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レクサスLS V6ツインターボ試乗記 感性フィールをデジタルで作りこむことへの挑戦

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レクサスLS V6ツインターボ試乗記 感性フィールをデジタルで作りこむことへの挑戦

昨年になるが、2017年の12月に新型LSを試乗する機会を得た。その時は、ハイブリッドモデルだけ公道で試乗できたものの、ガソリンモデルのV6 3.5Lツインターボはクローズドエリアでの限定的な試乗だった。2018年2月、今回そのガソリンモデルを公道で試乗することができたので、その状況をお伝えしよう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

新型レクサスLSの試乗グレードは、version LとF SPORT、そしてEXECUTIVEのAWDに乗ることができた。パワーユニットはいずれもV6型3.5Lのツインターボに10速ATを搭載したモデルだ。
参考記事:レクサスLS試乗記 ドライバーズカーへの脱却を目指す新型LS

ホンダ コンプリート・チューニングカー「フリード モデューロX」試乗レポート 熟成された上質な走り

ちなみにエンジンは次世代の高効率エンジンでダイナミックフォースエンジン。高速燃焼と高効率ターボがポイントのパワーユニットで、ダウンサイジングではなく、「スマートサイジング」とレクサスでは命名している。エンジンは高速燃焼させるためにバルブ挟み角と吸気ポートを工夫し、レーザークラッドバルブシート加工(量産としては世界初)をインテークポート部に施し、強いタンブル流を発生させている。

タービンも翼形状の湾曲化や翼長の増加などにより排気エネルギーの回収効率を高めるなどトップクラスの高効率エンジンに仕上げている。これにもっとも効率的にトルクを伝えるための多段化ミッションとして10速ATを搭載しているのだ。

さて、この試乗した3台は微妙に乗り味が異なり、なんともつかみどころが難しいというのか、感性フィールがそれぞれに違っているという印象だったのだ。

■ポジショニング

最初にお伝えしなければならないのは、5代目となった新型レクサスLSは、ドライバーズカーとして生まれ変わったことだろう。プレミアム高級セダンでありながら、大胆なデザインと走りは、よりエモーショナルなものへ、というこだわりを持って開発されたことだ。従ってこれまでのLSに対するイメージをある程度方向転換して考える必要がある。

ドライバーズカーとして感性に響くモデルとなれば、ライバルはBMW7シリーズあるいは、パナメーラなどを考えてもいいのかもしれない。レクサスとしては、ライバル不在であり、レクサス独自の世界観の中で、魅力を創り提供していくということなので、ライバルへの言及はない。

この立ち位置での開発のキーとなるのは、エンジン、ミッションなどのパワートレーンもそうなのだが、時代としては制御技術ではないだろうか。レクサスLSでは、VDIMの進化を謳っており、6方向のベクトルをコントロールすることで、運動性能を高めているという。これはレクサスだけの技術だと説明があった。

具体的には、全車エアサスペンションと連続可変ダンパーを装備し、F SPORTにはモーター内蔵のスタビライザーを装備するなどの制御可能な電子パーツがある。これらを使い前後、左右、上下、ヨー、ロール、ピッチ方向の動きをコントロールする。もちろん、ABS、トラクション、VSC、EPSも含めた統合制御システムだ。

レクサスの開発責任者、旭氏の説明では「車両制御におけるひとつの到達点であり、レクサスだけが持つ制御技術である」と話している。

この車両統合制御技術は、ドライバーの意思を操作から拾い、それを車両の動きにつなげていくことができるというものだ。車両はタイヤのグリップや車輪速、外乱(凸凹やふらつきなど)からのインフォメーションを拾いながら、データを統合して最適な動きへとつなげていくということを意味している。

ドライバーのステア操作の舵角や操舵速度、アクセルの踏み込み速度やアクセル開度、ブレーキ踏力の圧力と踏み込み速度などでドライバーの意思をクルマが理解し、最適な操舵角、トルクの出し方、減速のさせ方をフィードバック信号でデバイスに伝え、フィードフォーワードからのフィードバックというつながりができるということだ。

