現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 比較試乗 アストン マーティンV8ヴァンテージ vs ポルシェ911(997) 後編

ここから本文です

比較試乗 アストン マーティンV8ヴァンテージ vs ポルシェ911(997) 後編

掲載 更新
比較試乗 アストン マーティンV8ヴァンテージ vs ポルシェ911(997) 後編

もくじ

前編
ー 911はベンチマークではない
ー 考え得る「必要最小限のクルマ」
ー 911ミーツV8ヴァンテージ
ー まるでドイツ生まれのように
ー 911と明らかに違うところ

比較試乗 アストン マーティンV8ヴァンテージ vs ポルシェ911(997) 前編

後編
ー ついにV8ヴァンテージが走り出す
ー 「わたしはこの道が大好きなんです」
ー V8ヴァンテージにしかできないこと
ー ひとつだけ断言できること

ついにV8ヴァンテージが走り出す

仕立てのいい革張りのシートはDB9用のものと基本こそ同じだが、V8ヴァンテージのキャラクターに合わせてクッションはところどころ少し硬めになっている。

ベッツが、親指でスターターボタンを押すと、ハイチューンのV8エンジンは軽く身震いして、低い唸り声とともに目覚めた。キャビンに居て感じるのはポルシェ911とはまったく違う世界だが、感動的な瞬間であることには変わりない。

ベッツはスタートしてしばらくの間、V8ヴァンテージをのんびりと走らせた。そして、その時点でわたしはあまりに乗り心地がフラットなことに驚いていた。

ついさっき同じ道を911で走ってきただけにその違いはよくわかる。サスペンションはダンピングがよく効いていて、スピードを上げるにつれ、それが完璧に制御されている事実が明らかになる。

水温計の針が真ん中あたりで安定すると、ベッツは徐々にペースを上げていった。それにしても、このクルマのハンドリングのなんとバランスのいいことか。わたしはすぐにそれが49対51というの重量配分によるものだと気づいた。

V8ヴァンテージの着座位置はかなり後ろ(真横から見ると後ろ側3分の2くらいの場所)にある。ちなみに911だとちょうど中央のあたりだ。これはアストンがポルシェとはまったく別のアプローチでV8ヴァンテージを造った証拠のひとつだろう。

われわれが乗ったV8ヴァンテージは、ついにゲイドン工場から外に出ようとしていた。ベッツはすでにV8にムチを入れており、門番たちを驚かせながら、他のアストンV12と同様にエンジンの唸りが5000rpmあたりから堂々たる咆哮へと変わるさまを実演してくれた。

ロータリーを右折し、ギアをシフトアップする。乗り心地は固めだがしなやかで、ロードノイズは許容範囲内(ポルシェ伝統の騒音とは比べ物にならない)。

風切り音は前方からルーフ上を抜けていくように巧く制御されているようだ。シートもほどよく引き締まった見事な座り心地で、サイドサポートも文句のない仕事をしてくれる。

「わたしはこの道が大好きなんです」

V8エンジンは1700rpmあたりからパワーを増し、3700rpmから上では本物のスーパースポーツらしい迫力のある加速を発揮し始める。

5000rpmに達すると唸りは咆哮に変わり、トップエンド(レッドゾーンは7000rpmから)にかけて一気に炸裂する。ひょっとしたら格上のアストンV12の滑らかな「ヒュイーン」という洗練されたサウンドよりもこのV8の野太くて刺激的な咆哮を好む人は、少なくないのではないか。

そう思わせるほど、V8ヴァンテージが発するサウンドは魅力的だ。

と、いいペースで走り続けていたベッツが、とつぜんわたしにこう言った。

「わたしはこの道が大好きなんです」

その言葉を聞いた時、わたしはそれはエンジニア特有の一風変わった情緒的な感情に違いないと思ったが、そうではなかった。

ベッツはスムーズで開けた道をわざわざ外れ、ボコボコに荒れた所々に大きな波打ちや凹凸がある道を、時にジャンプしながら(しかもかなりのスピードで)飛ばしていく。

もちろんシャシーにとってもタイヤにとってもかなり過酷な仕打ちであるのは間違いない。アストンの経営者は仕事熱心なのだ。

わたしならこのクルマでそんなトバし方はしないし、もしサスペンションがボトミングしたら、それで終わりにするだろう。だが、実際にはボトミングはまったく起こらなかった。

