ヴェルシス1000SE「フル電子制御の1000cc並列4気筒アドベンチャー」
Z1000/ニンジャ1000系の1043cc並列4気筒エンジンを搭載するカワサキの大型アドベンチャーツアラー「ヴェルシス1000 SE」が2021年型としてモデルチェンジ。7月16日から199万1000円で発売されます。
【画像18点】カワサキ新型ヴェルシス1000SEを従来型やライバル車と徹底比較!
これまでも、電子制御サスペンションを装備した「ヴェルシス1000SE」というモデルはありましたが、2021年型ヴェルシス1000SEでは「スカイフックテクノロジー」を利用したショーワ製の最新セミアクティブサスペンションにアップグレード!
従来モデルよりもさらに洗練されたアルゴリズムを持つシステムの採用によって、その乗り味はさらに進化していると考えられます。
当記事では新採用されたサスペンションのテクノロジーを中心に、新型ヴェルシス1000SEの機能や特徴、そしてライバル車を含めて多角的に検証していきます。
新型カワサキ ヴェルシス1000SEのエンジン「性能数値は従来モデル同様」
排気量1043ccの水冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンは従来モデルから継承で、圧縮比は10.3、最高出力88kW(120ps)/9000rpm、最大トルク102Nm(10.4kgm)/7500rpmという数値も従来モデルとまったく同じです。
ただ、ヨーロッパで現在施行されている最新環境規制「ユーロ5」に対応していることから、スペックには出ない範囲でエンジンマネージメントには何らかのアップデートが施されていると推測されます。
新型カワサキ ヴェルシス1000SEのデザイン「ライムグリーン復活!」
2021年型ヴェルシス1000SEのデザインは従来モデルと同様で、カウルをはじめとする外装パーツに変更はありませんが、カラーリングについては大きく変更されました。
従来モデルの初登場は2019年型で、そのときに設定された車体色は「エメラルドブレイズドグリーン×パールストームグレー」でしたが、2020年型では「メタリックカーボングレー×メタリックスパークブラック」でモノトーンカラーに。
しかし、2021年型ではカワサキと言えば……のライムグリーンが復活!「エメラルドブレイズドグリーン×メタリックディアブロブラック」というカラーが採用されています。
スカイフックテクノロジーに基づいた最新世代のSHOWA製電子制御サスペンション
2021年型ヴェルシス1000SE最大のハイライトは、前後のサスペンションにSHOWA製の「スカイフックテクノロジー」を採用したセミアクティブサスペンションを採用したことでしょう。
従来モデルのヴェルシス1000SE、ニンジャH2 SX SE、ニンジャZX-10R SE(現在はラインアップ落ち)でも、カワサキとSHOWAが共同開発した独自のセミアクティブサスペンションシステム「KECS:Kawasaki Electronic Control Suspension(カワサキ・エレクトロニック・コントロール・サスペンション)」が採用されていました。
このシステムはソレノイドバルブ(電磁弁)とダイレクト式バルブ構造を持つサスペンションユニットが、車速や前後サスペンションのストロークスピードに合わせて減衰力を自動的に調整するものです。
0.001秒という反応速度によってステップモーター等を用いたそれまでの弁駆動よりも、さらにリニアにサスペンション制御を実現していました。
それに加え、今回ヴェルシス1000SEの電子制御サスペンションに、SHOWAが量産市販車用として初投入したのが「スカイフックテクノロジー」です。
このスカイフックテクノロジーとは何なのでしょうか。
刻々と変化する路面からの入力に対して、瞬時に最適な減衰力を生み出して安定した走りを生み出すものが電子制御サスペンション。実は、その基本的な理論として確立されているものがスカイフック理論(アルゴリズム)です。
スカイフックとは「空中のとある点から、バネ上重量が仮想のフックによって吊り下げられている」(→スカイ・フック)という仮定のもとにサスペンションの減衰力を決定していく理論であり、四輪車を含めて現在のアクティブサスペンション設計における基本的な制御理論のひとつです。
もし、空中のとある点からバネ上を吊り下げられたまま凸凹した路面を通過すると考えたとき、凸凹に合わせてサスペンションの減衰力を調整し車体を水平に保つことができれば、バネ上が路面から受ける影響は最小限に留めることができます。
これが実際にどのような効果を生み出すのかは、スカイフックアルゴリズムの概念図を見るとよくわかるのではないでしょうか。
図を見ると、路面の凹凸を通過する際にスカイフックの有無で車体(バネ上)の動きがどれだけ変わるのかが示されています。
バイクのイラストの後方に描かれた線は、車体の任意の一点が凸凹を通過する際にどう動いたかを表した軌跡です。
一方の図の下側では、路面の凸凹にも関わらず、車体の上下動がかなり抑制されていることがわかります。
ヴェルシス1000SEでは従来モデルからボッシュ製のIMU(慣性計測装置)を搭載し、6軸による姿勢制御を行っていました。
