■77台限定のスーパーアストンが、オークションに登場!
アストンマーティンから「One-77」とネーミングされたニューモデルが最初に披露されたのは、2008年のジュネーブ・ショーでのことだった。この段階では、アストンマーティンは搭載されるエンジンを始め、メカニカルなスペックの一切を発表することはなかったが、世界に衝撃を与えたのは、その車両価格が100万ポンド(当時のレートで約1億2200万円相当)を掲げた、わずか77台のみが生産される限定車であるということだった。
【画像】世界に77台!アストンマーティン「One-77」を見る(23枚)
現在ならばその価格も限定数もさほど驚くことはない、いわゆるハイパーカー・ビジネスでは標準的な数字ともいえるが、当時このOne-77が世界でいかに大きな話題を呼んだのかは、現在でも鮮明な記憶として残っている。
One-77の仕様がさらに明らかになったのは、翌2009年のサロン・アンテルナショナル・ド・ロト、すなわちパリ・サロンでのことだった。
アストンマーティンがその設計の原点としたというのはDTMカーで、これまで同社の作が、アルミニウムを接着工法で組み立てる方法を採用していたのに対して、One-77ではカーボンスペシャリストともいえるマルチマチック社との共同開発によるCFRP製のモノコックタブを基本構造体に選択している。これはもちろん軽量性と剛性のためだ。
フロントミッドシップに搭載されたエンジンは、7.3リッターV型12気筒自然吸気。こちらはコスワース社が開発プロジェクトには密接に関係している。ちなみにドライサンプシステムを採用することで、搭載位置を従来の12気筒モデルより100mmも低下させることに成功したというOne-77のエンジンは、重量でも同様の比較で約25%の軽量化を実現している。
重心位置はフロントアクスルよりもさらに257mmも後方に設定することが可能になった。組み合わせられるトランスミッションは2ペダルのロボタイズ型6速MT。このトランスミッション一式も、もちろん新開発によるものだった。
最高出力760ps、最大トルク750Nmという性能は、現在においても自然吸気エンジンの中では十分な戦闘力を持つものだろう。自然吸気のマルチシリンダーエンジン、そして生産台数の少なかった限定車は、これからますますその価値を高めていくだろうから、その事情を考えても、このOne-77には熱い視線が集まることは間違いない。
前後のサスペンションは、ダイナミック・サスペンション・スポーツ・バルブシステムと呼ばれる、独自の減衰力可変機構を備えるインボード式のダブルウィッシュボーンを採用。ダンパーは水平方向にマウントされ、アストンマーティンはニュルブルクリンクのノルドシュライフェで多くのテストを繰り返した。カーボンセラミック製の強靭なブレーキもまた、ここで鍛えられたものだ。
●25番目の「One-77」の驚きの落札価格は?
今回RMサザビーズのオークションに出品されたモデルは、77台のOne-77のうち、2012年に生産された25番目のモデルだ。
実際に最初のオーナーによって登録されたのは2014年のことで、900kmを走行した後に、2017年にセカンドオーナーへ売却されている。
それから4年後の現在、オドメーターに表示されている数字は、わずかに1009km。現在のオーナーが購入してからのサービスはすべてアストンマーティン・ジュネーブでおこなわれ、2020年6月には車高調節キットが交換されるなど、すべてのサービス記録が残されている。
アストンマーティンにおける2000年代のスターサラブレッドと評してもよいOne-77。今回の落札価格は172万625スイスフラン(邦貨換算約2億800万円)だった。これからどのようなハイパーカーがアストンマーティンから誕生しようとも、このOne-77の持つ独特なオーラ、そして価値は不変であるようだ。
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