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どこまでも優しく、柔らかく、美しい線と面。マセラティが造った全く新しいスポーツカー「MC20」が語るもの

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どこまでも優しく、柔らかく、美しい線と面。マセラティが造った全く新しいスポーツカー「MC20」が語るもの

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 コロナ禍で世界中の自動車メーカーが新車の発表をオンラインで行うようになってしまった。イタリアのマセラティも、満を持して開発した次世代のスーパースポーツ「MC20」を9月10日に本拠地モデナから世界へ向けて発信した。

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「MC20」は、マセラティがまったく新たに造り出すスーパースポーツだ。MCは、マセラティのモータースポーツ部門「Maserati Corse」マセラティ・コルセの頭文字で、20は、ブランドの新時代の幕開けの年であると規定された2020年を表している。20年ぶりに新開発されたマセラティオリジナルの「ネットゥーノ」エンジンをミッドに搭載する2人乗り。これまでは、フェラーリ製エンジンを用いていた。



 シャシーはカーボンファイバーと複合素材によって構成され、1500kg以下という車両重量を実現している。それによって、パワーウェイトレシオは2.33kg/psとなり、ハイパフォーマンスを引き出している。2022年にはフルバッテリーEVのローンチも予定され、その前後にはカブリオレなども発表されることが決まっている。複数のボディタイプやパワートレインに対応したシャシー構造となっている。

 ドアは、多くのライバルたちと同じように斜め前方に跳ね上げられて開く。インターネットのライブ中継を見ていると、MC20がどんなクルマなのか少しづつわかってきた。3.0リッターの排気量を持つV6エンジンでツインターボ過給され、最高出力630ps、最大トルク730Nmを発生する。MTC(マセラティ・ツインコンコンバスチョン)という新開発の燃焼システムを有している。それによって、0-100km/h加速は2.9秒以下、最高速度は325km/h以上という超高性能を実現している。



どこまでも優しく、柔らかく、美しい線と面

 発表会イベントは、マセラティの伝統を振り返りながら、ダンスパフォーマンスやDJプレイなどで盛り上げられた、見応えのある素晴らしいものだった。眠い眼を擦りながら、遅くまで起きていた甲斐があった。と、ほとんどの場合はそこで落着するのだが、マセラティの場合は違った。実車が披露されたのである。

翌11日に、原宿駅前のイベントスペースで「MC20」の実物がやって来ていたのだ。コロナ禍による少人数のメディアへの発表だったが、間違いなく実物だった。ただ、内部パーツが入っていないエンジンが搭載されたディスプレイ専用モデルだったとはいえ、他はすべて実物だ。東京とニューヨークの2都市だけにモデナから送られたものだそうだ。

 実際の「MC20」は、昨晩というか今朝方インターネット経由で見たものより、当然のようにリアリティがある。モニター画面越しに見ていた時にはサイズ感がつかめなかったが、実物でそんなことはない。実物を前にした強く感じたのは、スーパースポーツにしては例外的にエレガントでクリーンなスタイルを「MC20」は持っているということだった。

 ボディサイズは、全長4669x全幅1965x全高1221(ミリ)と小さくはないのだが、あまり大きく見えないのはクリーンな線と面で形作られているからだろう。会場に展示されていたイエローのボディにブラックのトップとダークグレーのアンダーボディのカラーコンビネーションではひときわ引き締まって見えていた。他に、白、赤、青、グレーなどのボディカラーが標準設定されているが、色によっても違った表情を表しそうな感じだ。

 最近のスーパースポーツでは、エアインテークの開口部やフェンダーの縁、エアロパーツ、ヘッドライトの形状などに大仰で角張った造形が施されている場合が多い。超高性能を実現するために、空力特性をギリギリまで追求した結果なのだけれども、「MC20」にはそうした部分がほとんど見受けられない。線と面、それらの繋がり方はどこまでも優しく柔らかく、美しい。

100年以上の伝統を物語る秀逸なデザイン

 また、クルマ全体を斜め前から眺めると、大きく開いたフロントグリルが魚がエサを食べる時のように見えてしまうことがあるけれども、そのまま真横方向に角度をズラしていくとフロントフェンダーが降下していく線とピタリと重なり、フロントフェンダーは後方に向けてなだらかに曲線を描きながらリアフェンダーへとつながっていくことが判明する。中央にトライデントのエンブレムを戴きながら大きく開いたフロントグリルはマセラティの戦前や戦後のレーシングカーへのオマージュを表現していて、ただ速く造っただけではないところが100年以上の伝統を雄弁に物語っている。

 いずれにしても、“これでもか、これでもか”と己の存在感を目一杯に示せるだけ示そうとするのが現代のスーパースポーツの流儀となってしまっているが、マセラティは一線を引いているのがさすがだ。空力特性の追求とせめぎ合わせながらも、あくまでも抑え気味に、エレガンスと造形美を追い求めている。大人である。「MC20」は2020年末に生産が開始され、日本国内での定価は2650万円(消費税込み)と発表されている。このクルマに乗れる日が来ることを強く願うばかりだ。



◆関連情報
https://www.maserati.com/jp/ja/models/mc20

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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みんなのコメント

1件
  • この手の車もキチンと排気騒音試験をしろよ
    抜け道的にすり抜けさせてはいけない
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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