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ブルガリ創業家の電話で参戦レース決定前に購入。“キワモノ”コルベットC7 GT3-R導入の裏側/GT300マシンフォーカス番外編

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ブルガリ創業家の電話で参戦レース決定前に購入。“キワモノ”コルベットC7 GT3-R導入の裏側/GT300マシンフォーカス番外編

 14車種29チームがしのぎを削った2019年のスーパーGT300クラス。シーズン中には、そのなかから1台をピックアップし、マシンのキャラクターや魅力をドライバー、関係者に聞いていく連載企画『GT300マシンフォーカス』を行ってきた。

 今回はその番外編として、スーパーGT×DTM特別交流戦の併催レース『auto sport web Sprint Cup』に出場していた『キャラウェイC7 GT3-R』を取り上げる。ふだんスーパーGTに参戦しておらず、日本でのレース歴は鈴鹿10時間耐久レースだけとかなりレア度の高いGT3カーについて、チーム代表兼ドライバーとしてステアリングを握った武井真司に、アメリカンスポーツを選択した理由とその個性を聞いた。

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 2019年7月に北米で初披露され、2020年1月の東京オートサロンで国内初披露となる新世代コルベット“C8”はこれまでの歴史と伝統から訣別するミッドシップ・モデルとなるため、伝統あるFRレイアウトのコルベットは現行の“C7”が最終世代。そのGT3バージョンであるキャラウェイC7 GT3-Rは、ドイツに拠点を構える名門キャラウェイ・コンペティションが設計・製作を担当している。

 これまでの『コルベットZ06.R GT3』に代わり、2016年にドイツADAC GTマスターズにデビューしたC7 GT3-Rは、2017年にはダブルチャンピオンを獲得。2018年には北米のPWCピレリ・ワールドチャレンジにも凱旋する形でワークス参戦し、同年以降にカスタマーデリバリーが開始された最新GT3モデルだ。

 マシンはロングノーズ・ショートデッキの典型的なスポーツカー・スタイルで、2713mmのホイールベースを持つボディには、本国で“スモールブロック”と呼ばれる伝統のLSシリーズ、6.2リッター自然吸気の90度V型8気筒OHVエンジンを搭載する。

 量産モデルでもカーボンとアルミの複合ボディシェルというスーパースポーツ顔負けの素性を持ち、その骨格を継承したGT3公認重量は1240kg。エンジンを除いて先代C6から大きく刷新された車体構成により、その車両特性は扱いやすいマイルドなものに仕上がっているという。

 このマシンは武井真司率いるビンゴ・スポーツから鈴鹿10時間耐久レースに2年連続で出場。11月に富士スピードウェイで行われたスーパーGT×DTM特別交流戦の併催レース『auto sport web Sprint Cup』には武井と笹原右京がドライブする形でエントリーした。

 ドライバーの武井は、PCCJポルシェカレラカップジャパンのジェントルマンクラスで2度、2017年には総合でもチャンピオンを獲得している。また高級&希少絶版車の専門店『BINGO SPORT』のCEOでもあり、東京オートサロンや鈴鹿サーキットとのコラボレーションによる『BH AUCTION』を主宰する敏腕ビジネスパーソンでもある。

 ビジネスマンとして世界各国の高級スポーツカーを幅広く扱い、レーシングドライバーとしてはポルシェのカップカーで経験を積んできた武井が、鈴鹿10時間参戦に選んだのは日本で唯一のユーザーとなるシボレー・コルベット。その経緯を聞くと「当初はGT3マシンを自分で買って乗ろうとはまったく思っていませんでした。将来的には……という思いはありましたけど」と明かした。

■ブルガリがつないだキャラウェイ・コンペティションとの縁「すぐその場でこのパッケージングが決まってしまった」
「急きょ10H(鈴鹿10時間)にコルベットを購入して出ることになったのは、宝飾ブランドのブルガリ創業家出身、ニコラ・ブルガリ副会長とビジネスの面でつながりがあったからなんです」

「彼は、我々が掲げている『クルマを継承する』という事業に対して非常に理解を示してくださっていました。同時に彼はアメ車のコレクターでもあります。その彼とレースの話になったときに『なんでアメ車でレースしないんだ』と言われて。その一言で決まったんです」

 そうふり返った武井だが、その場ではアメリカ製スポーツカーベースのGT3車両がすぐに思い浮かばず、ブルガリ氏に「アメ車でもレースしますけど、どこで売ってるんでしょう」と尋ねたという。

 すると、その場ですぐGM(ゼネラル・モーターズ)の元副社長につながり、彼らの代表作であるコルベットのGT3車両製作を担当するキャラウェイ・コンペティションに直接電話でコンタクト。「もう、すぐその場でこのパッケージングが決まってしまった」という。

