ES人気の影響も GSは廃止される
text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
【画像】レクサスGSとES、どう違う? ドイツ御三家の競合とも【比べる】 全129枚
レクサスの販売店によると「GSは2020年6月に受注を終了して、8月頃には生産も終える」という。
GSの終了は、販売店では2018年にESの国内販売を開始した時から話題になっていた。話の発端は現行LSのサイズアップだ。
2017年に発売されたLSは、全長が5235mm、全幅も1900mmと大柄でメルセデス・ベンツSクラスを上まわる。
先代LSのユーザーから「新型に乗り替えたら車庫に入らない」という不満も聞かれ、現行LSは売れ行きが伸び悩む。
発売の翌年となる2018年は、本来なら好調に売れる時期だが、同年後半の登録台数は1か月当たり400~500台と少なかった。
LSの不調もあり、以前は国内で売っていなかったESを2018年に導入した。カムリと共通のプラットフォームを使う前輪駆動のLサイズセダンで、後輪駆動のLS/GS/ISに比べると空間効率が高い。
そのためにESは、全長が4975mm、全幅は1865mmというGSと同等のサイズながら、車内の広さはLS並みだ。後席を重視する法人ユーザーにも対応して人気を高めた。
2019年のESの登録台数は、1か月平均で900~1000台だからレクサスのセダンでは最多販売車種になり、LS/GS/ISは顧客を奪われた。
海外市場もGSの売れ行きが低迷
2019年におけるレクサスセダンの国内登録台数は、ESが1か月平均で900~1000台、LSは300台弱、GSは100台弱、ISは170台前後になる。
レクサスのセダンで堅調に売れる車種はESのみで、それ以外は低調だ。
今のレクサスの主力はSUVで、1か月平均の国内登録台数は、コンパクトなUXが1200~1300台、ミドルサイズのNXは1100~1200台、上級のRXは800台前後。
つまりESは、SUVのUXやNXに次ぐレクサスの大量販売車種になる。
ややサイズの大きなボディに快適な居住空間を備え、全車に直列4気筒2.5Lハイブリッドを搭載する。十分な動力性能を発揮して、WLTCモード燃費は20.6km/L(JC08モード燃費は23.4km/L)と環境性能も良好だ。
そこでほかのセダンの需要を吸収した。
2019年のレクサスの販売台数を世界的に見ると、北米が32万5000台で最も多く、中国は20万2000台、日本は6万2000台だ。最も多い北米では、ESも5万台を超えたが、LSはこの10%程度でGSはさらに少ない。
レクサスセダンの販売は、北米でもESに偏っている。
このような状況だからGSは海外でも廃止される。今後のレクサスセダンは、主力が前輪駆動のESで、後輪駆動は最上級のLS、コンパクトでスポーティなISと個性化を図りラインナップを再構築する。
メルセデスEクラスという存在
レクサスGSのライバル車は、メルセデス・ベンツEクラス、BMW 5シリーズ、アウディA6になる。これらの車種に比べて、GSは存在感が乏しい。
まずメルセデス・ベンツEクラスは、130年以上にわたる同ブランドの伝統を受け継ぐ基幹車種だ。
今のメルセデス・ベンツは、Aクラスなどコンパクトな車種やSUVを膨大にそろえてブランドの性格が曖昧になったが、かつては車種を絞って高級路線を明確に表現していた。
乗用車は今のメルセデス・ベンツEクラスに繋がる標準モデル、上級のSクラス、スポーツカーのSLのみであった。
そして1980年代にCクラスの前身となる190シリーズが登場する前は、Eクラスに繋がる標準モデルがコンパクト・メルセデスと呼ばれて親しまれた。
いわばメルセデス・ベンツEクラスはトヨタのクラウンのような求心力的な存在なのである。Cクラス以上に大切だ。
アウディも今はモデル数を増やしたが、以前はシンプルだった。
1960年代にアウディはフォルクスワーゲンの傘下に入り、1968年に発売されたのが、フォルクスワーゲン&アウディ・グループの最上級車種になるアウディ100だ。
BMWはどうか?
アウディ/BMWとレクサスの違い
アウディ100が今のA6に繋がる。
当時のドイツ車は各ブランドの守備範囲が明確で、今のEクラスに相当するコンパクト・メルセデスと、アウディの上級モデルになる100が同等のサイズだった。
そしてメルセデス・ベンツではこの上にSクラスがあり、アウディは100の下に80(今日のA4)を用意する。アウディ100はブランドを代表する存在だった。
BMWは大雑把にいえば、1960年代のBMW 1500から2002の4気筒シリーズが今の3シリーズに発展する。6気筒の2500や2800が5シリーズに繋がる。
以上のようにメルセデス・ベンツEクラス、アウディA6、BMW 5シリーズは、ブランドを確立する過程で大切な役割を果たした。
対するレクサスは、ブランドの創立自体が1989年と新しい。
初代モデルの発売も、LS(発売当時の日本名はセルシオ)とES(カムリプロミネント)が1989年、GS(アリスト)は1993年、IS(アルテッツァ)は1999年だから全般的に歴史が浅い。
しかもGSは、後輪駆動のLSとISの間に挟まれている。ほぼ同じサイズで前輪駆動のESも高人気だから、レクサスの中にも競争相手が多かった。
しかもEクラス、A6、5シリーズのような歴史もないから販売面で埋もれてしまった。
日本の市場が大切なら、今こそ
現行レクサスLSは、前述の通り日本の使用環境に適さないほどボディを肥大化させ、1か月の売れ行きを300台弱まで低迷させた。
そうなるとレクサスが日本のユーザーを大切に考えるなら、今こそGSの存在感を発揮させるべきだ。
LSと同じプラットフォームを使って、ひとまわりコンパクトな高級スポーツセダンに仕上げる。快適性を重視するユーザーには前輪駆動で広い室内を備えるラグジュアリーなES、走りの優れたパーソナル性を求めるなら4ドアクーペ風のGSと明確なキャラクター分けをおこなう。
このような可能性を秘めたGSを廃止すれば、レクサスのセダンは今後ますます弱体化してしまう。
レクサス販売店への取材によると「ISは2019年の後半から2020年に掛けて改良をおこないます。しかしながら、フルモデルチェンジではなくマイナーチェンジになります」という。
現行ISの登場は2013年だから、改良しても設計の古さは否めない。
このような日本のレクサスにとって、GSの廃止による結果的な損失は大きく、ブランドの確立も一層難しくなりそうだ。
GSの廃止は、レクサスが日本のユーザーを大切に考えていない結果でもある。
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みんなのコメント
デザインの問題だと思うけどね。
基本的に日本人のデザイン嗜好と欧米人のそれはまるで違うから。
日本人の言うとおりに作ってたら売れない。
ドヤ顔でCーHRなんて笑ってしまう。