新型ヴェルシス1000SEに搭載されるスカイフックテクノロジーでは、そのIMUによるセンシングをはじめ、ABS、ECUなどの情報も統合してサスペンションの制御と連動させており、極めて高度なアルゴリズムを確立していると言えるでしょう。
従来の「KECS」に新たにスカイフックテクノロジーを採用したことで、ソロ、タンデム、荷物満載のツーリングまで、あらゆる状況で最適な減衰特性を獲得した新型ヴェルシス1000SEは、ツーリングモデルとして「世界最高レベルの足まわり」を備えたと言っても過言ではありません。
図の上側、スカイフックがない場合は、路面の凹凸に合わせて車体が上下に揺動しています。
こうした車体(バネ上)の上下動は、時としてライダーのハンドル操作に影響を与えるだけでなくこととなりますし、上下動の大きさや車速によってはタイヤの路面追従性にも影響を及ぼす場合もあります。
たとえばツーリングに出かけたときに、路面に減速帯が延々と貼られたような峠道に出くわすことがありますよね。
そうした路面では車体の上下動が不快なだけでなく、意図しないサスペンションの動きがブレーキングや倒し込みなどのアクションにワンテンポ以上のズレをもたらすことも……。きっとみなさんも一度は経験があるのではないでしょうか。
なお、足まわり自体は前後17インチのホイールに、フロントサスペンションはストローク量150mmの倒立フォーク、リヤサスペンションはストローク量152mmのリンク式モノショックという組み合わせ。
カワサキはヴェルシス1000SEについて「オフロード走行は想定していないモデル」と位置付けていますが、このサスペンションストロークを見るとオフロード走行を見越したアドベンチャーモデル(200mm前後のストローク量が現在の主流)と、オンロード専用ツアラーモデルのちょうど中間域を狙ったキャラクターだということがわかります。
ちなみにカワサキのツアラーモデルのニンジャH2 SXのサスペンションストローク量はフロント120mm/リヤ139mmで、アドベンチャーモデルの代表格であるBMW Motorrad R1250GSではフロント190mm/リヤ200mmという数値です。
前後17インチのホイールゆえ本格的なオフロード走行には向いていないにしろ「極めてフラットに近いダートをスルリと通り抜けるくらい」であれば、問題のない足まわりではないでしょうか。
新型ヴェルシス1000SEの機能、安全装備
2021年型ヴェルシス1000SEの変更点は、前述の車体色の変更とKECSに追加されたスカイフックテクノロジーがメインとなります。
車体寸法、ギヤレシオ、タンク容量などの数値も従来モデル同様ですが、プレミアムなツーリングモデルとして先進的な装備を数多く持っていますので、それら主要装備を改めて紹介していきます。
従来モデルで採用されたLEDコーナーリングライトは継続して装備(近年、バンク角に応じたアダプティブヘッドライトの採用が各社のトレンドになっていますが、ヴェルシス1000SEいち早くこの装備を採用していました)。
もちろん、ヘッドライトやその他灯火類もフルLED仕様です。
電子制御機構では、IMUからの情報をもとにバンク角なども踏まえて制御されるトラクションコントロール、ABSが搭載されているほか、クイックシフターも標準装備。
それらの作動レベル、サスペンション特性、エンジン出力特性を各モードごとに調整するライディングモード(「スポーツ」「ロード」「レイン」のプリセット3種と、ユーザーが各パラメーターを調整できる「ライダー」が選択可能)も搭載されています。
ハイエンドツアラーモデルではもはや欠かせない装備のひとつとなるクルーズコントロールも従来モデル同様に装備されています。
また、カワサキがスーパーバイク世界選手権で培ったテクノロジーをフィードバックしているアシスト&スリッパークラッチ機構も搭載。
クラッチ操作に必要な力を軽減しながら、エンジンが発生する強大なバックトルクを機械的に制御することで、安全で快適なライディングをサポートしています。
■カワサキ ヴェルシス1000SE主要諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:77.0mm×56.0mm 総排気量:1043cc 最高出力:88kW<120ps>/9000rpm 最大トルク:102Nm<10.4kgm>/7500rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2270 全幅:950 全高:1530(スクリーンハイポジション)/1490(スクリーンローポジション) ホイールベース:1520 シート高820(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量:257kg 燃料タンク容量:21L
[車体色]
エメラルドブレイズドグリーン×メタリックディアブロブラックの1色
[価格]
199万1000円
*1ヵ月目点検と、3年間の定期点検、オイル交換を無償で受けられる「カワサキケア」含んだ価格
カワサキ ヴェルシス1000SEの仮想ライバルは?