「ただ、その時点では具体的な参戦計画があったわけではありませんでした。ただもうクルマが先で、購入だけして『何やればいいんだろう』という状態(笑)」

「そんなところに鈴鹿10Hというイベントが出てきて、それで『ああ、面白そうだな』となったのが、コルベットを使って参戦している経緯です」

「マシンを購入するときも(ドイツ)ホッケンハイムを貸し切っていただいて『テストに来い』と言われましたよ」

「そのテストではクラッシュもなく、ラップタイムもワークスドライバーが“非常にゆっくり走った”タイムと大体変わらなかったということで、キャラウェイ・コンペティション側にも『一緒にレースができるかな』と言っていただけました」

 キャラウェイ・コンペティション自体も、ブルガリ一族からのサポートを受けて活動している面もある。武井はその「ミスター・ブルガリの大事な友人だ、ということで非常に手厚い待遇で」迎えられ、テストも「カップレースをやっている経験もあり、そんなに速くは走れないですけど、大きな“おいた”もなく終われた」という。

 武井にとっては、このホッケンハイムでのテスト走行がGT3カー初ドライブ。雨が降るなかでの走行だったと言うが、コルベットC7 GT3-Rが持つ特性にも助けられたとふり返る。

「個人的にも、あのテストがGT3初乗車で、比較対象はポルシェのカップカーくらいでした。ただ、気がつけば雨のなかでも、そこまで恐怖感はなかったなと思います。カップカーにはない電子制御がありましたしね。それも『効いている』と、すごく主張してくるタイプなんですよ」

「制御されていることを認識しやすい。あのときトラクションコントロールが目一杯効いていたか定かではないですけど、アクセルを踏んでもスカスカしていましたし。なので逆に、雨のなかでも安定していたなというのと、ダウンフォースはあるような気がしましたね」

 そんなGT3初乗車の感激も手伝い、初ドライブのことは「実のところ、ほとんど覚えてないんですよ」と笑いつつ、フロントエンジンレースカーならではの感触も感じていたと明かした。

「フロントエンジンのクルマも初めてでしたね。でも、正直言うとフロントの重さは感じません。かと言って、リヤが軽いわけでもなく、本当にバランスがいいなと思って。ロングホイールベースが効いているからか、雨だと『ヒヤッ』とした瞬間の後も(マシンのコントロールが)戻ってくるんですよね」

 コルベットC7 GT3-R購入後、2018年の鈴鹿10時間へ出場するまでにホンダNSX-GT3やフェラーリ488 GT3に乗る機会もあったというが、ここでもコルベットの安定性を再確認できたという。

 武井が率いるビンゴ・スポーツは鈴鹿10時間に2年連続でキャラウェイ・コンペティション with ビンゴ・スポーツとして参戦。『auto sport web Sprint Cup』にも同じ形態で臨んでいる。

 この際、キャラウェイ・コンペティションから受けたサポートは“ワークス待遇”とも呼べる手厚いものだった。例えばレースでエンジニアを務めたマイク・グラムケはコルベットC7 GT3-Rの車体設計、ほぼ全域を担当したテクニカルディレクター兼チーム代表。さらには電装系デザインを担当したアンドレ・ザンケも帯同していたのだ。

 ビンゴ・スポーツの活動には、マシンビルダーであるキャラウェイ・コンペティション側もそれだけ期待を寄せているということだが、2020年シーズン以降の活動について、武井は「もちろんレースも好きですし、クルマも好きですけど、それだけでは……という気持ちもあります」と語る。

「僕はジェントルマンですし、本業とレースがすごく近いこともあるので、どこかで本業とレース活動に連動性を持たせることが重要だと思うんです」

「自分のなかで、どうやって本業とレースを関連付け、コルベットを走らせ続けることができるのかは日々考えています。そこでやはりGMとは今後も一緒に活動していきたいなとは思っています」

「GMは、グローバルなレース活動をほとんど辞めてしまっている状況ですが、本国の方では我々の活動を非常に取り上げてくれているんです。2019年も『ワークスカラーを使用していい』といった許可をもらえて非常に恵まれた環境にいました」

「だからこそ2020年も、ブルガリ、GMのチームで、あとはサーキットさんも含めて連携して盛り上げていけるような仕組みを模索していきたいんです。それに新しいコルベット(C8)も、当然GT3モデルが出たらやりたいなと思いますね」

「コルベットは、どちらかと言えば“キワモノ”扱いされがちで、強豪チームが走らせるようなイメージはないかもしれません。そこを払拭したいなと思います」

 武井が“キワモノ”と表現したコルベットだが、『auto sport web Sprint Cup』のレース2では笹原のドライブで序盤からトップを快走。最終的にも3位表彰台に食い込んで、そのポテンシャルを見せつけた。

 なによりその大柄なボディとV8エンジンのサウンドが演出する存在感は唯一無二と言えるもの。2020年は、より多くの場面でその存在感を発揮してほしいところだ。

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