最近は車のモデルチェンジサイクルが長くなり、次の新型車を投入するまで5、6年。長ければ10年近く同じモデルが売られるケースもある。いっぽう、細かい改良は、1年に1回ペースで行われるなど頻繁化。「細かい改良」と書いたがそれはあくまで「比較的」という話で、走行性能やフロントマスクがガラリと変わったり、魅力的なグレードが追加されるケースも珍しくない。特に近年、そうした「変更」に熱心な傾向が顕著なのが、マツダやスバルだ。
特に根強いファンが多いマツダとスバル。この2メーカーが改良に熱心なのは何か理由がありそうだが……。本企画で探ります。
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文:渡辺陽一郎/写真:編集部
新型登場直前に年次改良をおこなうケースも
最近のマツダやスバルは、年次改良を頻繁に行う。その目的は当然の話だが商品力を着実に高めることだ。安全装備などを常に刷新すれば、ユーザーにとって魅力を高めるから売れゆきも下がりにくい。
特にスバルは以前から、モデル末期の車種にも改良を施している。現行インプレッサは2016年10月に発売されたが、先代インプレッサスポーツハイブリッドは、2015年7月に発売されている。つまり、新型の発売を約1年後に控えた時期にハイブリッドを追加した。
これは、最後まで現行型を大切に売る姿勢として注目される。しかも装備の違いを補正したハイブリッドの実質価格は約14万円と安く、ユーザーメリットの伴う設定だった。
マツダやスバルが頻繁に年次改良をおこなうワケ
これらの年次改良を行う背景にはふたつの事情がある。まずはマツダやスバルが、頻繁な改良をしないと生き残れないことだ。
車種数が少ないために、1車種の売れゆきが国内の収益を大きく左右する。開発を緩めて販売台数を落とすことはできない。
ふたつ目の理由は、車種の数が少ないためにエンジンやプラットフォームの種類もかぎられ、新しい機能や装備を水平展開しやすいことだ。
例えば走行安定性と乗り心地を向上させるマツダの『Gベクタリングコントロール』は、2016年7月の改良でアクセラに搭載された。この機能が同年8月にアテンザ、11月にはデミオとCX-3という具合に、年次改良の機会で搭載車を増やしている。
スバルは2017年7月にレヴォーグの改良を発表して(発売は8月)、『アイサイトツーリングアシスト』を装着した。
これもさほど時間を置かず、インプレッサやWRX S4に採用される。基本は同じシステムだから応用できるのだ。アイサイトツーリングアシストが装着されたインプレッサが欲しいユーザーは、少しの待ち時間で購入できる。
知らぬ間に変わっている!? 頻繁な改良には難しい側面も
しかし、頻繁な改良はすでに購入したユーザーから見ると愉快ではない。購入直後に改良されたら、愛車が古く感じられて魅力が薄れる。これはアイサイトツーリングアシストのような装備だけでなく、足回りの設定などにも当てはまる。
例えばWRX S4は、2015年6月に乗り心地の改善を目的に足回りの設定を変えた。これによりノーマルサスペンションを備えた2.0GTアイサイトは、下り坂で制動を強いられた時などに、後輪の接地性が少し低下した。そこを2017年7月の改良で直している。
開発者は「ノーマルサスペンション装着車は乗り心地に少し振りすぎたので、改めて調整した」という。
また、トヨタの話だが、2017年6月にマイナーチェンジされたハリアーを試乗すると、以前から設定のあった2Lエンジン車やハイブリッドについても足回りの設定が変わっていたのだった。
発売時点ではハンドルを切った時に少し唐突にボディが傾いて安定不足を感じたが、現行型では改良されている。
そのことを開発者に尋ねると、
「今回の改良では足回りに手を入れていない」という。そこで走りに違いがあったことを告げると「実は発売時点では充分に煮詰め切れなかった部分があり、発売後の最初の改良(2015年6月)で手を加えた。ただし、発売直後に購入されたお客様に申し訳ないので発表は控えた」
と返答された。この開発者は頻繁な改良は商品力を高く保つうえで不可欠だが、すでに購入したユーザーには辛く受け取られることを認識していた。
多くのユーザーが満足するために「2年間は改良不要に」
好ましいのは入念な開発を行って万全な状態で発売することだ。そして少なくとも2年間は改良をせずにすむようにする。この開発を確立すれば、唐突な改良もなくユーザーの心証を害さない。
ちなみに、昭和時代の日本車では、排出ガス規制の対応に追われた時期を除くと、フルモデルチェンジは4年ごと、その間にマイナーチェンジを挟むサイクルが定着していた。
ユーザーや販売店もそれを知っていたから、新車を買おうとした時に適切な購入時期を選べた。この話題にかぎらず、昔の商品開発や売り方から学ぶべきことは多いと思う。
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