■BMW S1000XR(199万4000円~)
ヴェルシス1000SEのガチンコのライバルとなるモデルは、1000ccの並列4気筒エンジン&前後17インチのホイールという点を踏まえると、やはりBMW Motorrad S1000XRでしょう。
スーパースポーツ・S1000RRのエンジンや車体をベースとして、アップライトなポジションに大型フェアリングを組み合わせたS1000XRは、前後のホイールは17インチではありますが、長めのサスペンションストロークが与えられたツアラーモデルです。
装備の面では、電子制御式サスペンションのダイナミックESAをはじめ、減衰力調整を自動で行うDDC(ダイナミック・ダンピング・コントロール)、エンジンモード切り替え、DTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)、ASC(オートスタビリティ・コントロール)、クルーズコントロールなど、BMWが誇る最新世代の電子制御テクノロジーをすべて備えた「全部盛り」。
積載性に関してもヴェルシス1000SE同様にオプションでトップケースやパニアケースが用意されているので見劣りすることはありません。さらに価格も199万円台からとヴェルシス1000SE同様の価格帯です。
ここまでパッケージが類似した車両ではどちらを選ぶのかが難しくなりますが、最高出力や最大トルクの発生回転数はヴェルシスの方が低いので、常用域での扱いやすさという面では乗り比べると差が出るポイントかもしれません。
一方、車重の面ではS1000XRの方が20kg近く軽い数値であることもひとつのポイントです。体感に大きく影響するところなので、実際に試乗比較することをオススメします。
■ドゥカティ ムルティストラーダ950S(207万円)
また、199万円という価格で考えると、ドゥカティ ムルティストラーダ950Sもライバルとなります。
ドゥカティのムルティストラーダは、スーパースポーツ系エンジンにストロークの長いサスペンションと前後17インチホイールを組み合わせたデュアルパーパスモデルとして2003年に初代モデルが登場しました。
いわば「17インチアドベンチャー」の先駆者とも呼べる車両ですが、現在のラインアップではフロント19インチのみとなっています。
ムルティストラーダは1000ccオーバーのモデルでは、1158ccV型4気筒エンジンを搭載する「ムルティストラーダV4」シリーズ、1262ccL型2気筒エンジンを搭載したオフロード色の強い「ムルティストラーダ1260エンデューロ」がありますが、どちらも300万円クラスとなります。
一方の937ccL型2気筒エンジンを搭載するムルティストラーダ950Sは、価格、キャストホイール、電子制御サスペンションの装備など、ヴェルシス1000SEと近い要素を持っています。
サスペンションはDSS(ドゥカティ・スカイフック・サスペンション)というもので、ヴェルシス1000SE同様にスカイフック理論に基づいたセミアクティブサスペンションとしています。
このDSSは400パターン(!)に及ぶパラメータが設定でき、ライダーの好みや使用状況に合わせた細やかなセッティングも可能です。また、コーナーリングABSやDTC(ドゥカティ・トラクション・コントロール)、坂道発進で便利なVHC(ヴィークル・ホールド・コントロール、コーナーリングライトなど各種デバイスもハイエンドモデルに迫る充実ぶり。
もちろん、パニアケースやトップケースなどの積載系パーツも純正オプションが用意されています。
装備面でもヴェルシス1000SEの好敵手と言えるムルティストラーダ950Sですが、最大のアドバンテージは何といっても乾燥重量207kgというミドルクラス並みの車重でしょう。
