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買えるときに買っておけばよかったクルマ 12選 価格高騰で手が出せない名車たち

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買えるときに買っておけばよかったクルマ 12選 価格高騰で手が出せない名車たち

あの時買っておけば、と後悔しているクルマたち……

愛して失う方が、まったく愛さないよりましだ、と言われる。英国の詩人が残した言葉らしい。自動車愛好家たちは、昔売るべきでなかったクルマについて、よく話をする。1980年にはした金で売り飛ばしたクルマが、今ではその何倍もの値をつけていることも珍しくない。

【画像】いつの間にか高嶺の花になったクルマたち【記事で紹介したモデルを写真でじっくり見る】 全108枚

しかし、それ以上に悔しいのは、高値で取引されるためにせっかくの名作を味わうことができないことだ。気になっていたクルマが新車を超える価格で売買されているのを見ながら、「あの時買っておけばよかった」とビールを飲みながらつぶやく人もいるだろう。少年・少女時代に恋い焦がれていたあの子が、大人になった今では誰もが知るスターになってしまったような、そんな感覚。

筆者もその気持ちはよく理解している。手を伸ばすのが遅すぎたために、多くの夢が指の間をすり抜けていくのを見てきた。そこで今回は、個人的にチャンスがあれば買っていたかもしれない、買うべきだった、そして買うつもりだった、しかし何らかの理由で買わなかったクルマを紹介する。これを読まれた読者なら、どんな1台を挙げるだろうか?

アウディ・クワトロ

アウディ・ウア・クワトロ(Ur-Quattro、オリジナルモデル)が、筆者の手の届くところにまで近づいてきた時期があった。ラリーファンである筆者は、インゴルシュタットの革新的な四輪駆動車を常にお気に入りの1台に数えており、2000年代初頭に新社会人となった身としてはまさに目標であった。

当時、ショートホイールベースのスポーツ・クワトロはすでにクラシックカーとして確立されつつあったが、1980年代半ばから後半にかけてのクワトロ10Vは、「別のアウディ」と言えるほど一般的なクルマだった。見栄えのする個体でも4000ポンド(約67万円)まで値下がりしていたのだ。

とはいえ、大学卒業直後の筆者は、資金繰りをきちんとしなければならない。すぐには手を出さず、「心配ない、待ってみよう」と思った。しかし、いざその気になった頃には、クワトロの価値は急上昇していた。先駆的なパフォーマンスカーの魅力に、誰もが気づいてしまったのだ。今や、状態の良い個体では5万ポンド(約840万円)を超えるようになり、筆者は間違いなくチャンスを逃した。グループBの夢のプランBはもうない。

フェラーリF355

さて、栄光のフェラーリF355は、どこから手をつけていいのやら。フェラーリ史上最高のハンドリングを誇る、V8ミドシップのクーペ。運転補助装置が普及する前、果てしない安全規制や排ガス規制の前に作られた、最後の1台である。

快適性や高級感などは今と同じようなものだが、故障のリスクを負った電気系統が少ないのが大きな違いだ。しかも、フェラーリ最後のマニュアルの1つ、カチッカチッと音がするオープンゲートのマニュアル・トランスミッションを備えている。

10数年前に探していたときは、4万ポンド(約670万円)でいい中古車が見つかった。2年前は7万ポンド(約1180万円)くらいだっただろうか。今は、10万ポンド(約1680万円)を切るのはラッキーだし、いい個体は20万ポンド(約3300万円)に迫る勢いだ。悲しいかな、当時は4万ポンドも余裕がなかったし、今も10万ポンドも余裕がない。

フォルクスワーゲン・ゴルフGTI

第7世代のフォルクスワーゲン・ゴルフGTIは、まだ中古車価格もすば抜けて高騰しているわけではない。1万5千ポンド(約250万円)も出せば手に入れられる。でも、重要なのはそこじゃない。

筆者が狙うのは、2017年から2018年に長期テスト用として借りていたモデル。最高出力230psの3ドア、MTの標準的な仕様で、オプションはほとんどついていなかった。不必要な馬力アップ、強化ブレーキ、リミテッドスリップデフを追加するパフォーマンス・パックもない。

デジタル化が急速に進み、「アシスト」されたドライビングや果てしない馬力競争に翻弄される中、とてもシンプルで純粋かつアナログ的な感覚(タータンチェックのシート、ゴルフボール型のシフトノブなど)を持ち続けていたクルマだ。

当時、筆者はこのクルマを買いそうになったが、すぐに買わなかったことを後悔した。第8世代のゴルフGTIが、よりハードでパワフルになったこと、そして次の世代では電気駆動が必然であることを考えると、輝かしい最終章を飾るに違いないのである。やっぱり手を出してみようかな……。

アルファ・ロメオSZ

アルファ・ロメオのSZが大好きだ。運転したこともなければ、乗せてもらったこともない。でも、1990年代前半に自動車雑誌を開いて、そのブルータリズムなラインを見たとき、これほどまでにクルマが欲しいと思ったことはなかった。

2000年代初頭は、ほとんど手の届くところにあった。筆者の記憶が正しければ、1万5000ポンド(約250万円)から2万ポンド(約330万円)で購入できたはず。クルマにこだわる人であれば、腹をくくれる額だろう。

だが、筆者は当時、あまり外出もしないのにケータハム・セブンをフルローンで買っており、とても手が出せなかった。手入れが大変で、ボディのスペアパーツも手に入らないSZを買うのは無理があるのでは?

