近年、日本車のモデルサイクルは長期化が進み、なかなかフルモデルチェンジの新型が登場しない! ということは、逆に言えばその間に挟み込まれる中規模改良=マイナーチェンジの重要性が増してくるということ。「見た目はそれほど変わらずとも、中身は大きく進化」というモデルも珍しくない。そこで本記事では最新マイナーチェンジ車10台をピックアップし、特に進化度と買い得感が高い5モデルを紹介したい。
文:渡辺陽一郎、ベストカーWeb編集部
写真:編集部、DAIHATSU、SUBARU
ベストカー2018年5月10日号
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2017年下半期から2018年初頭にかけてのマイナーチェンジ車は、およそ20モデル近くにのぼる。なかでも注目の10車は次のとおり。
・ダイハツ ムーブ/2017年8月1日改良
・マツダ ロードスター/2017年9月4日改良
・トヨタ カローラアクシオ、フィールダー/2017年10月11日改良
・トヨタ プリウス/2017年11月1日改良
・スバル レガシィB4、アウトバック/2017年11月13日改良
・ホンダ オデッセイ/2017年11月16日改良
・レクサス RC、RC F/2017年11月30日改良
・日産 スカイライン/2017年12月20日改良
・ホンダ レジェンド/2018年2月8日改良
・ホンダ ヴェゼル/2018年2月16日改良
この10台のなかで進化度と買い得感に優れるのはどの5台?
【編集部】
最も“進化度”が大きいモデルは?
■ホンダ レジェンド(従来比:約27万円アップ)
【改良内容】外観をガラッと変え、ハンドリングを向上
レジェンドはホンダの最上級セダンで、3.5Lエンジンをベースにしたハイブリッドを搭載する。モーターは前輪に1個、後輪に2個を配置した。後輪は左右の駆動力に差を付けて、車両の向きを積極的に変える制御を行う。
このトルクベクタリング効果が以前は極端だったから、マイナーチェンジでは左右輪に与える駆動力の差を弱めた。いっぽうで後輪のモーター駆動力を総合的に高めて、カーブを曲がる時には後輪駆動に似た自然な挙動を実現している。
また、構造用接着剤の採用箇所を拡大した効果もあり、走行安定性が向上した。ホンダセンシングの運転支援機能は渋滞に対応して快適性を高め、トランクフードが電動で閉まる機能も備わる(開く時はスマートキーによるセルフオープン)。
ただし価格も以前より27万4000円高くなった。トランクフードの電動機能を5万円と換算しても、本来の値上げ額は総額で15万円程度だ。
つまり、レジェンドはマイナーチェンジで機能を洗練させてはいるが、価格は実質的に12万円ほど割高になっているといえる。
最も“買い得感”光るモデルは?
■ダイハツ ムーヴ(従来比:約2万~4万円値下げ)
【改良内容】安全性能向上、内外装も刷新
一番の注目点は、緊急自動ブレーキを作動できるスマートアシストを、IIからIIIに進化させたことだ。従来のIIではセンサーが単眼カメラと赤外線レーザーで、歩行者への対応は警報にとどまった。
これがIIIは2個のカメラが備わり、緊急自動ブレーキは歩行者にも対応。車両の検知性能も向上して、ヘッドライトのハイ/ロービームの自動切り替え機能も備わる。
ムーヴカスタムはLEDヘッドライトが新しくなり、内装は全車にわたって上質になった。
価格は2017年2月登場の新型ワゴンRに対抗すべく2万~4万円値下げした。
マイナーチェンジ後、「L・SAIII」はチルトステアリングや運転席の上下調節機能が非装着になり、「X・SAIII」もスマートクール蓄冷エバポレーター、サイド&カーテンエアバッグのオプション設定を省いている。それでも安全装備が向上したので、5万円ほど買い得感はアップしている。
進化と買い得感のバランスに優れる3車
■ホンダ ヴェゼル(従来比:約4万円アップ)
【改良内容】ホンダセンシングの全車標準装備化など
日本で人気の高いコンパクトなSUVとあって改良に力を入れた。特にハイブリッド車は7速DCTの制御を含めて改良。
発進時の加速が以前よりも力強く感じられるようになり、走行中も7速DCTの変則制御が滑らかになった。
4WDの制御も見直され、雪道のカーブを曲がる時でも旋回軌跡が大きくなりにくくなっている。このほか静粛性やブレーキの操作感覚など、走りを総合的に見直した。
内装では前席の形状を変えて、肩回りのサポート性を向上させ、乗員の体を包む乗り心地に仕上げている。ただし、後席に変更はなく、前後席の座り心地の差は拡大した。
そのほか、安全装備のホンダセンシングは全車に標準装着。スマートフォンなどの接続機能も追加された。
価格は以前よりも約4万円高いが、「RS」はラゲッジルームハードボードも加えている。運転感覚の改善も含めると買い得感はアップした。
■スバル レガシィ(従来比:約9万円アップ)
【改良内容】安全性能、ハンドリングの向上
2017年11月の改良では安全装備を大幅に充実させた。特に注目されるのは、スバル フォレスターに先行採用されたアダプティブドライビングビームの装着だ。
ハイビーム走行時に対向車などを検知すると、シェードが自動的に作動して、ハイビームを保ちながら相手車両の眩惑を抑える。さらに、ハンドルの向きに応じてヘッドランプの照射範囲を変える機能も備わる。
このほか後退時の緊急自動ブレーキも採用され、全車速追従機能付きクルーズコントロールは設定速度域を拡大した。
足回りの改善などにより走行性能も向上している。後席用USB電源を加えて、内装の質もアップした。
価格はアウトバックの標準仕様が改良前より8万6400円値上げされたが、実質的に10万円前後の機能を加えた。1万円少々ではあるが、割安になっている。
■マツダ ロードスター(従来比:約1万円アップ)
【改良内容】リアサスペンション、パワーステアリングのチューニングなど
最も注目されるのはアダプティブLEDヘッドランプの設定だ。複数のLEDランプのうち、必要な箇所を消灯することで、ハイビーム状態を保ちながら対向車などの眩惑を抑える機能で、グレードに応じて標準装着、あるいはセットオプションで用意した。
売れ筋グレードでは、シート生地がファブリック(布)の仕様にもシートヒーターを加えた。さらにソフトトップモデルは後輪側の足回りを改善して、乗り心地や操舵感を向上させている。そのほか、ノイズを抑えて、メーターの視認性も高めた。
これらの変更を施しながら、価格の上乗せは1万800円だ。アダプティブLEDヘッドランプの消灯機能は、車線逸脱警報のカメラセンサーを利用して安価に追加した。仮に単体で装着すれば、4万円程度の価格上昇になる。そのため以前に比べて割安感はアップしている。
【渡辺陽一郎】
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