従来これまでの制御系部品にはそれぞれマイコン制御がされ、それぞれが独立してデバイスを動かしていた。それをひとつのコンピュータで制御し、各部品の動きがつながるようにすることができたという意味になる。また、そのつながりは、軽快な動きとフラット感が高く、快適な乗り心地を目指したもので、ドライバーはひと回り小さいクルマに乗ったように感じる仕上げだということだ。

■インプレッション

さて、そうしたVDIM制御された新型LSだが、version Lには245/50RF19というランフラットタイヤを装着。一方、F SPORTにはフロント245/45RF20、リヤ275/40RF20を装着し、EXECUTIVEのAWDは前後同サイズの245/45FR20という、いずれもランフラットタイヤを装着していた。

ランフラットタイヤは、乗り心地の点で不利というのが定説で、実際にハーシュネスの点では硬いと感じることが多いが、LSのランフラットではそうした硬さを感じる場面はなかった。それは3台とも同様の印象だった。

そして、ステアフィール、乗り心地、ロール感などそれぞれが別の印象となった。ドライバーズカーということを念頭に置くとやはりF SPORTがもっともそれらしいフィールを得る。いずれも電動パワーステアリングなので、操舵に対して重さや切り戻しのフィールも作りこむ世界で、F SPORTは適度な重さと自然な感じがある。また、ロールは少なく、回頭性が高いと感じるので、やはりスポーティな味になっていると思う。

Version Lではこのあたりが少し穏やかにしてある印象。ただ、どのモデルにもドライブモードが設定されており、カスタム、エコ、コンフォート、ノーマル、スポーツS スポーツS+という6段階のドライブモード切替があるため、それぞれで微妙に変化するものの大筋ではversion Lという車格の枠の中でのモード切替になっていると思う。

しかし、車両統合制御に関し、そのグレードの中でグレードに見合った制御にはなっていると感じるが、従来の車両との比較を前提にすると、つながりがもう一息欲しいと感じる。つまり、加速度の変化やGの動きといった動きのしなやかさや滑らかさを示す微分カーブが少し波打っているという印象で、もっと熟成が進めば・・・と思う。

実は、このガソリンモデルは前回、限定的なエリアでの試乗の時、2つの問題点を感じていた。というのは、下周りから出てくるゴトゴトする音と減速時10速ATが滑らかにダウンシフトできない場面があったことだ。今回の公道試乗では、この2点とも解決しており、ミッションのダウンシフト、アップシフトは滑らかでドライバーに変速を感じさせないほど滑らかにシフトチェンジができていた。また、下周りからの音もかなり小さな音になっていた。

AWDモデルはこれらとはまた違い、全体に摺動感がある乗り味だった。滑らかにタイヤが転がらない、とかミッションやドライブシャフト、プロペラシャフトの回転が感じられるとか、そうした機械的に何かがこすれている感じが伝わってくるのだ。この辺りは次第に改善できるものだと思うが、こちらも熟成を期待したい。

■まとめ

操作感にデジタルを感じる。なんだか意味不明の説明だが、油圧のような滑らかさがなく、細切れに動くというと大げさだが、操作データのつながりが波打っている印象だ。綺麗に緩やかなカーブを描く操作フィールが理想なのだが・・・

VDIMという統合制御技術により、ドライバーの意のままに動くように作りこめるデバイスを入手したものの、デジタル感を如何に消し、油圧のような滑らかさにするのかは、また別の技術的な難しさがあるのだろう。MBD(モデルベース開発)を駆使しながらも、データで感性フィーリングに近づけ、滑らかな微分カーブを作りこみ、官能的だと感じさせるには、まだ少しの熟成、時間が必要なのかもしれない。

■価格

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