろう。
トヨタに追従も!? アイドリングストップの意外な弱点と今後
ダイハツ タントのアイドリングストップイメージ図。アイドリングストップが始動する車速も車種によってまちまちで、それによって燃費を向上させるモデルもあったが、その流れに変化も!?
さらにアイドリングストップ車用の12Vバッテリーは寿命が短いうえに値段が高い。
車種によっても異なるが、大まかなイメージでいうと、アイドリングストップ車用のバッテリーは、非装着車用に対し寿命は3分の2、価格は1.5倍といったところだ。
おまけにアイドリングストップ車のバッテリー交換は、ディーラーでのセットアップが必要な場合もあり、ここでも費用がかさむ可能性もある。加えて、大量生産によりコストダウンが進んでいるとはいえ、アイドリングストップを付けるのも、タダな訳ではない。
こうした点やエコカー減税の適合も次第に難しくなっていることを考えると、燃費の向上とバッテリー交換費用などを考慮した場合、アイドリングストップ装着で金銭的に元を取るのは不可能に近い。
これに対しては「金銭よりもアイドリングストップして二酸化炭素を出さない方が重要だ」という意見もあると思う。しかし、「では、アイドリングストップによって12Vバッテリーの消費が増えることは良いのか?」というのも真理ではないだろうか。
こうしたことを総合的に熟考してトヨタはアイドリングストップを非装着にするという決断を下したと筆者は見ている。
この決断を筆者は正しいものと感じており、こういった決断ができるのもトヨタの強さの原動力の1つと言えそうだ。
また、アイドリングストップ非装着は影響力が大きいトヨタが決断したことだけに、この動きに追従するメーカーが出る可能性も小さくないだろう。
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みんなのコメント
私はエンジン始動後、真っ先にOFFにしてますが、走行モード切替のたびにまたONに戻るし、BMWはスイッチがエンジンスタートボタンのところだからまだ良かったけど、メルセデスはコントローラーの死角の押しづらい場所にあって地味にうざい…嫌がらせなのか。。。
コーディングで常時OFFにしたいけど、そのためだけに1万円のツールを買うのもちょっと…。
アイドリングストップを搭載するのは構いませんが、普通にデフォルト値の変更はできるようにしてほしいですね。
そもそもこの機能に限らず、コーディングで設定できるものは普通にCOMANDシステムとかi-Drive上で設定できるようにしてほしいもんです。何故できることをわざわざ封印してしまうのか…。
ノロノロ進む時、アイストではエンジン停止・再稼働が繰り返され、その都度大量の電気が消費される。(モーター発進できるEV、HVは別)
その分ガソリンも消費される。
回生エネルギーも行われようが、少なくともバッテリーへの負担は大きくなる。
結果、車検ごとにかなり割高なバッテリーを交換され、エコノミーなことは決してないことは明らかだ。
さらに使用済みのバッテリーの廃棄もしくは再生にかかるエネルギーを考えるとエコロジーかどうかも怪しい。