■新型ミニバンが軒並み3ナンバーした理由は?
ホンダ新型「ステップワゴン」やトヨタ新型「ノア/ヴォクシー(ノアヴォク)」は、標準ボディを含めて全車3ナンバー専用車になりました。
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とくにホンダは、軽自動車を除くと、5ナンバー車が減っており、いまでは「フィット」「フリード」「シャトル」のみです。
「シビック」などに続いてステップワゴンまで3ナンバー専用車になると、ホンダの売れ筋車種で5ナンバーサイズを守っているのはフィットとフリードだけになります。
新型ステップワゴンのボディサイズは、全長が4800mm-4830mm、全幅も1750mmまで拡大されます。サイズアップの理由について開発者は次のようにいいます。
「従来型のステップワゴンも、売れ筋のスパーダは3ナンバー車でした。新型は、新たに設定した『エアー』も外観の存在感を強め、室内幅に余裕を持たせることも考えて3ナンバー車としています」
ノアヴォクも、先代型は標準ボディが5ナンバーサイズでしたが、新型は3ナンバー車のみです。「TNGA GA-C」と呼ばれる新しいプラットフォームに刷新した影響もあり、5ナンバー車はありません。
5ナンバー車だったミニバンが3ナンバー車へサイズアップしたことについて、トヨタの販売店は以下のように述べています。
「以前からノアとヴォクシーのエアロ仕様は3ナンバー車だったので、先代型から乗り替えるお客さまはボディの拡大は気にしていません。
しかし1人目の子供が生まれたなどの理由で、コンパクトカーからミニバンに乗り替えるお客さまは5ナンバーサイズにこだわります。
ミニバンにはボディが大きなイメージもあり、3ナンバー車ではこの傾向が一層強まるからです。
そこで最初にミニバンを買うお客さまには、車内は少し狭いですが、5ナンバー車の『シエンタ』をおすすめしています」
今までステップワゴンやノアヴォクなどのミドルサイズミニバンに乗ってきたユーザーは、全車が3ナンバー車になっても違和感はありません。しかし新たにミニバンを買うユーザーは受け止め方が異なります。
たとえエアロ仕様が3ナンバー車でも、標準ボディが5ナンバーサイズに収まれば馴染みやすい印象になるからです。
それが標準ボディまで3ナンバー車になると、「大きくて運転しにくいミニバン」という印象が強まってしまうのです。
新型ステップワゴンの開発者が述べたように、3ナンバー車になると室内幅を拡大できます。
新型ノアヴォクは、全車を3ナンバーサイズにしたことでプラットフォームの刷新も可能になり、エンジンやハイブリッドシステム、安全装備などを大幅に進化させることが可能になりました。
3ナンバー車へのサイズアップによって得られたメリットは多いですが、イメージの面ではマイナス要素も生まれるわけです。
そうなると、5ナンバーミニバンのシエンタやフリードの役割は従来以上に大切になるでしょう。
■3ナンバー車のハッチバックは売れていない!? 一体なぜ?
ハッチバックタイプのモデルについては、5ナンバー車と3ナンバー車で売れ行きが明確に分かれます。
たとえばホンダ車の場合、5ナンバー車のフィットは、2021年に1か月平均で4898台が登録されました。3ナンバー車のシビックは710台とフィットの14%に留まります。
マツダ車では、5ナンバーサイズの「マツダ2」は2021年の1か月平均が2054台でしたが、「マツダ3ファストバック」は半分以下の997台です。
しかもマツダ2の発売は2014年(当時はデミオ)ですが、「マツダ3」は2019年と比較的新しいモデルなのに販売面では大差を付けられました。
もちろん、それぞれのモデルでデザインやスペックなどの違いもありますが、ハッチバック市場では5ナンバー車が好調に売れて、3ナンバー車が低迷する背景には複数の理由があります。
まずハッチバックを運転するユーザーは、初心者ドライバーが多いことです。
前出のトヨタの販売店のコメントでも「コンパクトカーからミニバンに乗り替えるお客さまは、5ナンバーサイズにこだわる」とされていました。
ハッチバックは初心者ユーザーが多く、5ナンバーサイズによる運転のしやすさが重視されるのです。
ふたつ目は空間効率と使い勝手です。たとえば5ナンバー車のフィット(クロスターを除く)は、全長3995mm×全幅1695mm、3ナンバー車のシビックは全長4550mm×全幅1800mmですが、後席の足元空間はほぼ同じです。
つまりフィットはボディが小さいのに、車内の広さはシビック並みということに加えて、燃料タンクを前席の下に搭載して後席を小さく畳めるため、荷室はシビックよりも使いやすいのです。
動力性能や走行安定性はシビックのほうが優れていますが、それらの点がフィットでも満足できるなら、運転しやすくて車内が広いフィットは合理的でしょう。
そしてもっとも大きな違いは価格です。
フィットの1.3リッターガソリンエンジンを搭載する「ホーム」は176万7700円、シビックは1.5リッターターボエンジンを搭載した「LX」が319万円です。
マツダ2の1.5リッターガソリンエンジンを積んだ「15Sプロアクティブ」は169万4000円ですが、マツダ3ファストバックに2リッターガソリンエンジンを搭載する「20Sプロアクティブ」は251万5741円です。
走行性能や装備の違いはあるものの、フィットの価格はシビックに比べて約140万円、マツダ2もマツダ3に比べて約80万円安いです。これだけの価格差が生じると5ナンバーサイズのフィットやマツダ2が多く選ばれます。
そしてマツダの販売店では、次のような話が聞かれました。
「いまは運転のしやすさや価格の安さを重視するお客さまは、コンパクトなマツダ2を選びます。それ以上に大きな車種が欲しい人はSUVを購入します。
クロスオーバーSUVの『CX-30』はサイズと価格はマツダ3に近いですが、SUVなので荷室は広いです。
CX-30はマツダ2やマツダ3では実用性が足りないと感じるお客さまの間で人気を高めました」
つまり、3ナンバーサイズのハッチバックがいまひとつ売れない背景には、SUVの好調な売れ行きも影響しているのです。
※ ※ ※
同じ3ナンバー車でも、ミドルサイズミニバンとハッチバックではユーザーの見方が異なります。
3ナンバーサイズのハッチバックには、コンパクトカーやSUVとは違う明確なセールスポイントが必要でしょう。
またミニバンについても、新型ステップワゴンや新型ノアヴォクは3ナンバー専用車になり、安全装備や運転支援機能の充実によって価格帯も高くなりました。
5ナンバーサイズで割安なフリードやシエンタの魅力を高めることも大切です。要は3ナンバー化が進むほど、5ナンバー車の役割も大切になるというわけです。
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