現職の社長でありながら、新型車開発では自ら試作車のテストドライバーを務め、レースやラリーにも出走、オートサロンなどカスタムカーイベントにも足を運び時には同業他社のエンジニアとも談笑し話題を呼ぶ、「モリゾウ」こと豊田章男社長が去る5月。
名古屋のFMラジオ局「ZIP-FM」にて「DJ MORIZO HANDLE THE MIC」という特番が放送されたのですが、なんと8月より「DJ MORIZO HANDLE THE MIC」がレギュラー番組として毎週土曜日午後7時から放送されることが決定というプレスリリースがあり、名古屋在住である筆者にとって地元局であるZIP-FMに取材申し込みを試みてみたところ、さすがにモリゾウ氏(=豊田社長本人)へのインタビューは無理でしたが、番組プロデューサーの工藤博編成制作部長のお話を伺うことが出来ました。
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今回は「DJ MORIZO HANDLE THE MIC」のプロデューサー工藤さんとのお話をお送りしたいと思います。
プロデューサー工藤さんにインタビュー
CL 鈴木:私共CLカーズは「クルマの文化」について啓蒙していくというスタンスで書いてるメディアなんですが、ZIP-FMさんも週末にはクルマの番組が多いですよね。
工藤:クルマの番組が多い(苦笑)。まぁクルマの関連企業のスポンサーが提供している番組が多いので、(番組の内容が)クルマに関連した話題にはなっていますね。
CL 鈴木:確かトヨタもZIP-FMさんの資本に入っていましたね。
工藤:そうです。筆頭株主でトヨタ自動車も開局以来提供してもらって、週末多いってのはそうですね、クルマに乗りながら聴いてほしいっていうのがあるので、オススメのドライブスポットとかクルマに関連した話題になっています。もう番組は聴かれているんですよね?
CL 鈴木:モリゾウさん「株主総会で慣れてますんで何でも聞いてください」って凄いですね。レギュラーになってからの2回も聴きましたし、5月の特番はそこの「丸の内」(名古屋市の名古屋城周辺にも「丸の内」という地名が存在します。)の庁舎街が休日は駐車禁止解除にになるんで、愛車のセリカを止めてカーラジオで聴いていました。一体どんな経緯でモリゾウさんが番組のパーソナリティを務める事になったのですか?
工藤:公にしている理由は、「豊田章男社長が、色々なイベントで話をされていて非常に話がおもしろいし、上手なのでZIPから要請してやることになった」ということなのですが、もうちょっと詳しくいうと、ウチの東京支社がトヨタの営業担当になっていまして、東京の(ZIPの)支社長が「(モリゾウさんの)話がおもしろい」と…。
工藤:ユーチューブとかにも出ていますけど、イチローさんと対談したものなどがあって、最初は「インタビューなんか取れたらおもしろいね」っていうところから始まりました。「いやインタビューもそうだけど一人でしゃべってもらうとかもできるかもね」っていう話をしているうちに、一回提案してみようということでトヨタさんのところに話にいくことに。ちょうど豊田章男社長も自工会の会長に内定した所で「自分自身も色々な事を発信したい」というご意向もあるということで、むしろ「豊田章男」としてではなく、ラリードライバーやプライベートで名乗っている「モリゾウ」で「DJ MORIZO」でやりましょうという話になると、「ぜひお願いします」となって、まずは(ゴールデンウィークの)特番をやってもらうことになりました。
CL 鈴木:豊田社長ではなくモリゾウさんじゃなきゃ話せない打ち明け話みたいな感じの番組ですか?
