アクセルを踏み込んだ瞬間に性格豹変!
街乗り領域では扱いやすさ全開のマイルド特性
S660の発売当初から積極的にパワーチューンを展開してきた名門“トップフューエル”。数々のハイチューン仕様を数多く手掛けてきた同ショップだが、そのノウハウもついに完熟の域に到達。街乗りメインのユーザーカーでも、200psクラスの仕様が増えてきたというのだ。
ここで紹介する純白のS660は、まさにその好例だ。トップフューエルの高い技術力と豊富なノウハウを駆使することで、完全なストリートスペックながら実測210.4ps/21.4kgmと、純正の3倍近い出力を常用発揮させているのである。
エンジンの詳細を見ていく。オープンデッキタイプのウォータージャケットを持つS07Aのアルミシリンダーブロックは強度面で不安があるため、ピン補強(オープンジャケット部に等間隔でピンを打つ加工)を施してセミクローズド化。こうして、高まった爆発力に対するシリンダーの振れを抑えるわけだ。
エンジン内部に組まれたパーツも全てトップフューエルオリジナル品だ。ピストンは純正ボアの高強度設計。フルフロー対応(要コンロッド小端穴加工)で、表面にはWPC加工が施された逸品だ。コンロッドはSNCM総削り出しのI断面で、小端部はフルフロー仕様(ベリリウムブッシュ)。コンロッドボルトは8mmにサイズアップしている。これにより、200psを許容するスペックを作り出したのだ。
一方のヘッドは、燃焼室マシニング加工仕様となる。スキッシュを削ったフルサークル形状にすると同時に、容積を約1.56cc拡大。ハイブースト対応の高効率燃焼室をマシニングで作るメニューだ。大型タービンの性能を引き出すには不可欠なメニューとなるだろう。
タービンはギャレットのアクチュエーター式GBC14を選択。排気ハウジングが大きめのタービンではあるが、ピックアップが鋭敏すぎず乗りやすさまで考慮したチョイスとのこと。制御はHKSのフラッシュエディター+EVC7のコンビだ。
その他、インテーク側にはビーレーシングの大容量サージタンクを投入し、エキゾースト側はHKSのメタルキャタライザーとスプーンのN1マフラーで完全合法の環境を構築。一方の冷却系は、ラジエターとオイルクーラーがトップフューエル製、インタークーラーがHKSの水冷式となる。
足回りはブリッツのZZ-R車高調を軸にセットアップ。ブレーキは、増大したパワーを受け止めるためにウィルウッド製キャリパーを投入。ホイール&タイヤは、アドバンレーシングRG-D2とポテンザRE71-RSの組み合わせだ。
レッドのレカロRS-Gが映えるストリート然としたインテリア。駆動系はORC強化クラッチ→クスコ機械式LSD→トップフューエル製5.4ファイナルという構成。ミッション自体は純正だ。
気になるその走りだが、街乗りでブーストが上がりきらない回転域では非常に穏やか。ビッグタービン特有のもたつきも無く、アクセル開度に合わせて自然にパワーが追従してくるフィーリングだ。
しかしながら、ひとたびアクセルペダルを強く踏み込めば、ブースト計の針が踊るように跳ね上がって怒涛のパワーが襲いかかってくる。恐ろしいほど速い。完全に“ジキルとハイド”だ。
「一般的に軽自動車の200psというと、ハードルが高いイメージかもしれません。しかし、トップフューエルではすでに多くのお客様にこのメニューを提供してきました。国際サーキットなどでテストを繰り返し、トラブルも完全に克服しているので、安心してハイパワーを楽しめますよ」とは、トップフューエル森本メカ。
ちなみに、200ps仕様というのはエンジンの限界点ではなく、駆動系の強度限界を前提にした一つのボーダーラインとのこと。爆発的な推進力を求めるS660乗りは、一度トップフューエルに問い合わせてみてはいかがだろうか。
●取材協力:トップフューエル 三重県松阪市中道町500-1 TEL:0598-56-5880
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MAX負荷時に僅かな時間だけだから、持つんだろ