新型スバル「レヴォーグ」のプロトタイプに小川フミオが試乗した。印象はいかに?
なぜワゴン?
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スポーツワゴンというのはいいものだ。ひとことでいうと、速くてベンリ。高性能で高価格なモデルが多いので、おとなむけの乗りものかもしれない。日本での代表選手はスバル「レヴォーグ」。まもなくフルモデルチェンジを迎える。新型のプロトタイプに試乗する機会があった。
プロトタイプでは、美点がさらに磨かれている印象だ。価格もアウディ「RS4」のように高価でないから、比較的多くのひとが、新型のスポーツワゴンを楽しめるはず。
SUVにもいいところはいろいろあるものの、重心位置や、サスペンションストロークなど、ステーションワゴンが走行性能面で勝っている点は多い。この車型にこだわるのは、たんに感傷的だからではない、ちゃんと故あることなのだ。そう納得するのに十分な内容を新型レヴォーグは有していた。
新型レヴォーグは、新しいエンジンの搭載によって動的性能が向上したのが特徴のひとつ。もうひとつは、ステレオカメラをメインにしたスバルならではの先進安全技術「アイサイト」がさらに機能向上して「アイサイトX(エックス)」になったのも注目点だ。
新エンジン
クローズドのコース(路面はきれいに整備されている)を走ったかぎりであるものの、乗り心地がよく、加速性とブレーキ性能が現行モデルよりぐんとよくなっている。新型のプロトタイプを、現行モデルと、バックトゥバック(その場で乗り換え)で試乗してみて”進化”ぶりに感心した。
1795ccの水平対向4気筒ガソリンターボ・エンジンは、今度のレヴォーグで初めて採用されるパワーユニットだ。ターボチャージャーを備えて、130kW(177ps)の最高出力と、300Nmの最大トルクを発生。現行モデルの1599ccエンジンと1998ccエンジンは、こちらに1本化される。
発進時も加速時もパワーの出かたは力強い。アクセルペダルの踏み込みへの反応も、これまでの1.6リッターターボ車と比較すると、あきらかによくなっている。「このクルマに乗る人はターボバン(ターボチャージャーが効いたときの強い加速感)が好きですね」と、開発を指揮したスバルの五島賢さんが現場で言っていた。ねらいどおりの仕上がりだろう。
無段変速機を使ったリニアトロニック変速機は、約8割の部品が新設計。海外ではデビュー済みであるものの、日本ではこんどのレヴォーグで初搭載になる。
ドライバーによるアクセラレーターの踏み込み量など、パラメーターを細かく設定したというが、たしかに試乗車は、繊細な感覚で加速と減速をおこなってくれた。力強い加速が欲しいと思いながら加速すると、もたつかず、即座にトルクがたっぷり得られる回転数をキープしてくれる。ナチュラルで気持ちよい。上手なセッティングだ。
それでいて、燃費は、1.6リッターユニットより向上しているそうだ。メーカー発表値をみると、リッターあたり16.0km(JC08)だったものが、16.6km(同)になるという。エンジンのリーン燃焼技術と、さきの新型変速機の新しいメカニズムの恩恵だそう。
新型はさらにいい
「ボディのフレームも、走りの質をよくするために見直した」と、スバルは述べる。ひとつは「フルインナーフレーム構造」と名付けられた設計で、骨格部分を組み立ててから外板パネルを溶接する新工法だ。これによりボディのねじり剛性は現行モデルより44%向上したという。
電動パワーステアリングも新設計だ。スバル初という2ピニオン式。ステアリング・ホイール操作軸とモーターアシスト軸を別体化したのが特徴だ。「メリットは操舵時のフリクションが低減される点です」と、技術者が説明した。ダイレクトで自然な操舵感を追求したそうだ。
試乗では、約80km/hの速度でのレーンチェンジのあと、一瞬ブレーキで減速して、70km/hでコーナーをまわっていき、出口からは加速してパイロンスラロームするというコースが作られていた。
乗ったのがスポーティなSTI Sportだったせいもあるだろう。ボディのロールは抑えられ、加速も減速も反応がとてもよい。操舵感覚もスバルのねらいどおりで、ドライバーと車両との一体感がしっかりある。現行モデルもよく出来ていると思ったものの、新型のプロトタイプは、さらによい、とここでも強く感じた。
サスペンションシステムは、ストロークを伸ばして乗り心地を向上させている。好ましい考えだ。
縦型の大モニター
モデルライナップ頂点の「STI Sport」では、新しい設計の電子制御ダンパーと、操舵力可変電動パワーステアリングを採用しているのも見どころだ。ドライブモードは、今回から「スポーツ」「スポーツ+」「ノーマル」「コンフォート」へと変わった。
スポーツ+では弾けるように走る。操舵に対して、即座に反応する操縦性は、レヴォーグへの期待に応えてくれるはずだ。
いっぽう、ノーマルあるいはコンフォートでも、試乗コースではダンピングに不満もなく、一般道ではこれでも十分と感じた。
インテリアではスバルの新世代デジタルコクピットなるデザインが採用されている。センターダッシュボードには、国内で売られるスバル車初の11.6インチ縦型モニター(米国では2019年のアウトバックで採用)が備わる。くわえてドライバー正面の計器も12.3インチの液晶だ。
新しいレヴォーグでは、前述のとおり「アイサイト」が新世代の「アイサイトX」になる。ステレオカメラの性能が向上し、かつレーダーセンサーが組み合わされることで、プリクラッシュブレーキの作動領域などが拡大したほか、状況に応じハンズオフ走行も出来るようになった。アイサイトXについては、別の記事で詳細をリポートする。
日本専売モデル
スバルはSUVばやりの世のなかでも、ステーションワゴンにこだわってくれている。「レガシィアウトバック」そして「レヴォーグ」である。
レヴォーグの熱心なファンは、あまり大きくモデルチェンジするのを好まないらしく、というか、レヴォーグに求めるものがはっきりしているようだ。そこで、今回もスタイリングはどちからというとキープコンセプト。シンボルともいえる、ボンネット上のエアスクープも継承されている。
それでも現行モデルより、レンズの上下幅が狭くなったり、ボディのラインや面のつくりに手が入れられたりして、シャープな印象が強くなっている。
ベースは、2017年に制作されて翌2018年のジュネーブ自動車ショーでお披露目された「VIXIV(ビジブ)ツアラーコンセプト」。「あの雰囲気を使いやすいサイズに落とし込みました」。デザインを担当したデザイン部の中村真一主査は言う。
新型は日本専用モデルになるそうだ。日本の景色をボディに映し出したとき、どんなふうに見えるか……今から、楽しみだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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