いや、より正確にはボトミングする気配すらなかった。最悪の(だがベッツにとっては最良の)道を攻めまくっても、姿勢は奇跡のように安定していた。

ボディは隆起を乗り越えて宙に浮き、そしてきれいに着地する。究極の柔軟性を備えたすばらしいボディコントロールだ。おまけにシャシーには巌のような剛性感がある。

ポルシェがテールヘビーな重量配分に起因する突発的な挙動を抑えるために締め付けた硬い乗り心地とは似ても似つかない。

ベッツはニヤリと笑った。そして思わずポルシェへのコメントを漏らした。

V8ヴァンテージにしかできないこと

「ポルシェ911でこの道を走ったら間違いなく酔いますよ。911だけでなく、世の中のほとんどのクルマはね」とベッツ。

彼の言うとおり、V8ヴァンテージと911はまったく別の種類のスーパースポーツである。だが、わたしは両者にいくつかの共通点があることに気づいた。

それはベッツがある村の入口の細いシケインを(片手ハンドルで)楽々と安定したステアリングワークで抜けていった時のこと。彼の操作のタイミングとクルマの動きは、まるで911のデジャブのようだった。

さらに、彼が常連だと言うパブ前で、大きな穴にはまった時の挙動も911に似ていた。ボディはみしりとも言わず、ただドンと踏面がきしむ振動が伝わってきて終わり。

まるで911のように……。V8ヴァンテージは走行中にどんな凹凸や轍やアスファルトの割れ目に遭遇しても、ノイズやひずみが出る兆しを見せない。そう、これもまるで911のように。

ひとつだけ断言できること

V8ヴァンテージが発売後間もない現在、どちらが本当に優れたクルマかを最終判断するのは時期尚早だろう。現段階で判明しているのは、その争いは間違いなく大接戦になるであろうということだ。

アストンにはモダンなスタイリングや、手作業で仕上げたエキゾチックな雰囲気の素晴らしいインテリア、そして広いドライバースペースといった長所がある。対するポルシェは、高品質という点では依然として象徴的な存在であるし、ユニークなエンジンや素晴らしいギアボックスなど独自の魅力に満ちている。しかし、こと走りに関するフィールドでは、例えば荒れた路面での安定性や乗り心地、グリップ力など、その実力はかなり均衡している。

