F1の2023年シーズンは、圧倒的なパフォーマンスを持っているレッドブルがリード。アストンマーチンがそれを追うという形で開幕した。しかし第3戦オーストラリアGPでは、アストンマーチンに代わってメルセデスがペースセッターのレッドブルに挑戦した。
レッドブルは明らかに一歩リードしており、その優位は揺るがないが、ルイス・ハミルトンがフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)を抑え続けて2位を獲得したことは、メルセデスの今季の将来性と進歩を明確に示すモノだったと言える。
■F1分析|見た目は大混乱。しかし実際には手に汗握る接近戦だったオーストラリアGP……それでもフェルスタッペンの余裕は垣間見える
ジョージ・ラッセルはスタートでマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を交わしながらもマシントラブルでリタイアとなったが、マシンの進歩について次のように語っている。
「サウジアラビアは、昨年のブラジルと並んで、F1でのベストレースウィークエンドに匹敵するような感じだった。そして今週末(オーストラリア)のレースでも、クルマを本当に快適だと感じている」
「チームは僕に適切なツールを与えてくれるし、毎週、毎週、適切なウィンドウでセットアップを行なうことができる。これ以上、できることはないと思っている」
こうした進歩はメルセデスにとって良い兆候だが、同時にオーストラリアGPに関してはふたつの点を意識しなければならない。
ひとつはアルバートパーク・サーキットが、タイヤのデグラデーションが大きな問題になりにくいフロント・リミテッド(リヤよりもフロントタイヤに厳しい)のレイアウトだということだ。これが有利に働いた。
オーストラリアと対照的に、リヤ・リミテッドでタイヤの消耗が激しいバーレーンでは、リヤのダウンフォースが不足しているメルセデスと比較し、アストンマーチンの方がはるかに強力だった。
オーストラリアGPの路面とレイアウトは、メルセデスに有利だったかと問われたトト・ウルフ代表は、「間違いなく我々にとっては有利だったと思う」と認めた。
「我々のクルマはリヤエンドの性能が少し足りないんだ。そのせいで実態以上に良く見えているんだと思う。でも、弱点がどこにあるかはわかっているので、それを解決していくだけだ」
もう一つ重要な要素は、レッドブルは依然として大きくリードしているということだ。
スタートでメルセデスの2台に交わされてしまったフェルスタッペンは、ラッセルが赤旗前のピットストップで後退すると、いとも簡単にハミルトンをオーバーテイク。そして半周で2秒の差をつけた走りは、メルセデスが埋めなければならない差の大きさを垣間見せるものだった。
「彼ら(レッドブル)は、ストレートスピードでアドバンテージを持っていて、DRSをオープンした状態のそれにはただただ驚かされる」
「でも、これがこのスポーツの実力主義なんだ。もし正しいことをしていて直線で速いクルマを持っているなら、同じようなパフォーマンスを発揮するためのツールを見つけられるかどうかは我々次第なんだ」
ただメルセデスはオーストラリアGPにアップデートを持ち込み、マシンのパフォーマンスを上げたわけではない。ラッセルは最近のレースでメルセデスが、意図的にシミュレータ作業によって導き出されたベストなセットアップから逸脱していると明かした。
「僕はエンジニアと一緒に、セットアップから最大限の力を引き出すために一生懸命働いてきたんだ」
「この2戦は、本当に素晴らしいウィンドウにマシンを置くことが出来たと思う。シミュレーションが示していたところから少し離れていた」
「バーレーンでのペースが悪かったのは、そのせいかもしれない。今持っている知識では、バーレーンではもっと違うウィンドウにマシンを置いて、パフォーマンスを上げることができたはずだ」
「僕たちはシミュレータで教えてくれることを理解し、なぜそれと少し違う方向に進んでいるのかを理解する必要があるんだ」
メルセデスがマシンコンセプトの変更を追求しているという事実から、オーストラリアGPの結果はメルセデスにとって、本来いるべき場所にいないという現実から一時的に解放された瞬間だったということだ。
ウルフは「我々は今回、シングルラップでもレースペースでも良い一歩を踏み出すことができたと思う」と付け加えた。
「だがこれが、我々に必要なベースラインだろうか。私はその確信を持っていない」
「我々は自分たちが持っているモノを最大化している。フェラーリやアストンマーチンとレースをすることができたのは素晴らしいが、それを確立する必要がある」
「そして、マシンのことをもっと知り、アップグレードパッケージを導入すれば、もっと上位に挑戦できるようになるはずだ」
特にラッセルは、メルセデスが2位で満足する理由はないと明言している。だからこそ、新しいコンセプトから生まれる大きなステップを必要としているのだ。
「間違いなくまだ必要だね」と彼は話した。
「今、風洞で見えている開発の成果は、かなりのパフォーマンスをもたらすだろう」
「事実として、僕たちは勝つためにここにいる。レッドブルと0.5秒差になるためじゃないんだ」
「今週末はレッドブルと戦い、フェラーリやアストンよりも速かったかもしれないけど、それでも僕らの目指すところからは明らかに遠い」
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