ということで、セブンを売ってドゥカティ748を買うことにした。安くて、見た目もよくて、どんなクルマよりもスリルがありそうだ。いいバイクだし、今ならもう1台買えるけど、状態のいいSZは7万ポンド(約1100万円)もするから、絶対に所有できない。

ルノー・クリオ・ウィリアムズ

1993年シーズンはウィリアムズF1のピークであり、ルノーV10はそのパワーと信頼性で、ホンダ、フォード、フェラーリといったライバルを粉砕していた。当時10代の筆者は、キャメルのタバコとヒルクライム、ナイジェル・マンセルに夢中だった。この少年にとって、ルノー・クリオ・ウィリアムズほどクールなロードカーはなかったのだ。

ゴールドのホイール、ディープブルーのペイント、スクエアなスタイリングは、1990年代初頭のスタイルの典型だった。我が家はルノー・ディーラーの前を定期的に通っていたので、ウィンドウに映るその姿に目を奪われたのを今でも覚えている。このクルマで運転を覚えたい、と思ったものだ。

3つのエディションがあるが、個人的にはファーストがお気に入りである。ルノー19ディーゼルのクローズレシオのトランスミッションを搭載し、最高出力152ps(決して高い数値ではない)と1トンを下回る車重を実現しているからだ。

こうしたホットハッチの多くは、現在価格が上昇傾向にある。2015年にはいい個体が6500ポンド(約110万円)だったが、現在は2万ポンド(約330万円)をはるかに超えている。悔しい!

ロータス・エリーゼS2

夢にまで見たロータスは、時折悲嘆にくれるほどの高嶺の花となっている。現在の市場原理では、試乗記事の給料で所有できるチャンスはほとんどないだろう。筆者はKシリーズ・エンジンのエリーゼを新車でレビューしたことはない。エリーゼの試乗は、最高出力192psのトヨタ製1.8Lエンジンを搭載したシリーズ2(S2)が最初であった。

初めて乗ったのは2005年頃のエリーゼRで、その数年後に試乗したのは最高出力220psのスーパーチャージャー付きエリーゼSC。このトヨタ製エンジンは、エリーゼに信頼性だけでなく高回転域での力強さをも与えてくれた。

しかし、定評のあるハンドリングの繊細さとフィーリングは、すべてそのままだ。20代の頃、まだ経験も浅かったが、これほどまでに操縦性やハンドリングに優れたスポーツカーは初めてで、感銘を受けた。

で、今は? S2のエリーゼRは3万ポンド(約500万円)、SCはさらに高価で、どんどん上がっている。かつて筆者が抱いていたような、いつか安く手に入るかもしれないという淡い期待は、泡となって消えた。

BMW 325i

筆者は、スクールバスの中で友達に見せるために、広告のリード画像をプリントアウトしたほど、その魅力に取り付かれていた。1988年のBMW 325iクーペで、希少なMテクニックのボディキットと輝くBBSホイールが装着されており、筆者の目にはM3エボリューションと映ったのだ。

街中で何度か見かけるうちに、ロマンチックなシュワルツ(ドイツ語で「黒」)の塗装が心に刺さるようになってきた。さらに、車両保険と盗難保険をぼんやりと比べてみても、保険会社から笑われることもなく、初めて乗るクルマが自然吸気の直6であるという現実的な可能性を考え始めたのである。

しかし、それは叶わなかった。中古車価格は当時の限度額である2000ポンド(約33万円)をわずかに上回ったところで底を打ち、現在では1万2000ポンド(約200万円)の値がついている。

それから8年後、筆者はようやくE39型5シリーズというオールドスクールなBMWを手に入れることができたが、E30型は今でも欲しいものリストのトップである。最近では、316iのオンボロAT車でもいいくらいだ。

フォード・シエラ・コスワース

筆者はかの有名なフォード・コスワース(通称、コッシー)で、またしても愚かな失敗をした。シエラRSコスワースは、1986年、新進気鋭のフォードのモータースポーツ部門責任者スチュアート・ターナーによって、欧州全土のグループAレースで勝つために生み出されたモデルである。フォードはこれを、レギュラーモデルとして採用した。

また、ホモロゲーションスペシャルモデルとして、RS500が数台製造された最高速度240km/h、車両重量1200kg、ツインカム、3ドアのシエラに、想像を絶する巨大なホエールテール・スポイラー(270km/hで車体を地面に押さえつけるために必要だったらしい)を装備した新型車を投入。かなり気を引かれたものだ。

