■ついに登場した新型「ランドクルーザー250」(ランクル250)
2024年4月18日にトヨタは新型「ランドクルーザー250」を発売しました。
ランドクルーザーシリーズとし300、70に続く250ですが、ライトデューティとしてどのような特徴があるのでしょうか。
【画像】「えっ…!」 これが新型「ランクル250」です! 画像を見る
1954年に「ランドクルーザー」というモデル名が誕生してから、実に15系統目となるトヨタ「ランドクルーザー250(以下250系)」。
2023年の夏にワールドプレミアが行われてから、ようやく日本での発売に漕ぎ着きました。
トヨタは150系プラドの後継モデルとは謳っていないものの、事実上はライトデューティ系の新型となる250系。
高級クロカン4WDである300系と、世界で実用車として活躍する70系の間を補完するモデルという位置づけになっています。
2023年夏、250系が注目を集めたのはそのエクステリアデザインです。
90系プラド以降はソフト路線を進み、120系、150系で高級SUV化を進めてきたライトデューティ系を原点回帰させ、ランドクルーザーシリーズの中では55、56型の雰囲気に戻った感があります。
さらに言えば、“クロスカントリー4WDはこうあるべし”というこれまでの世界の名モデルが築いてきた世界観を、1台にギュッと凝縮させているような気がします。
インテリアもクロカン4WDのスタンダードとも言える直線基調のデザインです。
良好な前方視界、オフロードで直感的に把握できる車両の傾きといった機能をしっかりと確保しながら、メーターフードとセンターモニターを連結させるといった現代的な意匠も含まれています。
ドライバーシートからさほど手を伸ばさずともすべて操作できるインターフェイスは、美しさと機能性を備えており、新世代ランドクルーザーにふさわしいものとなりました。
内外装デザインを見ていると、「ランドクルーザ-とはどういうクルマなのかを開発陣はさぞ苦労して模索したのだろう」と想像してしまいますが、最も苦労したのはクルマとしてのキャラクターだったのではないでしょうか。
90系以降のプラドは、シャシを「ハイラックスサーフ」と共用しながら、そのスタイルでランドクルーザーのエッセンスを表現したクルマでした。
たしかにその当時としてベストな味付けではあったものの、他のカテゴリーのクルマと比べて日常生活で十分に満足できたかというと、多少我慢して乗っていた感があります。
しかし時代の価値観が変わったことで、都会生活者が非日常的な時間や空間を得ることができ、同時に普段使いで何の不満もないことがこの手のクルマのベーシックとなったことは間違いありません。
滅多に走らないオフロードのことよりも、買い物やドライブで快適に使えることがまず大前提なわけです。
一方で、マストとなるのがランドクルーザーという金看板が持っているイメージと性能です。
歴代開発陣に受け継がれてきた「どこでも行き、生きて帰って来られるクルマ」というモットーは、時代が変わっても守らなければならないものだったわけです。
かつてクロカン4WDと言われたライバル車たちが、次々とモノコックボディのSUVに変わる中で、やはり250系はランクルのアイデンティとも言えるラダーフレームを捨てませんでした。
しかし、頑丈ながらも重量増から逃れられないラダーフレーム構造は、言ってしまえば両刃の剣。
そこでトヨタは、まずこのラダーフレームを全面的に見直してきました。
ハイテンションスチールやアルミといった違う厚み板材をパズルのように分割し、それをレーザー結合。
また従来の板材重ね合わせを止めて、プレス加工による成形を採用しています。
これにより、150系プラドより150%も高剛性となっているのと同時に、軽量化へと繋げたのです。
非常に頑丈な鉄のハシゴに見えるラダーフレームですが、実は走行中にわずかながら動いています。それは1mm以下というものですが、これによりドライバーが感じるフィーリングは様々なところに出てしまいます。
高速道路でのレーンチェンジ時の“オツリ”や、直進安定性の悪さといった部分です。
どんなに理想的なジオメトリーのサスペンションを造っても、やはりシャシ剛性が重要になってくるのです。
もちろん、ジオメトリーも見直し、フロント・ダブルウイッシュボーンのアームをハイマウント化。
ストローク量を増大させ、快適な乗り心地に重要な路面追従性を向上させました。
■オン/オフどちらも「ランクル250」に任せられる理由とは
またリアの3リンク式リジッドサスも新設計し、理想の動きを追求しています。
ランクルにとって足周りは特に重要です。ひとつのセッテティングで、オンロードとオフロードという二律相反するステージをこなさなければならないからです。
この追求の答えのひとつが、シリーズ初採用となる「SMD(スタビライザー・ウイズ・ディスコネクション・メカニズム)」です。
要は作動のロック・解除ができるフロントスタビライザーで、余計な脚の動きを抑制したいオンロードではロック、しっかりと脚を上下に動かしたいオフロードでは解除できます。
センタートンネル上にあるスイッチでフリーにでき、車速が30km/hを越えると自動的にロックされる仕組みです。
こうしたアイデアのスタビライザーはサードパーティメーカーに存在していましたが、ランドクルーザーが一部グレードに採用したことは、250系という新世代モデルの象徴と言えるかもしれません。
ランクルシリーズの優れたオフロード性能を支えている機能のひとつである「マルチテレインセレクト」。
現代では多くのオフロードタイプのクルマが採用している電子デバイスですが、250系のトピックは「AUTOモード」の採用です。
オーナーの中には、いま走っている路面状況がどのモードなのか判断できないという人もいます。
車両がもっとも適したモードを選択してくれるAUTOモードにしておけば、余分な悩みはなくなるわけです。
オフロード性能をサポートする新機能としては、後退時に車両後方下部の状況を可視化させる「バックアンダービュー」も挙げられますが、トヨタはこうした技術を200系や150系プラドの時代から積み上げ、250系でさらに進化させました。
250系はここからまた10年以上は販売され続けるモデルとなるわけですが、個人的にもっとも進化したと感じるのは、無闇に時代の気分を追わなくなったことです。
ランクルは一時代、ファミリー層を意識したライトSUVや海外の富裕層を意識した高級SUVに引っ張られた時代があります。
その時代のランクルもまた今なお愛されてはいるものの、やはり40系や60系、70系の普遍性に勝っているとは言えません。
そういった点から見ると、250系は現代的かつ普遍的な価値観を持ったクロカン4WDに仕上がっており、それこそが最も注目すべき進化のポイントであるように思えます。
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