2020年上半期で一番売れたライズはコンパクトさが支持された
国内販売の総合1位は2017年から一貫してホンダN-BOXだが、小型/普通車は順位が頻繁に入れ替わる。2019年1~12月はトヨタ・プリウスだったが、2020年1~6月はトヨタ・ライズだ。そして直近の2020年7月はトヨタ・ヤリスに変わった。
トヨタ・ライズが爆発的ヒットも喜べない新車セールスマンの複雑な胸中
2020年7月の小型/普通車の登録台数上位5車は、上からヤリス、ライズ、トヨタ・カローラ、トヨタ・ハリアー、ホンダ・フィットだ。1~4位はトヨタが占めた。いずれの車種も2019年9月以降に登場しており、新型車の販売促進効果もあってトヨタ車の好調が目立つ結果に。
また2020年1~7月の販売統計では、トヨタが国内新車市場全体の31%、小型/普通車に限ると48%を占めた。7月だけならトヨタの小型/普通車シェアは51%だ。こうなると販売上位にトヨタ車が並ぶのも納得できる。
そして2020年における小型/普通車月別登録台数1位を振り返ると、1~2月はライズ、3月はカローラ(継続生産のアクシオ&フィールダーなども含む)、4~5月はヤリス、6月はライズ、7月はヤリスであった。1位はすべてトヨタ車だが、車種は頻繁に変わる。
注目度がもっとも高いのはライズだ。人気カテゴリーのコンパクトSUVで、貴重な5ナンバー車だが、エンジンは直列3気筒1リッターターボのみを搭載する。グレードも4種類のみだ。それがコロナ禍の中で、2020年1~7月の1か月平均登録台数が1万台を超えた。
この好調な売れ行きは、日本のユーザーが日本車に対して抱く激しい不満の裏返しだろう。日本のユーザーは「運転しやすい5ナンバーサイズで、価格はおおむね170~200万円に収まり、なおかつデザインや運転感覚の楽しいクルマ」を求めている。それなのにメーカーはこの気持ちを汲み取らず、付加価値優先の儲け主義的な高価格車を押し付けたり、日本を顧みない海外向けの商品をそろえてきた。だからライズに需要が集中したのだ。同じトヨタのSUVでも、RAV4やC-HRの売れ行きは、最近では前年の半数程度まで下がっている。
ヤリスは1リッターエンジン搭載車が好調
このライズと激しい1位争いを展開するヤリスの人気も根強い。全長が4m以内に収まる5ナンバー車で、内装の質を高めた。衝突被害軽減ブレーキは、右折時に直進してくる対向車、横断歩道上の歩行者を検知して作動する。ハイブリッドGのWLTCモード燃費も35.8km/Lと優秀だ。高い関心の寄せられる安全性と、環境/燃費性能に磨きを掛けた。
エンジンは設計の新しい直列3気筒1.5リッターのノーマルタイプとハイブリッドを主力にするが、従来型のヴィッツと同じ1リッターも用意した。1リッターの価格は1.5リッターに比べて15万円ほど安く、もっとも安価なX・Bパッケージは140万円以下だ。1リッターエンジン車は、低価格を重視する法人ユーザー、レンタカー、カーシェアリングなどには使いやすい。さまざまな需要がヤリスを支えている。
トヨタの販売店では「1リッターエンジン車のお客さまは、法人だけではない。一般のお客さまも購入されている。価格が安く、自動車税でも有利(1.5リッターに比べて年額5000円安い)になり、しかもヤリスの安全装備は今の1リッターエンジン車ではもっとも進んでいるからだ」という。つまりヤリスはハイブリッドを含めて3種類のエンジンをそろえ、価格帯の幅が広いことも好調に売れる理由だ。
このほかヤリスの前身となるヴィッツの発売は2010年、アクアも2011年と古い。立体駐車場を使えるコンパクトカーの乗り替え需要が、久々の新型車となるヤリスに集まった影響もある。
2020年5月にトヨタの販売体制が刷新されたことも、ヤリスの販売では有利になった。全国的にトヨタ4系列の全店がトヨタの全車を扱うようになり、ネッツトヨタ店の専売だったヤリスは販売店舗数を大幅に増やした。従来の約1500店舗から4600店舗に急増している。どこのトヨタの販売店でも買えるようになると、人気車は売れ行きをさらに伸ばす。その半面、不人気車は従来以上に売りにくくなる。
以上のようにヤリスは、安心して使える実用的で買い得なコンパクトカーとして人気を高めた。ライズはクルマ好きの気持ちに応える楽しい等身大のSUVとして好調に売れている。
この2車種は、ちょうど夫婦のように、互いに補完しながら国内市場を盛り上げている。そこに今後ヤリスクロスが加わると、どのような相乗効果をもたらすのか。やはり日本のカーライフを元気にするのは、コンパクトなクルマたちだ。ほかのメーカーも頑張って、トヨタが独占する販売上位を切り崩してほしい。
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みんなのコメント
無理して高いハイブリッドを買う絶対的理由があるなら話は別だけど
特別な理由なくて、純ガソリンで間に合うならそれでいい。
ハイブリッドとの価格差と年間の走行距離と燃料の価格で、何年で逆転するのか?
年間の走行距離が1万キロ以下なら、10年では逆転しないから、それならハイブリッドの方が不経済となる。
経済性以外で選ぶなら別だが。