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和製SUVの先駆者は今──三菱 パジェロ試乗記

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和製SUVの先駆者は今──三菱 パジェロ試乗記

最近、1990年前後の“バブル期”を振り返るのが流行している感がある。そうしたなか、当時のクルマとして思い出されるのは三菱自動車の「パジェロ」である。

初代は1982年に登場し、2代目とともに一世を風靡した。いまは4代目。頑張ってきたが、ついに2019年4月、最終モデル「ファイナルエディション」が700台限定で発売となった。日本市場での販売は、このモデルをもって終了になる。

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ファイナルエディションは、3200ccの巨大な直列4気筒DOHCディーゼルターボ・エンジンを搭載したモデルで、ベースグレードは「エクシード」だ。それに、特別装備として、本革シート(フロントは電動調節式)、ブラックルーフレール、大型サンルーフ、リアディフロックを装着する。なお、ファイナルエディションにガソリン・エンジン車の設定はない。

試乗すると、なかなか味のあるクルマだった。力強いエンジンと、意外なほど快適な乗り心地、そして静粛性の高い室内……SUVとクロカン4WDの中間的なキャラクターにあふれた操舵感覚も魅力だった。

エンジンは直噴コモンレール式で、インタークーラー付ターボチャージャーを組み合わせている。数値をみると、441Nmの最大トルクが2000rpmで発生する設定だ。加速は力強くて、走りはスムーズだった。そして、全長4900mm、車両重量2.2t超にもかかわらず、意外なほど軽快に走るのもおどろきだった。

くわえて、居住性も良好だった。快適装備こそ、最新モデルに及ばないものの、広々とした室内は、居心地がよい。くわえて、開口部の広いサンルーフも魅力だった。ただし、スタイリングは馴染めなかった。良くも悪くも、初代パジェロに引っ張られている感が拭えない。1980年代の韓国車を見るような気さえしてしまった。

パジェロは全グレード4WDだ。「スーパーセレクト4WDII」なる副変速機つきのパートタイム4WDシステムを搭載する。通常は後輪駆動で走り、雪道などではセンターディファレンシャルにビスカスカプリングを使ったフルタイム4WDモードが選べる。また、とんでもない悪路は、センターディフロックを使う直結4WD(ハイとローの切り換え式)で走れる。

今回試せたのは、後輪駆動モードとトルク可変のフルタイム4WDモードのふたつ。その印象は、良い意味で悪路を得意とするクルマというかんじとは無縁だった。おそらく、気筒あたり800ccもある巨大な直列4気筒ディーゼルターボ・エンジンであるにもかかわらず、不快な振動が室内に伝わってこなかったからかもしれない。

また、操舵性やレーンチェンジなどの操縦安定性については、パワフルなエンジンとのバランスが上手にとられていた。パジェロは、「ラダーフレームビルトインモノコック」という独特のシャシーを使い、かつサスペンションシステムは前後とも独立懸架式だ。それによる乗り味はまさに、クロカン4WDとモノコックボディSUVとの中間的なものであった。

私自身は、ラダーフレーム型4WDの乗り味が好きだ。ゆっさゆっさと揺れはするものの、路面からの突き上げがきつくなく、ステアリングホイールを抱えて、馬ならぬクルマを御して走る感覚が好みであるが、パジェロもそんな楽しみを少し味わわせてくれた。

また、ホイールサイズが18インチというのも常識的で好ましい。コーナーをせめるようなクルマでないし。乗員の快適性を考えれば、径は小さく&タイヤの扁平率が高いにこしたことはない。また、マッド&スノータイヤが標準であるが、路面からの情報はしっかり伝わってくるのも好ましい。

ひとつだけ慣れなかったのは、ステアリングホイールを切り込んだときである。うっかりしていると、意図しているより車両が外側にふくらんでしまう。また、小さなコーナーでは一所懸命、ステアリングホイールをまわさなくてはならない。

燃費は、メーカー公表値のJC08モードで10km/L。実燃費はもうすこし低くなるかんじだった。ディーゼルエンジン車としてはそれほどよくない。とはいえ、燃料は軽油だから、ランニングコストは抑えられる。

なにはともあれ、いったん日本の“パジェロ伝説”に終止符が打たれるのは寂しい。振り返れば、1980年代から1990年代にかけてパリ・ダカールラリーを舞台に大活躍したモデルだったのだから。

パジェロは、1983年にパリ・ダカールラリー初参戦し、いきなり「市販車無改造T1クラス」でクラス優勝(総合順位11位)した実力車だった。その後も、1985年、1992年、1993年は総合優勝をものにし、さらに、1997年は篠塚建次郎氏が日本人ドライバーとして初めて総合優勝した。そして、2002年と2003年には増岡浩氏が総合優勝の栄冠を勝ち取っている。

1987年にはユーミン(松任谷由実)も、「ユーミン・マリクレール号」と呼んだパジェロで、パリ・ダカールラリーに参戦したのだ。

過去を懐かしめば懐かしむほど、不思議とパジェロが魅力的に映る。そんなパジェロの終売を惜しんで、「ファイナルエディション」を買うのもアリだ。

現行モデルは2006年登場と、すでに13年前のクルマかもしれないが、魅力はたっぷりある。また、最長10年10万キロ保証もついてくるから、長くパジェロとの生活が送れる。

クルーズ・コントロールにアダプティブ機能はないし、7名乗車でもUSBポートがひとつしかないなど、現代のクルマとして見ると少々古い部分は目立つかもしれない。

しかし、そんな古さも、今となっては“味”みたいなものに感じる。今のクルマでは得られない古き良き“味”だ。もし、「この味がいい!」と、思うのであれば、今すぐ購入すべきだろう。たった700台の限定モデルなのだから。

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