とにかく、このクルマが1986年のある日、長期テストとして筆者の手に渡り、かなり楽しい時間を過ごすことができたのだ。207psのパワー(後のモデルでは四輪駆動の223psに増強)を楽しみながら、サーキット走行から欧州ツアーまでいろいろなことをやって、人々からホエールテールを見つめられるのにも慣れた。このクルマを買い取ることもできたのだが、トランスミッションが弱く、頻繁に修理が必要で、弱気になってしまった。筆者の負けだ。

マセラティ・ミストラル

これは20年ほど前のこと。マラネロ近くの小さな町で、1965年式のマセラティ・ミストラル・クーペが売りに出されていた。かなりきれいなブルーの個体だった。バンパーやトリムの一部に手入れが必要だったが、ピカピカに磨き上げられていた。そして、2万1000リラで売りに出された。

ミストラルは、アストン マーティンDB5のイタリア版のようなものだが、レースの血統はより深く、そのツインカム、ツインプラグの直6は、1957年にファン・マヌエル・ファンジオにF1タイトルの栄光をもたらした250Fのユニットに由来するものである。

当時のパートナーと2人で購入を検討したのだが、値段が高すぎた。今は14万ポンド(約2300万円)から18万ポンド(約3000万円)の間で、もっと手の届かないところにある。

日産スカイラインGT-R Vスペック

1980年代後半、ツーリングカーレースで冷酷なまでに活躍し、肉食系で一枚岩のようなフォルムとそれに見合う性能を備えたクルマ。そう聞いて、人によっては(この画像がなければ)E30世代のBMW M3を思い浮かべるかもしれない。スカイラインGT-Rは、まともな個体なら少なくとも5万ポンド(約850万円)はする。

ハコスカやケンメリの時代からずっと後、日産が初めて現代に送り出したR32型は、地球の裏側から来たM3と肩を並べる「精神的いとこ」のようなクルマである。新車当時は破格の値段で売られていたが、今やその実力を反映した価格となっている。

グループAレースで圧倒的な強さを誇ったR32は、海外で「ゴジラ」と呼ばれ、行く手を阻むものすべてをなぎ倒した。そして、公道走行可能なホモロゲーションモデルは、「1990年代までに技術力で世界一を目指す」という日産の901運動の頂点に立つものであった。

R32は、8000rpmのRB26DETTツインカム直6エンジン、四輪駆動、クイックラック、後輪駆動のようなハンドリングバランスなど、これ以上ないほどの完成度を誇る。Vスペックでは、より優れたブレーキ、BBSホイール、駆動系の改良が加えられている。新車の時が絶好のチャンスだった……。

テスラ・ロードスター

ムーブメントを巻き起こしたクルマ。初代テスラ・ロードスターは、ロータス・エリーゼに駆動用バッテリーを載せたようなものだが、2008年当時に登場した時の様子を思い浮かべてみてほしい。

誰に求められて作ったクルマなのかはわからない。しかし、このクルマに約9万ポンド(約1500万円)を支払う勇気のあった人たちは、個性的で直線番長的な速さ(0-97km/h加速で4.0秒以下)を体感し、今日の基準から見ても十分な320kmという航続距離を手に入れたのだ。

現在ではEVムーブメントの象徴的、先駆け的存在などとされているが、実は長年にわたり、未来を垣間見せるだけの風変わりな存在に過ぎなかった。テスラ・ロードスターは結果的に、3500台しか売れていない。1人乗りの「乗り物(クルマではないらしい)」で商業的には失敗に終わったシンクレアC5ですら、5000台売れているというのに。

そのため、中古車価格は暴落し、大型で高価なバッテリーパックの劣化が進むと、状況はさらに深刻化する。一時期、3万ポンド(約500万円)程度でロードスターに乗ることも現実的に可能だった。ところが現在では、年式や状態にもよるが、10万ポンド(約1700万円)から15万ポンド(約2500万円)とプレミアがついている。

アルピーヌA310

筆者個人の車歴(これまでに所有したクルマ)は、今のところ非常にドイツ的で堅実なものとなっている。そのためかどうかわからないが、大手メーカーから部品を拝借して作った手作り感満載のスポーツカーを所有したいという願望が強い。TVRはちょっと立派すぎるから、マーコスを買おうかと真剣に検討したこともある。同じように購入を考えていたのが、アルピーヌA310だ。

A310は、ラリーの血統を持たず、初期の4気筒モデルもスポーツカーというよりグランドツアラーであったため、初代ルノーA110よりも手頃な価格で購入することができた。それでいて、プジョー・ルノー・ボルボのV6という錨のように重いエンジンを積んでいても軽快で、筆者にとっては痛快極まりないクルマだった。また、市販車としては非常に奇抜なワイパーを備えているのも特徴だ。

実家近くのルノーの整備工場で、数か月放置されて苔むしたままになっていたものがあったが、売ってもらえなかった。また、レストアされたばかりのものが1万ポンド(約170万円)で売りに出されていたので問い合わせたのだが、あまりに遅すぎた。筆者は代わりに、ポルシェ944を買ってしまった。A310はとても希少なので、たとえ売りに出されても、最近のクラシックカーブームですぐに「売約済み」となってしまう。やれやれだ。

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