軽快なバイクを求めるライダーであれば、ムルティストラーダ950Sに分があると言えるかもしれません。
■MVアグスタ ツーリズモヴェローチェ800ロッソ(223万3000円)
ストロークの長いサスペンションに17インチホイールを組み合わせたツアラーモデルとして、忘れてはならない存在がMVアグスタのツーリズモベローチェ800ロッソです。
MVアグスタ独自の並列3気筒エンジンはエモーショナルなフィーリングと優れたパワーデリバリーを発揮するだけでなく、個性的なボディデザインとも相まって、メカニズムとデザインの両面から独自の世界観を打ち出しています。
もちろん最新のモデルだけあって装備も充実しています。
IMUにはイタリアのe-Novia社によるMVアグスタ専用の製品を搭載し、トラクションコントロールやABS、ザックス製セミアクティブサスペンションの制御に生かしています。
2021年モデルではユーロ5適合に合わせてエンジンマネジメントも見直して常用域でのトルクを増大。エンジンの特性についてはバックトルクやレブリミットに至るまで細かなセッティングも可能です。
また、最新世代のクイックシフターも装備されるほか、ツアラーモデルに必須のクルーズコントロールも装備しています。
高級ブランドとして名高いMVアグスタだけ一線を画す個性をたずさえつつ、最新ツアラーとして申し分のない装備を持つツーリズモヴェローチェ800ロッソ。価格はヴェルシス1000SEより高くはなりますが、220万円超と意外にライバルモデルとして考えられる範囲です。
■ホンダ VFR800X(150万4000円)
781ccのV型4気筒エンジンに搭載するツアラーモデルのVFR800Xは、フルカウルツアラーのVFR800Fをベースにストロークの長いサスペンションを与え、ホンダが「クロスオーバー」と呼ぶキャラクターを打ち出したモデルです。
車重は246kgとこの排気量にしては重量級マシンで、前後ホイールは17インチですが、オンロードスポーツモデルに比べると最低地上高も高く、フラットダート程度であれば走破できるポテンシャルを備えています。
エンジンは回転数に応じて2バルブと4バルブを切り替えるホンダ伝統の「HYPER VTEC」を搭載。
さらにホンダ独自のトラクションコントロールシステムとなるホンダ・セレクタブル・トルク・コントロールを採用して、ライダーが後輪の駆動力を3段階で調整することが可能です。
ベースモデルの設計がやや古いこともあって、クルーズコントロールや出力特性の切り替え、電子制御サスペンションなど昨今トレンドの装備がないのは残念ですが、灯火類はフルLEDでグリップヒーターは標準装備。積載製を高めるトップケースやパニアケースはオプションで用意しています。
ヴェルシス1000SEに比べ、50万ほど安い150万円という価格はかなりアドバンテージになるのではないでしょうか?
「決め打ち一択」の人もいるかもしれませんが、新型ヴェルシス1000SEが発売されたらライバルモデルを含めて試乗し、キャラクターの違いを体感してみてはどうでしょうか。
試乗する際にポイントをひとつ。
可能であれば、試乗コースに5km程度でも高速道路を組み込むのがおすすめです。
当記事で紹介したバイクに興味を持ったということは、きっとロングツーリングに出かけようと思っている人が多いと思います。
一般道では検証しづらいウインドプロテクション性能、高速巡航時の静粛性、エンジン回転数、オートクルーズの使い勝手などを確かめるためてほしいのです。
自分がイメージする「バイクの乗り方」での使い勝手を見極めれば、きっと楽しいバイクライフが送れるはずです。
レポート●土山 亮 写真●カワサキ/BMW/ドゥカティ/MVアグスタ/ホンダ
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