工藤:そうですね。普通は企業のトップの方が出ると、企業のPRとか商品の紹介みたいなこととかリーダーシップをとっている事が多いのですが、今回の番組はトヨタ自動車の宣伝をするのではなくて「クルマの愉しさ」を伝えていきたい、そのためにトヨタ自動車社長の肩書ではなく、本業はドライバーで、副業で自動車会社社長をやっていると。
CL 鈴木:よく、仲間内の冗談で「トヨタの社長はレーサーが本業で、副業で自動車会社社長をやっているくらいに考えてるんじゃないか?」って話が出てくるのですが、まさか本人が言うとは思いませんでしたね。
工藤:そうですね。ご本人がそういう形であくまで「モリゾウ」がしゃべる番組で、モリゾウっていえばカーガイでラリードライバーもやっていて、副業で社長やっているという、「設定」じゃないですけど、それは僕らもおもしろいなとそういう形で「DJ MORIZO」だと、豊田の名前は全然でなくていいという事だったので、それにどんどん乗っかって番組を作っていったというところですね。
CL 鈴木:トヨタといえば日本最大の自動車会社で、世界でもトップスリーに入るような、アメリカビッグ3も脅かす会社ですよね。そんな会社の現職の社長が、ラジオ番組のパーソナリティを務めるなんて前例がないと思うのですが、自動車業界や放送業界でも反響があったんじゃないですか?
工藤:そうですね、今回も取材していただけたように、僕らもどのタイミングで広報発信していこうかとか、豊田章男社長の名前を何処まで出していいのかってことまで考えました。もちろん「DJ MORIZOこと豊田社長」みたいな出し方でもいいよというところで、あのデフォルメしたモリゾウさんのイラストで広報資料作ったりしました。一番驚いたのはおっしゃるように、放送業界だけでなく一般企業というか産業界自体がネタとして取り上げてくれるみたいな、リアクションの大きさですよね。
工藤:「あの豊田社長がDJに初挑戦なんだ」みたいな所の話題性だけでも僕らは驚いていて、やっぱり豊田章男社長がパーソナリティを務めることに反響があるのだと、一般のリスナーの前にそういう反応があってまずは驚いたところです。
CL 鈴木:やっぱり経済界の反応は大きかったんですか?
工藤:そうですね、ウチもプレスリリースを出して、トヨタさんのほうからも情報を出していただいたというのもあるんですが、今まで付き合ってなかったニュースソースやヤフーニュースにも取り上げてもらえたのが驚いています。
CL 鈴木:こういう言い方は失礼かもしれませんが、FM局なんて所詮は地方局なわけじゃないですか、一地方局の番組編成が全国的なニュースになるなんて珍しい事なんじゃないですか?
工藤:おっしゃるとおりで(苦笑)。僕らも普段、いろんなアーティストに接する事もあって、有名なアーティストが来たくらいじゃ、「EXILE」や「ゆず」が出たからと言ってニュースになるわけじゃないんです。やっぱりそれだけ反応が大きかったんですね。東京じゃなくトヨタのおひざ元の豊田市のある愛知県で、名古屋ローカルのゴールデンウィーク特番のパーソナリティに豊田章男社長、DJ MORIZOというのは僕らの予想以上のインパクトがあった事には驚いていますね。
CL 鈴木:今後ゲストを呼ぶ予定ってあるんですか?私は個人的には他所の自動車メーカーの開発者とか重役さん呼んで欲しいなと思ってるんです。トヨタの番組に日産の社長が出るとか(笑)
工藤:おもしろいですね、相手に断られたら仕方ないですが、アイディアの中ににはきっと沿いうのも出てくるかもしれません。
CL 鈴木:まだ未定な事も多いようですが、たとえば自動車イベントとの連動企画とかあったらおもしろいと思うのですが
工藤:今はまだ具体的には決まってないですけど、たとえばラジオなので外での公開録音とかイベントと連動してやるとか多分そういう、認識は(豊田社長が)されていると思います。何分スケジュールがお忙しい方なので大変ですけど、今後そういう話が出ると思います。今はまだ何も決まっていませんが。