いずれにせよ、最高の911を設計した男がふたたび最高のクルマを創り上げた。

それだけは間違いない。

関連タグ

こんな記事も読まれています

道路に書かれた「謎の▽」 意味はナニ? 大事な意味だけど…意外と忘れがち? 「白い逆三角」の正体とは
道路に書かれた「謎の▽」 意味はナニ? 大事な意味だけど…意外と忘れがち? 「白い逆三角」の正体とは
くるまのニュース
[旧型アルファード]新車時は450万円前後だったよね? 中古でも450万円超えってマジ!? 今後はどうなるのよ!!!!
[旧型アルファード]新車時は450万円前後だったよね? 中古でも450万円超えってマジ!? 今後はどうなるのよ!!!!
ベストカーWeb
ハチロク乗りもGR86乗りもすれ違ったら敬礼必至! 偉大なるご先祖「TE27」のレビン&トレノが胸熱すぎるクルマだった
ハチロク乗りもGR86乗りもすれ違ったら敬礼必至! 偉大なるご先祖「TE27」のレビン&トレノが胸熱すぎるクルマだった
WEB CARTOP
最強の「フォルクスワーゲン・ゴルフ」がワールドプレミア! 新型「R」「Rヴァリアント」発売へ
最強の「フォルクスワーゲン・ゴルフ」がワールドプレミア! 新型「R」「Rヴァリアント」発売へ
LE VOLANT CARSMEET WEB
日本最大級のモーターショー「ジャパンモビリティショー」が2024年も開催決定! 10月15日~18日に幕張メッセで「CEATEC」と併催。
日本最大級のモーターショー「ジャパンモビリティショー」が2024年も開催決定! 10月15日~18日に幕張メッセで「CEATEC」と併催。
くるくら
ヤマハ『MT-03 ABS』『MT-25 ABS』2024年モデルを発表。新色ダークグレーを採用
ヤマハ『MT-03 ABS』『MT-25 ABS』2024年モデルを発表。新色ダークグレーを採用
AUTOSPORT web
【ロイヤルエンフィールド】免許取得&新車購入で最大5万5,000円をサポートする「ライセンスサポートキャンペーン2024」を7/1より開催!
【ロイヤルエンフィールド】免許取得&新車購入で最大5万5,000円をサポートする「ライセンスサポートキャンペーン2024」を7/1より開催!
バイクブロス
大気汚染で年間4000人死亡! そんな渋滞ロンドンに登場した「信号システム」の驚きパフォーマンスとは
大気汚染で年間4000人死亡! そんな渋滞ロンドンに登場した「信号システム」の驚きパフォーマンスとは
Merkmal
約250万円! ホンダ 新型「コンパクト”ミニバン”」発表! 8年ぶり全面刷新の「フリード」どんなクルマ?
約250万円! ホンダ 新型「コンパクト”ミニバン”」発表! 8年ぶり全面刷新の「フリード」どんなクルマ?
くるまのニュース
これでF1のトラックリミット問題は解決する? レッドブルリンクで新たな対策が登場
これでF1のトラックリミット問題は解決する? レッドブルリンクで新たな対策が登場
motorsport.com 日本版
ホンダの本命、「N-VAN」がカワイイEVになって登場! 商用から個人ユースまで使える4タイプをラインナップ。
ホンダの本命、「N-VAN」がカワイイEVになって登場! 商用から個人ユースまで使える4タイプをラインナップ。
くるくら
ホンダ新型「“夜型”SUV」公開! ブラック感高めた「スタイリッシュモデル」! めちゃお買い得な「CR-V」台湾に登場
ホンダ新型「“夜型”SUV」公開! ブラック感高めた「スタイリッシュモデル」! めちゃお買い得な「CR-V」台湾に登場
くるまのニュース
どちら側が一般的? バイクの給油、左右どっちの給油レーンに入るのが良い?
どちら側が一般的? バイクの給油、左右どっちの給油レーンに入るのが良い?
バイクのニュース
BMW1シリーズ新型に頂点、300馬力の「M135」…英イベントに出展へ
BMW1シリーズ新型に頂点、300馬力の「M135」…英イベントに出展へ
レスポンス
走りがマジでスポーティな[プリウス]!! e-POWERは”ひと踏み惚れ”の力あり!? 燃費も走りも超いいクルマ3選
走りがマジでスポーティな[プリウス]!! e-POWERは”ひと踏み惚れ”の力あり!? 燃費も走りも超いいクルマ3選
ベストカーWeb
国内最大級のアウトドアイベント、東京アウトドアショー2024が開催
国内最大級のアウトドアイベント、東京アウトドアショー2024が開催
月刊自家用車WEB
【MotoGP】ドゥカティは移籍が決まっても”フェア”に扱うはず……マルティン「僕はドゥカティのためにレースしている」
【MotoGP】ドゥカティは移籍が決まっても”フェア”に扱うはず……マルティン「僕はドゥカティのためにレースしている」
motorsport.com 日本版
【マットモーターサイクルズ】免許取得&新車購入で3万3,000円をサポート「ライセンスサポートキャンペーン2024」を7/1より開催!
【マットモーターサイクルズ】免許取得&新車購入で3万3,000円をサポート「ライセンスサポートキャンペーン2024」を7/1より開催!
バイクブロス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村