3月16日、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで、2024年IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦『モービル1・セブリング12時間』の決勝レースが行われ、ウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティの40号車アキュラARX-06(ジョーダン・テイラー/ルイ・デレトラズ/コルトン・ハータ組)が総合優勝を飾った。
最高峰カテゴリーのGTPをはじめLMP2、GTDプロ、GTDの4クラスに合計58台がエントリーした今季のセブリング12時間。同イベントは昨年までWEC世界耐久選手権と併催の『スーパー・セブリング』として開催されていたが、WECがカタール開幕へとカレンダーを変更した影響により今年はIMSAの単独イベントとして行われている。
レクサス含む4台がゴールドの特別カラーで出走。“ブラッド・ピットF1映画撮影車”も変更に/セブリング12時間
前戦デイトナ24時間と同じくシリーズ内の耐久カップ“ミシュラン・エンデュランス・カップ”の一戦でもある伝統のレースは、現地16日・土曜9時40分にスタートが切られた。スタート直後のターン1出口にて他車と接触した62号車フェラーリ296 GT3(リシ・コンペティツィオーネ)がスピンを喫し、あわや多重クラッシュというシーンがあったが、幸いにも大事には至らず。しかし、オリバー・ジャービス駆る9号車マクラーレン720S GT3エボ2(パフ・モータースポーツ)はスピンしたフェラーリを避けるために他車と接触したことでダメージを負い、30分近い修復作業を余儀なくされた。
一方、クリーンスタートとなったGTPクラスでは、前日の予選でフロントロウを独占した31号車(ウェーレン・キャデラック・レーシング)と01号車(キャデラック・レーシング)2台のキャデラックVシリーズ.Rが順位を維持したままレースを牽引していく。3番手には5番手スタートから順位を上げた7号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)がつけた。
上位争いは1時間目の終盤に動きがあり、デブリ回収のために導入されたFCY(フルコース・イエロー・コーション=IMSAではセーフティカーが入る)中のピットストップで40号車アキュラ(WTR・ウィズ・アンドレッティ)が2番手に浮上。01号車は3番手に。しかしセバスチャン・ブルデー駆る“ゴールドのキャデラック”は、リスタート直後のターン1でライバルをかわし2番手の座を取り返す。さらにブルデーは2時間目に入ってまもなく今度は首位を走るピポ・デラーニの31号車キャデラックもターン1で攻略してトップに浮上した。
2台のキャデラックはその後も接近戦を続け、2時間目の終わりには01号車よりも1周ピットストップを引っ張った31号車がライバルの前でコースインする。だが、タイヤが冷えている赤いVシリーズ.Rを、スコット・ディクソン駆る黄金のマシンがサイド・バイ・サイドのバトルを経て攻略。01号車キャデラックがふたたび首位に立ち3時間目に入る。この後ろでは2度目のピット作業後10号車アキュラARX-06(WTR・ウィズ・アンドレッティ)が3番手に浮上。直後に姉妹車40号車が続くが、24号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームRLL)が2度目のFCY明けにこれをかわして4番手に順位を上げた。
3時間目の終盤、みたびのFCYでほとんどのGTPチームが3回目のピットインを行うなか、デイトナ勝者の7号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)がキャデラック勢の前に出る。4時間目のリスタートでもトップを死守した7号車だったが、ペースに勝るライバルは15分ほどの間に相次いで7号車ポルシェを攻略。これでジャック・エイトケン駆る31号車キャデラックが首位、同門の01号車が2番手となった。その31号車キャデラックはスタートから4時間が経過する直前に入ったFCYの前後に、計3回のピットインを行った影響でポジションを失う。一方、4度目のコーションが出るのを見越してピット作業を行った25号車BMWと10号車アキュラ、さらに7号車ポルシェが順位を上げ、FCY中にピットインし4番手となった01号車キャデラックの前に出ることに成功している。直後のリスタートではフィリペ・アルバカーキ駆る10号車アキュラが、ターン1で25号車BMWのインを突きトップを奪った。
その後10号車アキュラがレースをリードする展開となるなか、スタートから6時間が経過するレースの折り返しは31号車キャデラックがトップで通過。2番手に10号車、3番手に5号車ポルシェ963(プロトン・コンペティション)が続いた。
直後の7時間目、デラーニがドライブする首位31号車キャデラックが、ミゲル・モリーナ駆る21号車フェラーリ296 GT3(AFコルセ)と接触し、ターン10のタイヤバリアに激しくクラッシュした。この事故で31号車は横転したが幸いデラーニに怪我はなかった。中盤から終盤にかかる9時間目にも上位車に関係するアクシデントが発生。最終コーナーで66号車アキュラNSX GT3とフレデリック・マコウィッキの6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)が接触し、NSXがアウト側のタイヤバリアに刺さってしまった。ドライブしていたキャサリン・レッグに怪我はなかったが66号車はリタイアに。また3番手につけていた6号車ポルシェは時間差で左リヤタイヤがバーストし、この対応のため1ラップダウンとなっている。
陽が落ちたレース終盤、01号車キャデラックと7号車ポルシェ、オフシークエンス組トップの40号車アキュラと25号車BMWがそれぞれ僅差で争うなか、ターン16のデブリを取り除くため、残り時間が100分を切ったところで今レース9回目のFCYが入る。直後のピットオープンでGTP上位勢は一斉にピットインし、給油のみの01号車キャデラック、7号車ポルシェ、フルサービスを行った40号車アキュラ、25号車BMWの順でコースに戻った。さらにラップダウンとなっていた10号車アキュラと63号車ランボルギーニSC63(ランボルギーニ・アイアン・リンクス)もリードラップに復帰したため上位8台が同一周回となる。