CL 鈴木:鈴鹿サーキットのスーパーGT選手権で公開録音とかあったらいいなぁと思いますね。あとやっぱり生放送でリスナーに電話をかける企画はやってほしいですね
工藤:実は8月3日に第一回の放送前日、一回目の収録日だったんですが急遽「フレフレフライデー」という番組に出ていただきまして…
CL 鈴木:たまたまなんですが、それ聴いていました
工藤:関係者の方にも確認して、時間ありましたら出ますかと聞いたら、問題ないですよということになり、番組宣伝がてら出てもらったんです。リスナーの悩み相談にもこたえてもらって、あれも全然台本なしで。たまたま本当に会社が倒産した、という若い方が電話に出て、それに対して的確にご本人を励ますような言葉が、バーっと出てきて生放送にも強いなとわかりましたね。
CL 鈴木:私も聴いてたんですが、本当にあのタイミングで即興の返しができて凄いな、と思いましたね。間を挟まず、的確なアドバイスを自動車会社の社長がラジオで仕事のアドバイスをする…考えられないですよ。
工藤:その日のオンエアでも第一回のオンエアでも「新人ミュージックナビゲーターですZIPPIE(ズィッピー、ZIP-FMのリスナーの愛称)のみなさんよろしくお願いします」と言って白井奈津(フレフレフライデーのパーソナリティ)の「あ~、私の後輩!」に「あ、先輩」って返すところとか凄いなと思いました。台本なんか無いんですが、「62歳にして新人ミュージックナビゲーターなんだ」っていうところでそういうスタンスに臨機応変に対応できて、最初は豊田社長が来ると聞いて僕らもナビゲーターも結構緊張していたんですけど、本当にフランクで素晴らしい人柄にみんなファンになっちゃいますよね。
工藤:オンエアの中でも言っていたんですが、モリゾウステッカーというのも作って、これがそうなんですけど…
CL 鈴木:ウワサは聞いていましたが…
工藤:お会いした人に配っているそうで本当にありがたいことです。これはDJ MORIZOパターンですが、ほかにもいろいろなパターンがあるようです。
CL 鈴木:いつか、私にも貰える機会があったらと願っています
工藤:あとはウチのリスナーが、メッセージを読まれたらこれと違うモリゾウバージョンをセットにして送るということになっています。
CL 鈴木:しかし、モリゾウさんなにかを引き当てる力があるんじゃないかとすら思えてきますね。まさか、モリゾウさんがたまたま飛び入り出演した電話相談の相手が、会社が倒産してどうにか次の会社が決まったけど不安でしょうがないっていう人でそれにモリゾウさんが答えるって、まさしくプロ中のプロのビジネスマンがリスナーの仕事の相談にピンポイントで適切なアドバイスをするわけですからね。
工藤:恋愛相談でもそれはそれでおもしろい相談してくれたんでしょうけど、仕事とか人生の岐路に立っている人に対して白井奈津が中途半端な事をいうよりも豊田社長が相談に乗る方がいいですよね(笑)。
工藤:ミュージックナビゲーターとしてはDJ MORIZOというのは異質だとは思うんですよね。もちろん元々のリスナーには楽しんでほしいし、DJ MORIZOとして豊田社長の普段聞けないような話も聞けるので、今までラジオを聴いてなかったような人がこれをきっかけに、ラジオを聴いてほしいですね。
CL 鈴木:実は私もラジオは出戻り組なんですよ。(苦笑)1990年代はアニメ・声優関連の番組が一大ブームで、東海ラジオさんのその手の番組の常連投稿者でした。FMでは「赤坂泰彦のミリオンナイツ」の世代でした。でも10年以上前その手の番組が下火になってラジオは一切聞かなくなったんですが、ラジコもできたしモリゾウさんという私たちにクルマ好きには一番ホットな人が出ているので、ちょっと聴いてみたいなと思って。久しぶりですね。
工藤:ラジコができたのは僕らラジオ業界には大きなことで、家にラジカセとかが無くなってきて、今はi-Podですら少なくなってむしろ全部スマホに移行してスマホで完結して、ラジオも音楽もネットもそこから出てくるテレビも見られる、そんな中でラジコが2011年に誕生して、アプリさえダウンロードしてくれればみんなラジオ持ってくれていると同じようになるんです。
