「ドリフトできるEV」として話題を集めていたヒョンデ アイオニック5 Nが、6月5日、ついに発売された。価格は858万円と高いがそのパワーは650ps! 走る楽しさにここまでこだわったBEVは珍しいぜ!
文と写真/ベストカーWeb編集部
650馬力で858万円ならドイツ製EVよりお得? [ヒョンデ アイオニック5 N]の楽しさはもはやガソリン車を超えた!?
■ヒョンデのEVで初めて「N」を名乗るクルマ
ヒョンデ アイオニック5 N
EVは遅いと思っている人もいるかと思うが、実際は速い。300ps、400psというパワーはざらだし、モーターのレスポンスが電光石火だからだ。
とはいえ、その速さが楽しいかと言われたら迷う。直線がバカッ速くてもそれはクルマのお陰だし、どこか「運転してるなあ」という感覚に欠けるモデルも存在するからだ。
そんなEVのイメージに一石を投じたクルマが登場した。ヒョンデのアイオニック5 N。普通のアイオニック5とは、お尻に付く「N」の文字が違う。
ヒョンデにおけるNはハイパフォーマンスを表し、レクサスの「F」やBMWの「M」に近い。その由来は、ヒョンデがR&D拠点を置く韓国・南陽(ナムヤン)とニュルブルクリンクの頭文字なのだそうだ。
アイオニック5 Nは、そのNの思想と性能を、初めてBEVに持ち込んだクルマだ。そのウリは3つあって、「コーナリング性能」「サーキットをガチで走れる能力」「日常のスポーツ性」だというから、これはちょっと注目しないわけにはいかない。
■10秒だけ41psが上乗せされるブーストモードを搭載
素のアイオニック5とは「押し出し感」が違う
まずは外観だが、一見しただけでノーマルのアイオニック5とはいろいろ違う。フロントマスクにはデカイ開口部を設けたバンパーが口を開けているし、全幅はオーバーフェンダーのお陰で5cmも広い。リアには10cmも延長された大型のルーフスポイラーとディフューザーがおごられている。
タイヤサイズは275/35R21という巨大サイズ。フロントホイールのすき間からは、「N」のロゴが入った4ピストンの赤いキャリパーが垣間見える。
搭載されるパワーユニットももちろん別モノだ。アイオニック5Nは前後にモーターを積む4WDだが、その合計出力は448kW(609ps)、トルクは740Nm。
ただしこいつは平時のスペック。アイオニック5Nは「グリン(「ニヤッとする」という意味)モード」というのを備えていて、10秒間だけ「魔法がかけられる」のだ。その時のパワーは478kW(650ps)、トルクは770Nmに達するのである。
■ドリフトを楽しめるセッティングまで用意!
がぜんスパルタンになったコックピット。ステアリングのボタン類で各種セッティングが行える
とはいえこれだけじゃ、走りが楽しいクルマとは言えない。アイオニック5Nがすごいのは、ドライバーが運転を楽しむための、さまざまな工夫が施されている点だ。
ヒョンデはこれを「Nファンクション」と呼んでいる。まずは「N eシフト」。モータートルクを制御することでマニュアルミッションの操作感をシミュレートしている。パドルシフトを操れば、多段ギアを操るようなドライビングが楽しめるというわけ。
続いて「N Active Sound」。車内外にスピーカーからエキゾーストノートを奏でて、まるでエンジン車を運転しているかような感覚が味わえる。さらにそのサウンドは「2Lターボ車」から「EVレースカー」「スーパーソニック」という斬新なものまで、好みのものがチョイスできる。
「Nローンチコントロール」というのもある。これは停止状態から最大加速性能でスタートできる機能で、路面のグリップ力によって3種類のパターンが選択できる。
極めつけが「Nドリフトオプティマイザー」という機能。ドリフト走行をスムーズに行えるよう、前後輪の駆動比率と車両制御を最適化するという画期的なシステムなのだ。冒頭で述べた「ドリフトできるEV」というのもこのシステムのお陰。こいつは楽しそうだ!
■左太ももホールドのためにセンターコンソールも付けました!
こちらはサーキットアタックなどにも使われたマシン
もちろんアイオニック5 Nはこうした楽しさを実現するため、「体幹」もしっかり鍛えてある。
まずは基本となるシャシーだが、スポット溶接の打点追加と接着面の延長、サブフレームの補強などにより剛性をアップ。ねじれで11%、前輪横方向で15%、後輪横方向で16%というからこいつは効きそうだ。
さらには84kWhという高出力バッテリーや専用の熱管理システムも、その高性能を支えている。
足回りについては、N 専用の電子制御サスペンションを備える。ホイールのGセンサーに加えて6軸のジャイロセンサーを適用し、制御速度を圧倒的に高めているのだ。
車内に座ってみても、ヒョンデの本気を感じる。素のアイオニック5は広々した明るいインテリアがウリだが、黒基調の5Nは一転してスパルタンな雰囲気。コーナリング時の左太もものホールドのために、あえてセンターコンソールも設置したというから恐れ入る。
最後に、肉食系EVとでも呼べそうなアイオニック5 Nの価格は858万円。素のアイオニック5のAWD(ボヤージュ)に対しておよそ300万円のアップだが、超ド級の性能と、メルセデスのEQCやアウディe-tronといったジャーマン勢の価格を考えれば、意外とお手頃というべきかもしれない。
【画像ギャラリー】太ももをホールドするコンソールも見て! ヒョンデ アイオニック5 Nの全貌はここから!(18枚)
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