この記事をまとめると
■上海モーターショーにて新型レクサスLMのプロトタイプが公開された
アルファードのレクサスLM化カスタムが流行で不人気だった「エグゼクティブラウンジ」の人気上昇! ホンモノのLMを日本導入の噂も
■中国でのレクサスLMの人気は高く、中国メーカーが同様の大型ミニバンを市場投入している
■中国車は価格も安く品質も高まっており、これまで同様の販売台数を維持するのは難しいだろう
レクサスLM導入でも一時期のようなアルファードバブルは来ない
先ごろ開催された、上海国際汽車工業展覧会(上海モーターショー)において、次期型レクサスLMのプロトタイプモデルが発表となった。今回は世界初披露しただけで、中国国内でも現時点では発売されていない。レクサスLMは結局、現行モデルが日本市場にデビューすることはなく、そのまま次期型がワールドデビューを飾ったことになる。
ちなみにトヨタが発信したリリースによると、次期型は日本国内でも販売予定となっているという。一時に比べればトヨタ・アルファード・バブルは下火になったものの、アルファードのLM化という新たな市場が形成されている。これは、パーツの調達先については定かではないが、アルファードをベースにしてレクサスLMの純正部品を装着し「なんちゃってLM」にしてしまうもの。
このような状況を見れば、トヨタが市場性ありと判断し、正真正銘のLMが日本国内で販売されるのも自然の流れといっていいだろう。
ただし、アルファードですらかなり高額なのに、LMはレクサスブランド車となるので、より高額になるのは間違いない。したがって、アルファードバブル状態のようになることはないだろうし、トヨタもそこは期待していないものと考える。
次期型レクサスLMを見ると、どこか迷いのようなものも感じてならない。中国国内ではすでに現行アルファードは販売されており、人気を博している。そして、その様子を見ていた中国メーカー各社がアルファードのような大型ミニバンを相次いで市場投入している。当初はひたすらアルファードより押し出しの強さを強調しているだけで、少々見た目の印象は破綻しているようにも見えたが、今回の上海モーターショーの様子を現地のウェブメディアなどで確認すると、手慣れてきたな、という印象を持つモデルが目立っていた。
しかも、アルファードやLMになくて、“中国版アルファード”にあるのがBEV(バッテリー電気自動車)の存在。そもそも基本的に海外へ輸出するつもりのないモデルがほとんどなので、中国人が中国人のためのラグジュアリーミニバンを開発し販売するのだから、“痒いところに手が届く”ということになる。
また、社会のデジタル化が遅々として進まない日本に対し、デジタル化でも世界最先端レベルで進む中国の消費者では、クルマの機能で求めるものも微妙に異なるものと考えられる。
中国での熾烈な戦いが待ち受けている新型レクサスLM
さらに、中国におけるアルファードなども属する高級商務車(ラグジュアリーミニバン)クラスでは、ブランドステイタスの高さを誇るビュイックGL8をラインアップする上海通用(通用はGM[ゼネラルモーターズ]の意味)汽車では、2022年に「世紀(センチュリー)」という、GL8よりエッジのきいた高級商務車を市場投入している。
2.5リッター直4ベースのハイブリットユニットを搭載するアルファード豪華版の価格は、日本からの完成車輸入ということもあり、83.9万元(約1678万円)となっている。一方で別克(ビュイック)世紀(センチュリー)は中国国内生産となることもあり、2リッター直4 48Vマイルドハイブリッドを搭載する“蘊世版“の価格は52万9900元(約1060万円)となっている。ちなみに中国での現行LMの価格は、やはり完成車輸入になってしまうこともあり、116.6万元(約2332万円)となっている。
つまり、単純にアルファードやLMと中国系やビュイックの高級商務車が競合するという前に、完成車輸入モデルと現地生産モデルなので価格に決定的な差が出てしまうのである。例示した価格差を見れば、そもそも購買層が異なるようにも見えるし、レクサスブランドの位置づけはメルセデスベンツやBMWなどの属するプレミアムブランドとなるので、格の違いもある。
ただし、ビュイックの高級商務車は意外なほど中国国内ではブランドステイタスが高いので、そのなかで「アルファードより600万円安いし……」とビュイックに流れる人も出てくるし、中国メーカーの高級商務車に流れる人も出てくるだろう。LMより格下となるモデルでは、アルファードほか高級商務車は群雄割拠していて、果たしてLMまでお鉢がまわるのかとも考えてしまう。
ただ、中国の自動車市場は世界一で、その市場の厚みも日本市場をはるかに超えているので、アルファードではなくLMを選ぶ層が確実にいることは間違いないだろう。
遠い昔には、中国国内であっても「中国車に乗るのは恥ずかしい」と思う人が当たり前のようにいたが、いまでは国自体の発展も著しいし、そもそも中国車の完成度も格段に向上している。さらに、政府の指導もあるのか愛国心を強く持つ人も多いので、都市部でさえも中国車を選ぶ人が目立つ(というか、普及価格帯でのBEVを買おうと思えば自然に中国車メインでの選択になる)。
つまり、現行アルファードがデビューしたころに比べると、市場環境がずいぶん変わってきているのである。販売環境は以前より厳しいものとなっているように見えるなかで登場した次期型LMを見ると、少々パンチが足りないようにも見える。つまり「これだからLMを選ぶ」というインパクトが少し足りないように見えるのだ。
実車を見ていないのでなんともいえないが、まわりのメーカーがアルファード的なモデルのノウハウをつかんだように筆者には見えており、LMより本来格下となるアルファードを意識した、他メーカーモデルとの鮮明な格の違いがなかなか筆者には伝わってこないのである。
今年3月に開催されたバンコク国際モーターショーの例を見ても、中国だけでなく東南アジアなどにおいても、中国上海汽車系のMGや比亜迪(BYD)汽車の高級商務車が人気を博していた。
少なくともいままでのような、この世の春的な販売環境ではないので、今後は油断大敵といった緊張感のなか、世界で販売していくことになりそうである。
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