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走るエンジニアを育成する「スバル・ドライビングアカデミー」

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走るエンジニアを育成する「スバル・ドライビングアカデミー」

2016年8月7日、スバルはメディア向けに「スバル・ドライビングアカデミー」の取材会をスバル研究実験センター(SKC)で開催し、その内容を公開した。これはスバルのブランド強化の取り組みの一環として、メディア向けの「テックツアー」の第1回目にもあたる。

テックツアーは、今後も様々なイベントが予定されており、これらのイベントの内容、スバルのクルマ造りの哲学や考えをメディアを通して一般の人々に知ってもらおうという、ブランド・コミュニケーションと位置付けられている。

■スバル・ドライビングアカデミーって何?
ところで今回のテーマである、耳新しい「スバル・ドライビングアカデミー(SDA)」とは何か? これは車両研究実験第一部の藤貫哲郎部長が主導して、2015年秋にスタートを切った社内のドライバー訓練システムの名称だ。ドライバー訓練というと、いわゆる運転テクニックを高めるといった意味に捉えられがちだが、実際の狙いはクルマを考えながら走らせること、つまりクルマの評価能力を向上させるということだ。

スバルを古くから知る人にとっては、操縦安定性を評価・実験する研究実験第四課などが有名だが、藤貫部長は、「スバルには他社のような計測や実験だけを担当するテストドライバーという職種は存在しません。昔からエンジニアが設計し、クルマに乗って実験するシステムが採られてきました」と独自な開発体制であることを語る。

だからスバル・ドライビングアカデミーは限られたテストドライバーやトップガンの育成ではなく、エンジニアのドライビング・スキルの育成が目的だ。もちろんこの背景には、熟練した運転スキル、評価能力を持つエンジニアがいた時代から世代交代しつつあるという社内の事情もありそうだ。

藤貫部長が、走るエンジニアを育成することにこだわるのは、「ドライバーの評価能力を上回るようなクルマは造れない」ということだ。だからより優れたクルマを造るためには、より高い評価能力を持つドライバー=エンジニアが必要という信念があるからだ。

そのため、スバル・ドライビングアカデミーの最終ゴールは、走りに関しての評価能力を持つエンジニアを多数育成することだが、もちろんそれは一朝一夕には不可能だ。現在はドライビングの基本的なスキルを高めることが集中的に行なわれている。運転スキルを高めることで、様々な運転状況の中で冷静にクルマを観察、考察するという次のステップに進むのだ。

ちなみにスバル社内のドライビング・ライセンスは、初級、中級、高速、特殊という4段階があり、スバル・ドライビングアカデミーは中級以上を対象にし、より上のクラスまで引き上げることを狙っている。現状では特殊ライセンスを所持しているのは数名だという。

また1期生ともいえる現在のスバル・ドライビングアカデミーの受講生は、実験部署だけでなく幅広い部署から選抜されている。各部署長の推薦で選抜されているという。

■デモンストレーションと実体験
今回のテックツアーでは、スバル・ドライビングアカデミーの受講生によるデモンストレーション走行と、メディアのための体験走行も行なわれた。使用されるクルマはWRX STIとBRZの2車種だ。これらのクルマには安全装備としてロールケージが組み込まれているが、それ以外はもちろん市販状態と同じ装備状態になっている。

体験走行のメニューとしては、ウエット低ミュー路での定常円旋回、ジムカーナ、高速周回路での140km/h、180km/hでの定速走行、ハードブレーキが選定されていた。ウエットの低ミュー路での定常円旋回では、アクセルの微妙なコントロール、ジムカーナではコーナリング時の効率的な減速や小回り操作を、高速周回路では、一定速度で進路を保つための微小なハンドル修正とアクセルのコントロール、ハード・ブレーキングは、ABSが作動する強いブレーキと、ABSを作動させないブレーキ・コントロールを体験するのが狙いで、スバル・ドライビングアカデミーでも行なわれている基本的なドライビング・メニューである。

今では設計部門はCADにより設計図面を作り、実験部門では超精密な計測が可能になっているが、現在のクルマに求められる付加価値、ドライビングプレジャーなどドライバーの五感に訴える官能性能は、最終的には人間の評価に依存している。

その人間の評価を、工学的な要素に置き換え、設計に還流させることがクルマ造りの基本であるが、スバル・ドライビングアカデミーは一見泥臭く見えるクルマ開発のループをきちんと構築するための意欲的な試みという印象を受けた。


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