工藤:パソコンでも聴けるんですが、やっぱりスマホで聞いてる人が圧倒的に多くて僕らラジオ業界もいかにラジコを普及させるか、「ラジオ聴いてね~」が「ラジコダウンロードしてね~」と同じことになって、今までは「ラジオ聴いてね」と言っても「ラジオが家にないんだけど、クルマ乗れば聴けるけど…」みたいなところがあったのが、ラジコのおかげできけるようになったのがパーソナルメディアの中でこうして聴けるようになったのは大きい事ですね。
CL 鈴木:実は私もなんですよ。DJ MORIZOを自宅で聴くぞ、と思ったんですが「アレ?ラジオどこだっけ?」ってなったんですよ。台所で使ってたモノラルのラジオが1個あったんですが、ダイヤル式のチューニングで77.8MHzに上手く合わせられないんですよ。仕方なくあわててラジコをダウンロードしました(苦笑)。
工藤:その段階でラジコダウンロードしたんですか!?(笑)とりあえずラジコをダウンロードしてくれれば、このエリアで聴けるラジオ局は無料で聴けますし、あとは「ラジコプレミアム」という有料の会員(350円)になってもらえれば全国どこのラジオでも聴けるようになるっていうのがあって、52万人プレミアム会員がいるんです。
工藤:52万人の人たちは全国どこのラジオ局でも聴けて、僕ら普通に放送してるワイド番組でも「東京に引っ越したけどZIP聴いてるよ」とか「沖縄から聴いてます」とか「たまたま、ラジコで色々聴いていたら面白かったので聴いてます」とか普通に全国からメッセージが来るようになったんです。DJ MORIZO HANDLE THE MICも基本この地区の人は無料ですが、プレミアム会員なら全国からタイムフリーも含めて聴くことが出来るんでぜひそういった方たちからも聴いていただきたいですね。
工藤:まだ名古屋でも知らない人もいるでしょうし、プレミアム会員で、名古屋でそんな番組が始まったなんて知らない人もまだまだいるでしょう。僕らが情報発信しても限られているのでCLカーズさんみたいにWebメディアで紹介していただいたり、特番の時はいろんなところで掲載されたのですが、一度掲載されるとあとはそのままなので僕らも継続的に発信していきたいなと思っています。
CL 鈴木:あとは工藤さんのほうから何かお伝えしたいことはありますか?
工藤:プロデューサーとしてはぜひ聴いてほしいというところですね。それと、モリゾウさん自身のアイディアがこれからどんどん出てくると思うので、モリゾウさんがやりたいことを形にしながら、僕らとしても今まで全く体験したことのない事をしている部分もあるので、今までやれなかった、考えもしなかった事をやりたいと思っています。「DJ MORIZO HANDLE THE MIC」がどんな方向に行くか注目していただきたいなと思っています。
工藤:実は僕らがまだプロデューサー出来てないんですよ、(苦笑)。むしろモリゾウさんがプロデュースしているようなものでゴールがまだ見えてないんです。走り出したばっかりで、僕らも何処へ向かっていくか楽しみです。
第一回放送では急遽フィンランドラリーの模様をレポートしてトミ・マキネン監督に豊田社長自らインタビューをしたり、自動車開発の聖地ニュルブルクリンク北コースをレポートしたり、社長自ら突撃レポートをするなど、むしろモリゾウさんが番組作りに積極的な事が印象的でした。なお今週8月25日は生放送ということで、現在メッセージを募集中です。
ZIP-FMはラジコプレミアム会員であれば日本全国から聴取可能です。CLカーズ読者の皆様もぜひラジコをダウンロードしてみてください。
DJ MORIZO HANDLE THE MIC
http://zip-fm.co.jp/program/handle_the_mic/
[ライター・画像/鈴木 修一郎 取材協力ZIP-FM(FM名古屋)]
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