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ほどよく贅沢、ほどよくスポーティなBMW──新型M440i xDriveカブリオレ試乗記

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ほどよく贅沢、ほどよくスポーティなBMW──新型M440i xDriveカブリオレ試乗記

新型BMW「4シリーズ」に追加された「カブリオレ」に小川フミオが試乗した。

流麗なスタイル

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BMWの魅力的な4シーター・フルオープンモデル「M440i xDriveカブリオレ」は、SUVに食傷ぎみのひとに勧めたいエレガントなルックスにくわえ、快適さがフルに味わえる“おとなっぽいモデル”だ。

日本では今年2月25日に発表され、ジャーナリストがドライブできるクルマが用意されたのが、8月。真夏の昼間にオープンで乗るのはちょっとキツいが、朝晩なら、とても気持ちがいい。季節が秋へと向かういま、注目してもらいたいモデルといえる。

どこがいいって、なにはおいてもスタイルだ。ホイールベース2850mmの4シリーズをベースにした車体に、低いウインドシールド。電動開閉式のファブリックの幌は、たたんでしまえば、まったく見えない。

「1930年代の名車328や、1970年代の3.0といったスポーティなモデルのDNAを受け継いだ」と、BMWデザインが説明する4シリーズのフロントグリルをそなえた、押し出しの強いフロントマスクと、前後にすっと流れるようなベルトラインによる流麗さがミックスされたスタイリングは、ドライブが楽しいクルマなんだ! という主張をかんじるようで、とても好ましい。

M440iは、2997cc直列6気筒エンジンを搭載。285kW(387ps)の最高出力と、500Nmの最大トルクと、数値からしてもかなりのもの。これにフルタイム4WDシステムが組み合わされている。

冒頭で、おとなっぽい、としたのは、運転感覚だ。BMWというと、一部のファンは、エッジのたったスポーツモデルと思いがちかもしれない。たしかに、このクルマはBMW M社が開発に手を貸してもいる。

本拠地であるミュンヘンの頭文字であり、同時にモータースポーツも意味するM社の、「Mアダプティブ・サスペンション」と「Mディファレンシャルギア」が組み込まれている。

ただし、このMパフォーマンスモデルは、「サーキットで培われた技術を余すことなく取り入れ走行性能を高めた」(BMW)とされるが、たとえばM4のような「サーキットでの走行を可能とした」(同)Mハイパフォーマンスモデルとは一線を画している。

キレキレのモデルが欲しければ、基本的には同じ3.0リッター直列6気筒ユニットをチューンナップした、「M4クーペ」か、さらにそのうえの「M4クーペコンペティション」が用意されている。

フルオープンでも快適

今回のM440i xDrive カブリオレは、眼を三角にしてステアリングホイールと格闘するようなモデルではない。ごく低回転から大きなトルクが立ち上がり、レッドゾーンまで、力が途切れずまわりきるのだけれども、そこまでやらなくても、1500rpmもまわしていれば、充分、なのだ。

それでスピード感が味わえるし、運転しているひとは車両と一体化したように感じる。ステアリング・ホイールの操舵感といい、カーブでも車体の姿勢が一定の角度に保たれ安心して加速していける操縦安定性といい、バランスがたいへんよい。

フルオープンで走っていると、ウインドシールドの高さが低く抑えられているので、すこし上を見れば空。それでいて、風の巻き込みは、法定速度内ならとても少ない。

アクセル・ペダルに載せた足にごくわずかに力をこめるだけで、すかさず加速し、緩めればやはり即座に減速する。まるで歩いている(いや、走っている)みたいな感覚はみごと。自分の足を使って海辺をジョギングをしているような、すばらしい身体感覚をもたらしてくれるモデルなのだ。

ドライブモードはかなり細かい。たとえば「スポーツ」だけでも、「スタンダード」「プラス」「インディビジュアル」と設定がある。ただし、ふだん使いなら「コンフォート」でじゅうぶん。路面の凹凸はていねいに吸収し、ダンピングもビシっとしている。

往々にして、Mスポーツモデルは、足まわりが硬くて、やや閉口してしまうことがあったのに、このM440iはまったく違っていたのが、嬉しい発見だった。

サスペンションの動きの自由度は高く、操縦性と乗り心地の両立がうまくいっている。太めのグリップのステアリング・ホイールを握ってドライブしていると、SUVに慣れたひとにも、このクルマを体験させてみたくなる。 “いいクルマ”とはなにか? を、教えてくれるように思う。

プレミアムなカブリオレ

コネクティビティは、しっかり進化している。ひとつは「オーケイ、BMW(好きな呼びかけに変更可能)」と、話しかけると起動する、会話型コマンドシステム。今回試して、音声認識の感度が上がっているように感じられた。

Siriのように「オーケイ、BMW」で起動すれば、エアコンやナビゲーションなどの音声操作が可能。スマートフォンで事前に検索した目的地を車両に送信することもできる。

車両のキーを携行しなくても、iPhoneをドアハンドルにかざすことで、車両のロック解除(それと施錠も)、それに、エンジンの始動も可能になっている。

運転支援システムは「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」を搭載。一定の条件下において、ステアリング・ホイールから手を離しての走行もできる。3シリーズで2019年に導入され実績は証明ずみの技術だ。ただし、ことこのクルマに限れば、ドライブというもっとも楽しいことを自分がやらないなんてもったいない! と、つけ加えておこう。

1985年に第2世代の3シリーズにフルオープンのカブリオレが設定されていらい、BMWは必ずラインナップに複数のカブリオレを入れている。そして、クーペと同様、セダンとは異なる専用のボディパネルをあえて採用してまで、特別感をつくりだすことで、多くのファンを生んできた。

伝統はここにもちゃんと生きていた。「M440i xDrive カブリオレ」の価格は1089万円。標準装備が多く、オプションで選ぶべきは、特別な車体色とか、ソフトトップの色ぐらい。スポーツカーのオープンモデルは、紳士傘と同様、そこに幌は存在しない、というのがお約束なので、黒色が相場だ。

カブリオレは幌の色を黒にしなくてもよく、車体色や内装とのマッチングを楽しむひとも多い。とはいえ、個人的には、いつだってフルオープンで走る用意があると意思表示したくなる。そこであえてソフトトップは黒。

いっぽう、内装はあえてギャラリー(道ゆくひと)に見せるものなので、色は明るいのが楽しそうだ。そういうことを、あれこれ考えるのが、M440i xDrive カブリオレのような、プレミアムなカブリオレについてくる娯楽なのだろう。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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