■ブルデーとデレトラズの一騎打ちとなった最後の“スプリント”
チェッカーまで残り60分のタイミングでリスタート。そこから約10分後、デレトラズ駆る40号車アキュラが、最終コーナーで前を走る7号車ポルシェに仕掛けて2番手に浮上し、首位を行く01号車キャデラックに接近していく。直後、55号車フォード・マスタング(プロトン・コンペティション)がターン9でストップしたため10回目のFCYが導入された。残り40分でリスタートが切られるも、ターン15に置き去りにされたボディパーツを回収するため5分後にふたたびFCYが入りレースはラスト23分のスプリントに。
逃げるブルデーと僅差で追うデレトラズ。その差は1秒以内だ。3番手に下がった7号車ポルシェはじりじりと離され、残り15分の段階でトップ2から約5秒差に。レース残り10分、優勝争いはさらに激しさを増しトラフィックが絡むなかラスト6分を切ったところでついに、40号車アキュラのデレトラズが01号車キャデラックのオーバーテイクに成功する。再逆転のために食らいついていきたいブルデーだったがその余力はなく、無常にも徐々にライバルの背中が遠のいていく。その数分後、40号車アキュラが花火とともに333周目にトップチェッカーを受け、12時間におよんだ長丁場のレースを締めくくった。
レース序盤から幾度もレースを牽引した01号車キャデラックは0.891秒およばず総合2位、トップと8.8秒の同3位に7号車ポルシェが入った。4位以下は25号車BMW、10号車アキュラ、24号車BMWと続き、このレースが北米デビュー戦となった63号車ランボルギーニがトップと同一周回の総合7位で入賞を果たした。総合8位は5号車ポルシェ、6号車ポルシェは2周遅れ同9位での完走となっている。
LMP2クラスでは、ポールシッターの99号車オレカ07・ギブソン(AOレーシング)と、2号車/22号車オレカ07の2台体体制で参戦するユナイテッド・オートスポーツがレース序盤の主導権を争った。中盤以降は11号車オレカ07(TDSレーシング)や18号車オレカ07(Eraモータースポーツ)が台頭。終盤にはタイヤのパンクやピット作業違反のペナルティなどで後れを取っていた04号車オレカ07(クラウドストライク・レーシング・バイ・APR)もトップ3に割って入ってきたが、同車は最終盤のスピンによりクラス後方に沈む。
一方、虎視眈々の走りでラスト1時間を切ってクラストップに浮上したEra18号車はこの機を逃さず。TDS11号車の追撃を1.127秒差で振り切り、第1戦デイトナ24時間レースに続く開幕2連勝を達成した。クラス3位はユナイテッド・オートスポーツ22号車だ。
■わずか0.121秒差のフォトフィニッシュ
FIA GT3車両が用いられるGTDプロ/GTDクラスは、バッサー・サリバンが走らせる14号車/12号車レクサスRC F GT3が両クラスのリーダーとして序盤戦を牽引。しかしGTDプロのポールシッターであった14号車レクサスは、最初のピットストップで同チームのクルーとピットアウトしようとしたマシンが接触するアクシデントがあり、これがドライブスルー・ペナルティの対象に。後れを取ったレクサスに代わって昨季2023年のGTD王者1号車BMW M4 GT3(ポール・ミラー・レーシング)がトップに立つも、2度目のピットストップ後には64号車フォード・マスタングGT3(フォード・マルチマチック・モータースポーツ)がクラス首位に浮上。僅差で1号車BMW、3号車シボレー・コルベットZ06 GT3.R(コルベット・レーシング・バイ・プラット・ミラー・モータースポーツ)が続く展開となる。
その後もスティントごとにトップが入れ替わっていくなか、14号車レクサスは残り2時間の段階でふたたびGTDプロクラスの首位に返り咲く。終盤、立て続けにFCYが導入されるなか62号車フェラーリ296 GT3(リシ・コンペティツィオーネ)にポジションを奪われたが、10回目のリスタート時に王者ジャック・ホークスワースが296 GT3を攻略。最後はダニエル・セラの62号車フェラーリが意地を見せるも、チャンピオンカーであるレクサスが0.121秒早くフィニッシュラインを通過し今季初優勝を決めた。
クラス3位表彰台は19号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2(アイアン・リンク)が獲得した。直前まで3番手を走っていた3号車コルベットは、表彰台をかけて順位争っていた77号車ポルシェ911 GT3 R(AOレーシング)との接触によってコース上にストップしたままレースを終え、“レクシー”こと恐竜カラーのポルシェはドライブスルー・ペナルティを受けてクラス9位に沈んだ。
GTDクラスでは前戦の勝者である57号車メルセデスAMG GT3(ウインワード・レーシング)が強さを発揮。3時間目から5時間目にかけてクラスリーダーとなった同車はレースの折返しでもトップに立ち、その後やや順位を落とすも終盤にふたたびクラスの牽引役を引き受けると、最後は0.646秒の僅差で47号車フェラーリ296 GT3(チェティラー・レーシング)を引き連れてトップチェッカー。LMP2クラスのEraと同じく開幕2連勝を飾った。クラス3位には、ブラッド・ピット主演のF1映画撮影用リバリーをまとったデイトナ戦とは異なる装いで今戦に臨んだ120号車ポルシェ911 GT3 R(ライト・モータースポーツ)が入っている。
フロリダ半島での耐久2連戦“フロリダ36時間”を終えたIMSAウェザーテック選手権の次戦は『アキュラ・グランプリ・オブ・ロング・ビーチ』だ。GTPとGTDの2クラスのみが参加するこの第3戦は4月19~20日にロングビーチ市街地コースで行われる。レースフォーマットは100分のスプリントだ。
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